歌広場淳のフルコンボでGO!!! 最終回

歌広場淳が驚いた“未知のゲーム体験” スクエニ×TBSのタッグが放つ『KILLER INN』の開発秘話と魅力に迫る

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「歌広場淳のフルコンボでGO!!!」。最終回となる今回は、スクウェア・エニックスとTBS GAMESが手掛けるマーダーミステリーアクションゲーム『KILLER INN(キラーイン)』の試遊や、開発元のスクウェア・エニックス プロデューサーの藤永 健生氏とTBS GAMES ゲーム開発室長の時松 隆吉氏を交えた鼎談を通して、新しいジャンルのゲームの魅力を探っていく。

従来の常識を覆す「力で解決するミステリー」を作りたかった

歌広場 淳(以下、歌広場):今回、おふたりと一緒に『KILLER INN』をプレイできて光栄でしたが、やってみて感じたのは「理解するのが結構難しいゲーム」だということでした。

 これまでゲームに関わるときは、いつも自分が一番上手で、教える側だったんです。でも今回は初めて、純粋に教わる立場になって。「ああ、これはまったく新しい未知のゲーム体験だな」と思いましたね。

 僕が『KILLER INN』に興味を持ったのは「TBS」というのが大きくて、「なんでテレビの会社がゲームを作っているの?」と思ったんですよ。その辺りも含めて、プロジェクトがスタートした背景をお聞きしたいです。

時松 隆吉(以下、時松):TBSグループの経営方針「VISION2030」では、エッジ戦略(Expand・Digital・Global・Experience)を掲げ、2030年を見据えた事業変革を推進しています。

 その中でデジタルとグローバル展開を見据えた体験コンテンツの一環としてゲーム事業を位置づけ、2023年にTBS GAMESを設立しました。そこからゲーム開発に本格的に乗り出すわけですが、いきなり自社でエンジニア抱えて、ゲームをゼロから作るのは現実的ではなくて。

 ただ、我々としても「大きなタイトルを作る」という目標において、今回スクウェア・エニックスさんとのご縁をいただいたことで、とても良いスタートがきれたのかなと思っています。

歌広場:ゲームを作る側の観点として、TBSさんと組むというのはどういう風に受け取られましたか?

藤永 健生(以下、藤永):実はTBS GAMESが立ち上がった頃に、我々も「KILLER INN」というプロジェクトを進めていて、外部の強力なパートナーを探していたんですよ。すでに開発自体は始めていましたが、より大規模に、世界で勝負できるクオリティに仕上げるには、メディアパワーを持った企業との連携が必要不可欠だと考えていました。

 良い意味でも悪い意味でも、『KILLER INN』は“スクエニ”らしくない尖ったゲームで、主力のドラクエやFFのようなファミリー向けとは異なるハードコア路線です。そのため、売り出し方や打ち出し方も未知数で、どうすればいいか悩んでいたところに、TBS GAMESが設立されたので、これはぜひ提案したいと思ったんですね。

 私が「このネタ、一緒にやってみませんか」と持ちかけたところ、TBSさん側はスクウェア・エニックスのイメージとはかけ離れた作品だったため、最初はどう扱えばよいか戸惑いながらも、「ぜひ一緒にやりましょう」と快諾してくださいました。

時松:我々もちょうど大型の新規タイトルを求めていたので、タイミング的にもぴったりだったんですよ。

歌広場:なるほど、そういう巡り合わせがあったんですね。ちなみに、藤永さんは過去に関わったタイトルもちょっと変わったものが多いじゃないですか。人によっては理解できないけれど、ハマる人にはハマるみたいな。今回の『KILLER INN』はどのように構想していったんですか?

藤永:もともと性格的に、「もうあるものを作ってもしょうがない」と思ってしまうんです。同じことを繰り返すくらいなら、やらない方がいいと感じてしまうタイプなんですね。

 だからこそ、まだこの世になくて、誰もやったことがない。どう転ぶかも全く分からない未知のものに挑戦したいという気持ちを常に持っています。今回もこのネタを思いついた時に「まだ誰もやっていない」と確信し、そこから仕込んでいったんです。

歌広場:良ければ、『KILLER INN』の一番最初のきっかけになったアイデアの源泉も共有いただけたら嬉しいです。

藤永:もちろんです。私がアメリカ出張中にタクシーの中で、ふと思いついたのが始まりでした。当初のアイデアは「100人対戦のアクション人狼」というもので、実際のホテルを舞台に、宿泊客100人の中に1人殺人鬼が紛れ込んでいるという設定でした。

