東京真中×TAKU INOUE対談 夜が似合う二人のプロデューサーが語り合う“ボカロとクラブミュージックの接点”

東京真中が選ぶ“クラブミュージックとボカロ”な3曲

ーーここからは今回の対談にあたり、東京真中さんに「クラブミュージックとボカロ曲」というテーマで3曲をセレクトいただいたので、そちらをTAKUさんに聴いていただいたうえでお話を進めたいと思います。まずはTAKUさん、3曲を聴いてみていかがでしたか?

OLDUCT「くじらマーク™ / 宵音ムリ」

TAKU:いやー、全部めちゃくちゃ良かったです! 一番刺さったのはOLDUCTさんの「くじらマーク」。僕は存じ上げなかったんですが、聴いた瞬間に「超かっけえ!」と思って、Spotifyで他の曲も聴いたら全部良くて普通にファンになりました(笑)。ボカロっぽくないというか、ポーター・ロビンソンのような声の使い方が面白かったですし、構成がすごくDJフレンドリーなんです。イントロとアウトロが繋ぎやすくなっていたり、ブレイクで盛り上げてドロップで音数が減る展開など、クラブでかけてくれ感がすごかった。

Giga「Beyond the way ft.Miku・Rin・Len」

 Gigaちゃんはクラブでもよく会う飲み仲間なんですが、改めて「Beyond the way」を聴いて「音が良すぎる、勘弁してくれよ」と思いました(笑)。ベースがデカすぎるのにちゃんと受け入れられているし、ポップスのマナーも踏まえていてリスナーを置いてけぼりにしない。やっぱりGigaちゃんは半端ないなと。

柊マグネタイト「雑魚 / 亞北ネル」

 柊マグネタイトさんの「雑魚」は、「ポップ7割、クラブミュージック3割」みたいなバランスが面白いですよね。M1のリリースカットピアノが鳴っていたり、ベースも巨大で最高でした。「テトリス」にも感じていましたが、大ネタを使ってアンセムを作るというアティチュードにクラブマナーを感じます。

ーー東京真中さん、この3曲の選曲意図を教えていただけますか?

東京真中: TAKUさんにおっしゃっていただいた通りなんですが、OLDUCTさんは個人的に今最も推しているボカロPです。UKガラージやプログレッシブ・ハウス、ゲーム音楽がルーツにあるらしく、「歌」として聞こえるボーカロイドよりも、「楽器」として声を使っている感じが、サウンドライクな私としてはすごくハマっています。

 Gigaさんと柊マグネタイトさんに関しては、歌としても割と聴けるバランスのものを選びました。Gigaさんは、あえて「Beyond the way」を挙げたんですが、ダンスミュージックでありながらメジャーポップスシーンの作法も完璧にこなす、その凄みへの憧れがあります。私のダンスミュージック観は「TAKUさんとGigaさんと海外のダンスミュージック」で成り立っていると言っても過言ではないので(笑)。

 柊マグネタイトさんの「雑魚」は、歌詞やテーマのインパクトが強すぎてサウンドに耳が行きにくいんですが、実はサウンドがめちゃくちゃ良いんです。ベースの16分のスイングした感じや、サビでローミッドがガツンと来る感じ、ボーカルチョップの使い方など、王道なダンスミュージックの要素があって、色の違った3曲として挙げさせていただきました。

「『ボカコレ』はゴールじゃなく、あくまで知ってもらうきっかけの一つ」

ーーせっかくの機会ですので、東京真中さんからTAKUさんに聞いてみたいことはありますか?

東京真中:TAKUさんのオリジナリティの一つであるドラムのサウンドについて聞きたいのですが……レコーディングされている時もあるのかなと思いつつ、基本は打ち込みやサンプリングなどで作っているのでしょうか?

TAKU:レコーディングしない時は、9割方サンプリングですね。でも、サンプルをそのまま貼り付けることはほぼなくて。16分音符ぐらいずつ切り貼りして、自分の好きなフレーズやリズムに作り変えています。ドラムのサンプル集めが趣味みたいなもので、Spliceなどのサブスクリプションサービスだと音が被ることもあるので、たまに奮発して4〜5万円するような高いドラムだけのサンプル集を買ったりしています。あれは一生使えるのでおすすめですよ。

東京真中:なるほど……! あのサウンドをサンプルを切り刻んで作っているというのは、相当な狂気を感じます(笑)。「アンチグラビティ・ガール」(月ノ美兎)や「Stellar Stellar」(星街すいせい)のような曲を死ぬまでに1曲書きたいというのが私の夢なんですが、それらの楽曲もドラムはサンプリングなんですか?

TAKU:そうですね。「Stellar Stellar」の細かいフィルとかも全部サンプリングですし、メインのキックやスネアもサンプルを重ねたりしています。レコーディングしなくても全然できますよ。ただ、めちゃくちゃ時間はかかります(笑)。「なんで俺はこんなことをやってるんだろう……」と思いながら作業するときもありますけど、やっぱりあのやり方が気持ちいいんですよね。ストリングスなどは8割方レコーディングしていますが、ドラムに関してはそんな感じです。

東京真中:その「狂気の作業」をする覚悟があればできるということですね。一度頑張ってやってみます!(笑)

TAKU:僕からも質問したいんですけど、東京真中さんは今後、どういう活動をしていきたいんですか?

東京真中:自分は常に「5年後どうなっていたいか」を考えながら活動していて、今後の目標として大きいものは「アリーナツアーをする」というものがありますね。これは5年後は間に合わないかもしれないので、7年後くらいになるかもしれませんが。あとは先ほどもお話しした代表曲的なものを作りたいですし、音で「こういうボカロもありだよね」という発明をしていきたいです。

TAKU: すごいですね。ちゃんと将来を見据えて、そこから逆算して今何をすべきかを考えている。僕は行き当たりばったりで生きてきたので(笑)、心の底から尊敬します。

ーー最後に、今回は『The VOCALOID Collection』の企画でもあるのですが、TAKUさんは『ボカコレ』について、外から見ていてどのような取り組みに見えますでしょうか?

TAKU:始めた人が上のステージに行ける場所……ある意味「甲子園」のような場所として定着していて素晴らしいですよね。そこで終わりではなく、そこからプロの舞台へと続いていくドラマがある。東京真中さんのように、しっかりと先を見据えたクリエイターが出てきているのは頼もしいですし、7年後のアリーナツアー、本当に楽しみにしています。

東京真中:ありがとうございます。がんばります! 私も『ボカコレ』はゴールではなく、あくまで自分を知ってもらうきっかけの一つとして捉えています。もちろん参加するからには1位を狙って、「青春を取り戻す」つもりで全力で楽しみますが、その先にあるアーティストとしての未来を見据えてやっていきたいですね。

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