『HELLDIVERS』実写映画化の次に来るのは? ゲーム映像化トレンドの背景と“最有力候補”を考える
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(以下、ソニー・ピクチャーズ)は2月12日、『HELLDIVERS』を実写映画化し、2027年11月にアメリカで劇場公開する予定であることを明らかにした。
各エンターテインメント領域を巻き込み、広がるゲーム作品の映像化。なぜいま、映像作品の原作にゲームが選ばれるのか。背景を踏まえ、次なる候補を予測する。
骨太な難易度、おバカな世界観が魅力の協力型TPS『HELLDIVERS』
『HELLDIVERS』は、2015年にPlayStation 4などで発売された三人称視点型のシューティングアクションだ。舞台となっているのは、人類が進出した西暦2084年の宇宙。プレイヤーは、エイリアンの襲撃を受け、窮地に立たされていた同胞を救うべく、「HELLDIVERS(ヘルダイバー)」の一員となり、立ちはだかる脅威との激闘を繰り広げていく。
最大4人で共闘するPvE・協力型のシューティングでありながら、敵と同様に味方にもダメージを与えられる「フレンドリーファイア」の仕組みを持つ点が特徴。こうした仕様が骨太な難易度、ブラックユーモア満載のおバカな世界観と相まって、無二の魅力を生み出し、ジャンルを愛好するフリークを中心に好評を博した。
2024年には、第2作『HELLDIVERS 2』をリリース。前作で支持されたゲーム性、世界観をそのままに、さまざまな新要素を盛り込んだ同作は、事前の期待どおりの高評価を獲得し、シリーズの人気を確固たるものとした。
ソニー・ピクチャーズによると、映画『HELLDIVERS』では、監督を「ワイルド・スピード」シリーズなどで知られるジャスティン・リン氏が、主演をTVドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』や、DCコミックスを原作にした映画『アクアマン』で知られるジェイソン・モモアが務めるという。
「HELLDIVERS」シリーズの発売を担うソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)からは2019年、抱える自社IPの利活用を推進する目的で、新たな制作スタジオ・PlayStation Productionsが設立されている。同組織とソニー・ピクチャーズがコラボレーションするのは、2025年公開の実写映画『アンティル・ドーン』以来となる。
アクション映画のディレクションに定評のあるジャスティン・リン氏と、『マインクラフト/ザ・ムービー』での熱演が記憶に新しいジェイソン・モモア。2人の化学反応によって、「HELLDIVERS」の世界観がどのように映画の舞台で再現されるのか。今後の動向に注目が集まっている。
なぜゲーム作品の映像化が続くのか
ゲーム業界ではここ数年、人気作品/シリーズの映像化が相次いでいる。おなじくジェイソン・モモアが主演した映画『マインクラフト/ザ・ムービー』の成功は記憶に新しいところだ。これ以外にも、「Fallout」シリーズの実写ドラマ化、『8番出口』の実写映画化など、その例は枚挙にいとまがない。2026年4月には、『スーパーマリオギャラクシー』を原作としたアニメーション映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』も全世界での公開を予定している。さらに影響範囲を国内のみに限定すれば、人狼系ADV『グノーシア』のTVアニメ化も話題を集めた。ゲーム作品の映像化は、各エンターテインメント領域を股にかけた一大トレンドとなりつつある現状だ。
こうした潮流の背景には、メディアミックスの相対的なリスクの低さとリターンの大きさ、定額制動画配信サービスの台頭など、さまざまな要因がある。なかでもとりわけ影響を与えていると考えられるのが、ゲームコンテンツの性質の変化だろう。
昨今のゲーム作品、特にAAAと呼ばれる話題作は、演出の一部として実写さながらの映像を盛り込んでいるケースが多く、また、そうした演出を駆使したストーリー性のあるシナリオも、ジャンルを問わず、作品の魅力となっている面がある。先述した「Fallout」シリーズ、『8番出口』、『グノーシア』は、どれもがこの傾向に当てはまる。2025年7月、Netflixでの実写ドラマ化が発表された「アサシン クリード」シリーズも同様だ。
このような特徴を持つコンテンツを原作に据えることは、映像作品の制作側にとって都合が良い。含むべき構成要素、さらには全体図をイメージしやすいからだ。また、こうした性質は、娯楽性や文化的な価値以上に、世界観やシナリオの秀逸さ、キャラクターの魅力が重視されやすい、業界内の流行とも重なる部分がある。紹介したすべての例が一連の要素を含んでいることは言うまでもない。
また、ここには、“ファーストペンギン”となった人気作品/シリーズが一定の成功を収めたことも、追い風として作用したと考えられる。「メディアミックスをめぐるリスク・リターンの考え方」「コンテンツ市場をめぐる構造の変化」「業界内での流行」「それに対する需要」など、いくつものピースがはまるようにして生まれているのが、現在のゲームコンテンツの映像化のトレンドであるというわけだ。
このような背景から推測するかぎり、こうした風潮は今後も広がっていく可能性が高い。少なくとも、前例が評価されているうちは続いていくというのが既定路線だろう。現状、ゲームコンテンツを原作とした映像化作品は、劇場、TV、VODサービスと、メディアを限定せず、一定の成功を手にしている。このことも気運の高まりに寄与しているのかもしれない。
広がるゲーム作品の映像化 次なる候補は?