 従来の人狼ゲームは議論ベースで言葉と頭脳で勝負しますが、実際に殺人事件が起きたら、最後は戦って決着をつけなきゃいけないはずだと思うんです。ミステリードラマでは、推理で犯人を特定した時点で決着がつきますが、本当の犯人は絶対降参なんかしないはずで、探偵の方が犯人より弱かったら、絶対返り討ちに遭う。逆を言えば犯人は正体がバレても戦闘力があれば勝てるわけです。

 こうした「最後は強い者が勝つ」という要素をミステリーに持ち込み、リアルさを表現したかった。それが最終的に「力で解決するミステリー」の企画としてまとまったのです。

『KILLER INN』というタイトルは最初から一択だった

歌広場:TBSが『KILLER INN』に関わると聞いたとき、僕は「マーダーミステリーシアターの舞台公演」や「人狼を題材にした劇団公演」のような形で展開していくのかなと想像しました。そう考えると、ゲームのキャラクターたちも“舞台映え”する魅力的なデザインだなと思ったんですよ。

 本業のゲーム会社ではない立場から見て、『KILLER INN』を最初にプレイされたときは、どんな印象や感想を持たれましたか?

時松:KILLER INNのようなタイトルは全くの未経験でしたので、やり方が全く分からない状態から、スクウェア・エニックスさんの担当者や弊社スタッフに教わりながら、夜な夜な自宅でプレイしていました。最初はすぐに倒されていましたが、1マッチ15~20分くらいで完結するため、ついハマってしまうんですよ。

 最後のマッチで終わり方が気に入らないと、「もう1回だけ......」と続けてしまい、気づいたらあっという間に時間が過ぎている。本当に中毒性があるゲームだなというのが率直な感想です。今では人と会うたびに「スクエニさんとの協業で『KILLER INN』というゲームがあって」と、熱く語ってしまうほどです。

歌広場:『KILLER INN』を正式リリースするにあたって、ベータ版におけるユーザーのリアクションはどのくらい反映されることになりましたか?

藤永:オンラインゲームは、「ユーザーの声で完成形を作り上げる」ものなので、本当にすべてのフィードバックに一文字残らず目を通しています。2026年2月に早期アクセス版をリリースしましたが、「まだ未完成だからこそ、ユーザーさんと一緒に磨き上げていこう」というスタンスを大切にしていて、毎週のようにゲームのバランスが変わっていく感じになってますね。

歌広場:そうなんですね。僕の知り合いのゲーム配信者は「証拠を集めている時に死ぬのが不親切」と言っていて。

藤永:直近のアップデートで、死ななくなったんですよ。

歌広場:なるほど。確かに、証拠集めの時だけ無敵な方がいいとは思っていました。でも、そういった意見を反映したということですよね。

藤永:ユーザーさんから言われてハッとするんですよ。せっかく証拠を見つけて、誰が怪しいかがわかってきたのに、そこで殺されたら証拠を拾わない方がいいのではという気持ちになってしまう。それは絶対に良くないから、「証拠を拾っている間は無敵にしよう」とすぐに変えたんです。

歌広場:そういうトライ&エラーを繰り返してきているわけですね。

藤永:おっしゃる通りで、マーダーミステリーは1回遊んだらもう終わりじゃないですか。そういった構造上の問題があるからこそ、配信もできなければ、ネタバレも絶対にできない。そのような制約があるなかで、リッチなミステリー体験を何度もできるようにしたら面白くなるのではと考えたんですね。

 毎回犯人が変わって、犯行の手口が変わって、動機が変わって。どう解決するか、誰が解決するかもその都度異なる。

 私自身、マーダーミステリーがすごく好きだからこそ、何回もみんなが気軽に楽しめる新しいミステリー体験を作りたいと思ったのが、『KILLER INN』の原点になっています。

歌広場:僕もマーダーミステリーが大好きで、もっと流行ると思ってたんですよ。でも実際にはリアル脱出ゲームほどブームにはなっていない。マーダーミステリーとリアル脱出ゲームの何が違うのかと言うと、やはりネーミングの差なんじゃないかと。「マーダーミステリー」という言葉がイメージしにくく、コンセプトが伝わりにくいと思う一方で、『KILLER INN』というタイトルは非常にキャッチーで覚えやすいと感じました。

藤永:「KILLER INN」というタイトルは、最初から一択でした。英語ネイティブでなくても、日本人が聞いて「なんかキラーがいるんだな」と直感的にイメージできる響きだったので、他の候補を検討することなく、そのまま決定しましたね。

売れるゲームの「お作法」を踏襲しながら、狼と羊のバランスを試行錯誤した

歌広場:マッチング人数を24人以上としたのは、最初から想定していたんですか?

