ABEMAがインディーアニメ発のヒットを早々に実現できた理由 「Project PRISMation」の取り組みに迫る


 近年、世界的に日本アニメの人気が高まっている。昨年の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、トム・クルーズやブラッド・ピット主演作を抑えて、2025年世界興行収入7位という驚異的な記録をたたき出し(※1)、ゴールデングローブ賞の長編アニメーション部門へのノミネートも果たした。

 アニメのヒットだけにとどまらず、日本発のIP(知的財産)は今、世界的に注目されている。『ONE PIECE』の実写シリーズの成功も記憶に新しく、2025年には大手出版社の講談社が自社が保有するIPをハリウッドで映像化していくためにスタジオを設立。クロエ・ジャオという大物監督を迎えて、世界を驚かせている。

 しかし、こうした人気IPの多くはマンガから生まれており、アニメオリジナルのIPをいかに育てていくのかが業界全体で課題となっている。一方で近年、インディペンデントなアニメーション作家の活躍が目立つようになってきた。彼らは個人で活動するゆえに創造性を自由に発揮している。そんなオリジナルアニメを生み出しているクリエイターたちをさらに高いステージに引き上げるためのさらなる活躍をサポートするため、ABEMAは次世代のアニメクリエイターとの共創プロジェクト「Project PRISMation」を始動させた。

 すでにYouTubeで公開から10日間で100万回再生を記録した作品も登場するなど好調な滑り出しを見せている。このプロジェクトが現在の二極化する日本のアニメシーンにどんな影響をもたらすだろうか。

インディペンデント・アニメーションの盛り上がり

 インディペンデントのアニメーション作家が生み出すショートアニメは、10年程度前からSNSを中心に盛り上がりを見せている。

 きっかけの一つとして、こむぎこ2000氏がTwitterで投稿し始めたハッシュタグ「#indie_anime」がある。自らもインディーズで活動するこむぎこ氏は、このハッシュタグとともに短いアニメーション映像を投稿していた。このハッシュタグはその後、広がりを見せ、今では数多くの個人作家が自作をPRするために活用している。代表的な作家として前述したこむぎこ2000氏の他、はなぶし氏や、しまぐちニケ&Biviのユニット「擬態するメタ」などが挙げられる。このハッシュタグでの投稿をきっかけに、企業の仕事につながるケースもあるという。

 こうした作家たちが活躍できる土壌が育ったのは、短編のアニメーションを活用するクライアントの増加も大きい。音楽アーティストや企業がブランディングのためにアニメーションを起用する機会が増加しており、作家のアートスタイルや個性を生かした作品を作ってほしいと求められることも多い。しかも、その波は海を越えており、例えばこむぎこ2000氏は、米国本社のGoogleからの直接依頼をもらったこともある。

 そうして海を越えた彼らの人気は、世界最大のアニメーション映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭にも飛び火している。昨年、同映画祭では、インディーアニメに関するカンファレンスが開催され、カンファレンス会場が満席となる盛況ぶりだった(※2)。

 さらに、今年2月6日に全国の劇場で公開されたアニメ映画『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』が公開から3日間で興行収入1億5100万円、動員10万9500人という大ヒットを記録。元はYouTube総再生回数1.5億回を超えるショートアニメとして人気を博した「銀河特急 ミルキー☆サブウェイ」で、監督・脚本・キャラクターデザインなどの実制作のほとんどを亀山陽平氏が一人で手がけ、放送と同時に11言語の吹替版をYouTubeで全話無料公開していた本作。放送中から国内外で大きな反響を呼び、公開中の映画も大きな話題を呼んでいる。

 マンガ原作のアニメだけでなく、こうした個性的なクリエイターを支持する熱も確実に世界に広がりつつあるのだ。

 こうした流れから、劇場アニメ制作に挑む人も登場している。安田現象氏の『メイクラブ』や映像制作チーム「Hurray!」の『数分間のエールを』などが代表的な事例だ。その後に続く存在として、2月6日に全国の劇場で公開された『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』を監督した亀山陽平氏も挙げられるだろう。本作は、YouTube総再生回数1.5億回を超えるショートアニメとして人気を博した「銀河特急 ミルキー☆サブウェイ」が元になっており、監督・脚本・キャラクターデザインなどの実制作のほとんどを亀山陽平氏が一人で手がけた。放送と同時に11言語の吹替版をYouTubeで全話無料公開し、国内外で大きな反響を呼んだことで劇場版の制作が実現した。新たな才能の生まれる場として、インディペンデントのアニメーションは今、静かな盛り上がりを見せている。

インディー作家にオリジナルの物語を語らせる意義

 とはいえ、いきなりの長編アニメ制作は非常にハードルが高い。短編作品が企業に求められ、作家のセンスを発揮できるとしても、MVもCMもクライアントの世界観と意向ありきであり、自分の物語を語れる場とはならない。

 ABEMAの新プロジェクト「Project PRISMation」は、その溝を埋める企画と言える。

 本企画は、個人、または少数の制作チームとプラットフォームが手を組んでパイロットフィルムとなる短編のオリジナルアニメを制作する。

 短い作品であるがゆえに、作家が自由な発想を独自の感性を反映させ、なおかつ自らの物語を語ることができる。そして、インディペンデントな作家にとっての悩みでもある、作品のプロモーションや企画のディベロップメントをABEMAという大手配信プラットフォームがバックアップすることで、個人制作では実現が難しい座組も可能になる。例えば、音響チームはプロの面々が集い、声優も豪華なキャスティングが実現している。これは個人ではなかなかできないことだ。才能の原石と言える個人の作家に、プロの環境を与えることで、経験を積ませて、作品を一段高いステージへと引き上げる。個性的な作風を活かした物語がここから生まれる予感がする。

 このプロジェクトは、インディペンデントのアニメーションシーンに足りないプロデュース機能を組みこみ、事業者にとってはマンガ以外からIPを生み出すための良質なチャレンジにもなるという点で、双方の課題を解決する試みと言えるだろう。

  「Project PRISMation」では、日本だけに限らずタイやベトナムのクリエイターも選ばれている。第1弾としてYouTubeで公開された作品『Poppin-Play Kitchen』は、公開から10日で総再生数が100万回を突破。また他の作品も含めて、日本語以外のコメントも目立ち、このプロジェクトがすでに世界へ広がりつつあることを実感させる。どの動画にもユーザーが積極的にシーンに意味や物語の考察を展開しており、能動的に楽しまれているようだ。

  どの制作チームも、メインストリームの商業アニメとは異なるビジュアルに挑み、個性的な刺激にあふれている。短い作品で、少数精鋭による制作である強みをいかして、自由な創造性を発揮させることができている。

 ABEMAを提供するサイバーエージェントグループは、「クリエイターファースト」を掲げ、「良いIPはクリエイターの情熱と創造性から生まれる」という方針を持つ(※3)。その言葉通りに、ここから次世代のアニメシーンを牽引する作家とIPが生まれるかもしれない。そんな同プロジェクトの今後が楽しみだ。

参照
※1:https://branc.jp/article/2026/01/29/2358.html
※2:https://branc.jp/article/2025/07/25/1783.html
※3:https://www.cyberagent.co.jp/way/list/detail/id=31832

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