「ひとりの人間として、心を動かされた」 坂東工が明かす『バチェラー』シリーズとともに歩んだ10年と、“相手”との向き合い方 

坂東工が『バチェラー』と歩んだ10年

 選ぶ人、選ばれる人、そして旅を去る人——。Prime Videoの恋愛リアリティ番組『バチェラー/バチェロレッテ・ジャパン』シリーズで、ローズセレモニーの場に立ち、その一つひとつの決断を静かに見届けてきたのが、司会進行役の坂東工だ。穏やかな佇まいと丁寧に紡ぐ言葉で参加者たちを見守り、シリーズに欠かせない存在として多くの視聴者に親しまれてきた。

 『バチェラー・ジャパン』シーズン1の配信開始から約10年。数々の恋愛模様と人生の分岐点を間近で見つめてきた坂東は、いま番組からの卒業という大きな節目を迎えようとしている。

 10年という時間のなかで、参加者たちとどう向き合ってきたのか。そして、最新シリーズ『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン4最後のローズセレモニーで感じた“引き際”とは。坂東工に、『バチェラー』シリーズとともに歩んだ10年、そして番組からの卒業を迎える今の思いを聞いた。(すなくじら)

「旅は僕のものではない」「僕自身の思いや解釈が介在しすぎてはいけない」

坂東工

──『バチェラー・ジャパン』シーズン1(2017年配信)から10周年となりました。最初に出演が決まったときは、どのようなお気持ちでしたか?

坂東工(以下、坂東):正直に言うと、「何が始まるんだろう」という感覚でした。ただ、僕はもともと新しいことに挑戦するのが好きなんです。0から1を作るような場に携われるのは、何かのご縁なのだろうと思って、参加させていただきました。

──当時、『バチェラー・ジャパン』という番組にはどのような印象を持っていましたか?

坂東:僕はアメリカでの生活が長かったので、番組の存在自体は知っていました。ただ、欧米のフォーマットがそのまま日本で受け入れられるとは限らないじゃないですか。だからこそ、日本ならではの形を目指したほうがいいのではないかと考えていました。

 とはいえ、司会者としてどう振る舞うべきかが、最初から細かく決まっていたわけではありません。僕自身も、急にその場に入ったような感覚でした。どちらかといえば、本当に出たとこ勝負でしたね(笑)。

 役者の仕事では、“役を作り上げて現場に持っていくこと”をしてきました。でも、この番組では、作り込んだものを出すよりも、“その場で起きていることに向き合う”ほうが大切なのだとシーズン1で気づいたんです。試行錯誤を重ねながら、少しずつ今の形になっていったのだと思います。

──司会者として、参加者の皆さんと向き合ううえで大切にしていたことを教えてください。

坂東:大前提として、この旅は僕のものではありません。僕はあくまでも一歩引いた立場から、皆さんと関わらせていただく存在です。だからこそ、僕自身の思いや解釈が介在しすぎてはいけない。その距離感は、最も心がけていたところですね。

 一方で、僕も人間ですから、つい誰が選ばれるのかを想像してしまうことはあります。ただ、その想像が生まれた瞬間に、「もうやめよう」と思うんです。邪推のようなものはしたくないんですよね。もちろん、想像力はどうしても働いてしまう。でも、それをなるべく参加者の皆さんに感じ取られないようには意識していました。

──『バチェラー/バチェロレッテ・ジャパン』で、現場の空気感に違いを感じることはありましたか?

坂東:最初は、そこまで大きな違いはないと思っていたんです。ただ、男性参加者たちは、作戦を立てるというより、その時々の感情がまっすぐ出る瞬間が多かったように感じます(笑)。僕自身、彼らの不器用さや迷いに思わず共感してしまう部分もありました。

 一方で、『バチェラー』では、女性たちが周囲をよく見ているイメージがありました。相手や場の空気を読む姿勢が印象的だったというか。もちろん一概には言えませんが、どちらが良い・悪いということではなく、それぞれに違った色があるのだと思います。

「ひとりの人間として、心を動かされている自分がいた」

坂東工

──10年にわたり番組に関わる中で、ご自身が変わったと感じる部分を教えてください。

坂東:やっぱり、誰かを応援できるようになったことですね。役者としては「自分が一番でありたい」という意識も、どこかにあったと思うんです。でも、参加者の皆さんと関わっていく中で、それぞれのストーリーに共感するようになった。その共感が訪れたときに、本気で心から幸せになってほしい、頑張ってほしいと思えるようになりました。それが一番の成長だったと感じています。ただ、“応援”にもいろいろな形があるんです。

──たとえば、どんな形の応援があるのでしょうか?

坂東:この番組はまさに、人生の縮図のようなものなので。例をあげると、“別れ”自体もひとつの“応援”だと思っています。その瞬間は悲しいかもしれない。でも、その別れがあったからこそ、次へ進めることもあるじゃないですか。最後に残ることだけが「よかった」と言えるわけではない。別れも含めて、それぞれの人生に必要な瞬間として受け止めたいと思うようになりました。

──これまでのシーズンを振り返って、特に心を動かされた場面はありますか?

坂東:参加者の皆さんのストーリーを目の当たりにして、心が動く瞬間は本当にたくさんありました。どのシーズンにも、それぞれの物語がありますから。

 その中でも最も大きかったのは、今回の『バチェロレッテ』シーズン4のファイナルローズセレモニーです。いろいろな場面が自分の中で思い返されて、感動を飛び越えて、我を忘れるような瞬間がありました。司会進行役としてその場に立つ“坂東工”ではなく、ひとりの人間として、心を動かされている自分がいたんです。「僕の役割はここまでなのかもしれない」と。その感覚は、今回の卒業という決断にもつながっています。

坂東工

──シリーズを通して繰り返し出てくる言葉に、「真実の愛」があります。坂東さんは、その言葉をどのように捉えていますか?

坂東:“幸せになるために何かをする”のではなく、“幸せを感じるために行動を起こす”。そういうものに近いのかなと思います。

 真実の愛は、一つではありません。相手が変われば、真実も変わります。体験してなんぼなんですよね。それが真実かどうかは、あとで決めればいい。だからこそ、そこに向かうまでに何をしたかが、非常に重要なんです。

 だからこそ、行動せずに終わってしまうのはもったいない。ただ、思ったらすぐ動けばいいというわけでもありません。相手がいるものなので、その人を大切にしながら、一歩一歩歩んでいく。その過程自体が、尊いものなのではないでしょうか。

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