藤永:最初は「100人の中に1人のキラー」という感じでしたが、すぐに「99人が暇を持て余す」と気づいて(笑)。そこから、狼がどれくらい紛れ込むとゲームとして成立するかといった比率を見ていったんですよ。

 例えば髪の色が何種類あるか、服の色が何種類あるかといった要素を組み合わせることで証拠のパターンが生まれますし、「証拠を1つ拾ったときにどれくらい容疑者が外れるか」といったところも含め、細かく検証していったんです。

 そうしていくうちに、「8人の狼と16人の羊」という構成が、ゲームとしてバランスが取りやすい形ではないかという結論にたどり着きました。キャラクター自体は、実はもっと作り溜めているものもあるんですが、最初は24人から始めて、そこから徐々に追加していく方針になりました。

歌広場:ボクサーとか弁護士とか、特色を持ったキャラクターたちが多いですが、すべて藤永さんが作られたんですか。

藤永:キャラクターの設定は僕が全部書いているんですけど、キャラクターの発案はカナダチームと日本側の共同作業です。初期アイデアの半分くらいはカナダチームからのものになっていますね。結果的には、洋ゲー風キャラと日本的な可愛いキャラがちょうど半々で混在する面白いミックスになったのではと思います。

歌広場:おふたりの中で思い入れのあるキャラクターはいますか?

藤永:ゲーマーは思い入れがありますね。子供の時からゲームが大好きで、友達とずっと一緒にやってきたのに、気がついたら周りの子たちはゲームをやらなくなっていた。勝手に周りが大人になってゲームから離れていった寂しさや、純粋な遊びに対する渇望みたいなテーマをもとに作ったキャラクターなので、すごくこだわりがあるんですよ。

時松:私の場合は特別な思い入れというよりも、実際にプレイしている中で、自分のレベルに合った使いやすいキャラクターを選んでいて、今は弁護士や貿易商が好きですね。

 弁護士はレベル4になると、いろんなものが安く買えるようになりますし、貿易商は拾ったアイテムを高値で売れるようになる。私はこまめにアイテムを拾うタイプなので、ゴールドが貯まれば武器のグレードアップもできるため、この2つのキャラクターはお気に入りです。

歌広場:ゲームの内容でお聞きしたいのですが、非対称型ゲームとして『Dead by Daylight』などの作品はどの程度意識されましたか?

藤永:あまり意識はしてないんですよ。

歌広場:あ、そうなんですね! 逆にFPSからアイデアをもらおうとかは思っていましたか?

藤永:それもないのですが、売れている非対称型ゲームには、「こうあるべき」というお作法がやっぱりあるんです。操作感とか気持ちよさなど、そのジャンルをやっているゲーマーにとって、直感的に理解できるポイントを押さえることが重要なんですね。

 もちろん『Dead by Daylight』の面白さも理解していますが、だからといって真似するというより、お作法に則って収まりの良い形に自然と収束していきました。

歌広場:最終的に人狼が1人になっても、決して人数で人狼が負けることはないというのが『KILLER INN』の面白いところですよね。

藤永:まさにそこが醍醐味だと思います。「犯人の方が強ければ、探偵が返り討ちに遭う」というリアリティが、ゲーム内で実際に体験できるのが気持ちよくて。「まさか、あそこから逆転するとは」という展開もよく起こるんです。

歌広場:誰かと誰かが戦っていて片方が倒れると、「この倒れた奴が狼だ!」と勘違いして撃ち合いが始まり、結局は味方同士で次々に石化していく無限ループに陥るのは、ゲームのリアルな駆け引きなんだなと感じました。

藤永:直感的に狼と分かるルールやモードも追加したい気持ちはすごくあります。ただ、「リアルなミステリー体験」という観点からすると、負の連鎖こそが人間らしいというか、ある種のドラマが生まれるんです。

『KILLER INN』プロデューサーが語るゲームで勝つための立ち回り方と戦略

歌広場:人のことを信じたり疑ったりする能力とか、本当に一人ひとりの生き残り戦術が試されるゲームですよね。僕も試遊した際に、何もせずに勝ってしまったことがありました。「よく分からないけど終わっていた」というのは人狼ゲームではあまりなく、『KILLER INN』ならではの体験だなと思いました。

藤永:もちろん、何もせずにチームが勝っただけだと、どうしても達成感が薄れてしまいますよね。なので、例えば証拠を集めることで犯人探しに貢献したというのがプレイヤーにも分かるようにするとか、これからもゲームを進化させていかなければと考えています。

歌広場:色々とお話を伺ってきましたが、あらためて『KILLER INN』に興味を持ってもらうために、プロデューサーの目線からゲームの基本的なセオリーと立ち回り方を教えていただけたらと思います。

