「深剃り=肌荒れ」に挫折した過去は払拭できるか ブラウンの電動シェーバー『シリーズ9 Pro+』を試してみた
「電動シェーバー」という製品から距離を置くようになって、気づけば10年ほどになる。かつて営業職だった筆者は、毎朝の身だしなみとして「とにかく深く剃る」ことを最優先にし、当時は深剃りを売りにした電動シェーバーを手に取っていた。しかし、その代償は小さくなかった。
毎日のように刃を当て続けるうち、肌荒れは次第に悪化。赤みやヒリつきが常態化し、「深く剃れる」ことよりも「肌がもつかどうか」を気にするようになっていった。
試行錯誤の末に落ち着いたのが、T字カミソリとソープによる髭剃りだ。確かに手間はかかるが、力の入れ具合や剃り進め方を自分で調整しやすく、肌の調子とも折り合いをつけやすい。結果として、電動シェーバーは「便利だが、自分の肌には合わない」という認識のまま、選択肢から外れていった。
そんな筆者が今回試すことになったのが、ブラウンの電動シェーバー『シリーズ9 Pro+ 9657cc』だ。約10年ぶりに手に取る電動シェーバーであり、しかもコンセプトは、かつて自分が距離を置くきっかけになった「深剃り」に正面から向き合ったモデルでもある。
この選択は、過去の失敗をなぞることになるのか。それとも、電動シェーバーに対する印象を改めるきっかけになるのか。実際に使いながら、その答えを確かめてみることにした。
なお、ブラウンのシェーバーを使うのは今回が初めてということで、そこも気になるところだ。
約10年ぶりの刃の刷新で、肌を守りつつ肌下-0.01mmの深剃りを実現
『シリーズ9 Pro+』は、ブラウンの電動シェーバーシリーズにおける最新のフラッグシップモデルだ。注目してほしいポイントは、『シリーズ9』の登場以来、約10年ぶりとなる深剃り刃のアップグレードに踏み込んだ点にある。
新たに採用された「極薄マイクロ刃」によって、肌を守りながらヒゲを肌下まで捉えるディープキャッチ網刃と内刃を刷新。刃の安定性を高めてしなりを抑えることで、ヒゲのカット面がよりまっすぐになり、なめらかな肌下−0.01mmの深剃りを可能にしたという。
ヘッドには、ブラウン最高峰とされるPRO密着ヘッドを搭載。前後40°に大きく可動し、顔の凹凸に沿って追従することで、安定したシェービングを支える仕組みだ。ヘッド自体もコンパクトにまとめられており、アゴ下のような剃りにくい部位にも無理なくフィットし、剃り残しを抑えやすい。
さらに、新搭載の「PRO人工知能テクノロジー」によって、ヒゲの濃さを毎秒300回読み取り、部位や状態に応じて出力を自動で調整する。従来モデルから読み取り回数を大きく増やし、深剃りを狙いながらも、肌への負荷を抑える方向へと制御を進化させたかたちだ。
本体にはLEDフルカラーディスプレイも備わる。洗浄のタイミングや替刃の交換時期を色によるガイドで知らせ、シェーバーの状態を視覚的に把握できる。日々のシェービングを感覚任せにしないための仕組みと言っていい。
今回試した『9657cc』モデルには、5in1自動プレミアムアルコール洗浄器が付属する。シェーバーをセットしてボタンを押すだけで、洗浄から乾燥、充電までを一括でこなす装置だ。
専用のアルコール洗浄液を使うことで、水洗いだけでは落としきれない皮脂や油分、ヒゲくずをしっかりと除去する。あわせて除菌効果も期待でき、使い続けるうちに気になりがちなニオイの発生も抑えられるという。洗浄後は温風で乾燥されるため、刃を濡れたまま放置することがなく、コンディションを保ちやすい点も特徴のひとつだ。
洗浄と同時に充電まで完了するため、日々の手入れを簡略化しつつ、次に使うときはすぐに手に取れる状態が整う。メンテナンスの手間を極力減らしたい人にとっては、ありがたい存在だろう。
いざ、『シリーズ9 Pro+』で深剃りにチャレンジ!