では、どの作品が「HELLDIVERS」に続くのか。おそらく多くの人が思い当たるのは、米・Rockstar Gamesが手掛ける2つの人気シリーズ「グランド・セフト・オート」や「レッド・デッド・リデンプション」だろう。これまでに映像化を果たしたラインアップに共通するのは、どれもがゲーム作品として商業的な成功を収め、世界中にファンを持つという点だ。この条件は「グランド・セフト・オート」「レッド・デッド・リデンプション」の双方に当てはまる。
一方で、本稿で論じた映像化トレンドの背景を踏まえると、「グランド・セフト・オート」は脱落するのかもしれない。なぜなら、同シリーズはどちらかといえば、ナラティブよりもオープンワールドシステムをベースにした自由度の高さを売りとしているからだ。
他方、「レッド・デッド・リデンプション」は、同様にオープンワールドシステムを取り入れながらも、そのシナリオに多くの提起的な要素を含んでおり、物語性も強い。両者だけで考えるのであれば、「レッド・デッド・リデンプション」の方が映像化には向いていると言えるだろう。
とはいえ、一連の潮流のなかには、『マインクラフト/ザ・ムービー』のような異色の例も存在する。ストーリ性の強い独自のシナリオを用意すれば、「グランド・セフト・オート」にも映像化の目は残されているのかもしれない。
私が次なる候補として予測しているのは、SIEの手掛けるアクションアドベンチャー『Ghost of Tsushima』だ。米・ワシントンに拠点を構えるSIE傘下のゲームスタジオ・Sucker Punch Productionsによって開発された同作は、息をのむほど美しいグラフィック、主人公である境井仁の生き方をめぐる没入感のあるシナリオなどが評価され、新規IPとしてはここ数年でも有数の成功作品となった。2025年10月には、続編にあたる『Ghost of Yōtei』が発売を迎え、こちらも高評価を獲得。SIEによるファーストパーティーとして不動の地位を手にしつつある。
2021年には、映画化のアナウンスが公式よりあったが、その後、続報は届いておらず、一部では、制作中止になったのではないかとの声もある。しかしながら、現時点でアナウンスは撤回されていないため、可能性はゼロではないと言えるだろう。
国内では2025年初頭、アニメの制作も発表されている。公開予定時期は2027年とのこと。仮に映画化の計画が白紙となっていたとしても、アニメ作品が成功を手にすることになれば、再度気運が高まることもあるのかもしれない。
『Ghost of Tsushima』には、本稿で映像化の必要条件としてきた「実写さながらの映像美」「ストーリー性のあるシナリオ」「主人公のキャラクター性」「世界中で人気を博していること」がすべて含まれる。これ以上に映像化に適した作品はないのではないだろうか。
すでに一度映画化が発表されてはいるものの、それから経過した時間を考えると、現実性が薄れつつあるのは確かだ。近いうちに、(上述のプロジェクトの進捗報告を含めた)具体的なアナウンスがあってもおかしくはない。
各エンターテインメント領域をまたいで盛り上がるゲームコンテンツの映像化。みなさんはどの作品/シリーズを次なる候補に予測、あるいは期待するだろうか。それらのなかから、実際に映像化を果たす作品が現れるかもしれない。