藤永:まず羊チームの基本は、「証拠をとにかく集めること」です。急がば回れじゃないですけど、戦いに勝ちたかったら犯人を特定すること。誰が狼かわからない状況が最大のリスクなので、証拠を拾って情報を収集していくことで犯人像を絞り出すことが重要です。これをスキップして、バトルに参戦しようとすれば、結局カオスに飲み込まれて勝てなくなっていくんですよね。証拠はチームで共有も可能なので、チーム全体で情報を統合することで生き残る確率が高くなります。

 しかも狼を特定すると、その相手に対してダメージが20%アップするボーナスが入るので、撃ち合いになれば羊側が有利になります。

 つまり、狼を特定した瞬間に、羊は“狩られる側”から“狩る側”に回れるわけです。そのため、証拠を集めて狼を特定し、チームで倒しにいくという遊び方が、実際にはかなり強い戦術ですね。

歌広場:羊側でプレイしている時に、「自分はこうしたら勝てた」「ここが原因で負けた」と感じるような体験はありましたか?

時松:「落ちているアイテムを拾おうかな、どうしようかな」と迷っている一瞬の隙にやられてしまうことはよくあります。ほんの少しの迷いの時間で、狼と鉢合わせてしまい、倒されてしまう。だから羊側でプレイしていると、どこか怯えながらというか、周りを警戒しながら動くことになるんですよ。

歌広場:まさに人狼ゲームと同じですね!

時松:逆を言えば羊になったときに、他のプレイヤーの動きを見ていると、意外と狼のヒントがあるんです。例えば、迷いなく一直線に目的地へ向かって、そこの目的を果たして次に行く人は、だいたい狼の可能性が高い。羊だとどうしても周りを気にしながら、少し慎重に進むことが多いですからね。

 このような駆け引きや探り合いが、このゲームの面白いところだなと感じます。

歌広場:でもそうですよね。目的を果たしに行くのに狼は怖いものがないから。悪さをしなければバレないから殺されない。だからその間に、クエストして強くなればいいわけだなと。

藤永:体験会をやった時にも、羊を何回か引いて、ずっとボイスチャットで喋っていたのに、いきなり急に喋らなくなった人がいましたね。

歌広場:それはかなり怪しすぎるじゃないですか(笑)。ちなみに、狼側の立ち回り方で何かおすすめはありますか。最初の段階では狼を強くしすぎているという部分もあったかと思うんですけど。

藤永:狼は全体の3分の1の確率(33%)で選ばれるため、「自分が狩る側だ」というマインドが必要で、強くあってほしいわけです。

 一方で、圧倒的多数の羊をひっくり返すための逆転する仕掛けもなければならない。それがお手つきによる内部崩壊の仕組みと、証拠による特定リスクで、上手く両者のバランスを取っているんです。

 とはいえ、先に仕掛けられる狼は圧倒的に強いので、「もう羊が勝つのは無理かも」と思われないようなさじ加減など、どれくらい逆転の目があるべきなのかは今も探っているところです。

目指すは実写化とイベント化 ゲームの枠を超えた体験型コンテンツとしての可能性

歌広場:狼も人狼も、結局は「周囲と上手く手を組んだ者」が勝つんですよね。現在『KILLER INN』では、ボイスチャットやコメントのやり取りがリアルタイムに適用していない部分もあるものの、将来的にコミュニケーション機能が充実すれば、心理戦の醍醐味がさらに深まるんじゃないかと感じています。今後の展開としては、どのような構想を描いていますか?

時松:TBSは映像・メディアの会社なので、将来的には「8人の狼と16人の羊に分かれて対戦を行う」という設定を活かし、NetflixやU-NEXT向けの実写ドラマ化も視野に入れています。まずはゲームで知名度を上げ、そこから映画やドラマ、謎解きイベント、体験型コンテンツといったメディアミックスの展開ができればと考えています。

 そうしたなかで、月一の会議では『KILLER INN』をイベント化するアイデアも出ていますね。例えば、「King Of KILLER INN」という4人1チームの対抗戦を開催し、狼と羊を同じ回数プレイしてもらって、総合点数で競うトーナメントも面白いなと思っています。

藤永:早期アクセスのベータテストもそうですけど、このゲームはまさに生き物のような存在だと感じます。プレイヤーの声に応じて、その都度変えていくじゃないですか。ある時期は忍者が強い時代がきたり、次はボクサーが強くなったりと、「みんなで育てるゲーム」という感覚があるからこそ、ずっと開発が終わらないというか。プレイヤーと共に成長していくのが『KILLER INN』の最大の魅力ですね。

歌広場:本当に大変興味深いお話をありがとうございました!

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