スペックをひと通り確認したところで、いよいよ『シリーズ9 Pro+』での髭剃りを試していこう。特別な準備はせず、できるだけ普段どおりの条件で使ってみる。
最後に髭を剃ったのは前日で、いつもと同じくT字カミソリとソープを使っている。ヒゲの伸び具合は、無精ヒゲというほどではないが、剃り跡がはっきり分かる程度。そこからおよそ1日が経過した状態で、『シリーズ9 Pro+』を手に取った。
実際に剃り始めて、まず印象に残ったのは、刃が肌の上を滑っていく感覚のなめらかさだ。電動シェーバーにありがちな引っかかりや、刃が強く当たっているような感触はほとんどなく、ヒゲを削っているというより、肌の表面をなぞっているような感覚に近い。
ヒゲを捉えるスピードも速い。以前使っていた電動シェーバーでは、顎や輪郭まわりを剃る際、角度を変えながら何度も当て直す必要があったが、『シリーズ9 Pro+』では2往復ほどで肌がツルツルになった。想像していた以上に手早く、気づけば髭剃りが終わっている。
髭剃り前と後の肌の状態を比較してみたところ、鼻の下や顎といったヒゲの濃い部分もしっかり深剃りできており、触ってみても「ジョリジョリ」とした感触はほとんど残っていない。普段使っているT字カミソリではここまでの仕上がりにはならないため、これほどツルツルになったのは実に10年ぶりだ。
ここまで深剃りできると、次に気になるのは剃ったあとの肌の状態だ。かつての電動シェーバーでこのレベルまで剃れば、赤みやヒリつきが出ても不思議ではない。しかし、剃り終えた直後に鏡を見ても、肌が赤くなることはなく、刺激を感じることもなかった。これなら電動シェーバーも良いのでは……!!
その後も数日間、『シリーズ9 Pro+』で同じように深剃りを続けてみたが、かつて電動シェーバーで悩まされていた肌荒れは起こらなかった。連日使っても、剃り負けや違和感が積み重なる感覚はなく、安心して使い続けられる。深剃りと肌へのやさしさは相反しがちだが、本機はそのバランスがかなり高い水準で取れているように感じた。
髭剃りが終わったら、洗浄器に本体をセットし、洗浄モードを選択してボタンを押せば、自動で洗浄が行われる。ヘッドの水洗いだけでも使えないわけではないが、清潔さを保つためにも定期的に使いたいところ。
「深剃り」と「肌への優しさ」は両立できる
『シリーズ9 Pro+』を使って感じたのは、電動シェーバーに対して抱いていた嫌悪感が、10年間のうちになくなっていたということだった。かつて体験した「深剃り=肌荒れ」という構図は、このモデルにはそのまま当てはまらない。しっかり剃れているにもかかわらず、肌に強く負担をかけている感覚がなく、剃り終えたあとの違和感も抑えられている。
一方で、誰にでも無条件に勧められる製品かと言えば、そう単純ではない。フラッグシップモデルということで本体価格は約5〜6万円と比較的高めで、自動洗浄器を使う場合は、専用の洗浄液カートリッジを定期的に交換する必要がある。日々の手入れを大きく省ける反面、初期費用だけでなく維持費まで含めて検討する必要がある点は、導入前に理解しておきたいポイントだ。
それでも、毎朝の髭剃りにかかる時間や心理的な負担が確実に軽くなる感覚は大きい。T字カミソリで手順を気にしながら剃らなくても、身だしなみが整う。その安心感は、使い続けるほどに実感として積み重なっていく。
電動シェーバーから距離を置いていた理由が、「剃れなかったから」ではなく、「肌が持たなかったから」だった人にとって、『シリーズ9 Pro+』は見方を変えるきっかけになる一台かもしれない。
少なくとも筆者にとっては、「この完成度なら、電動に戻ってもいい」と思わせるだけの説得力があった。深剃りと肌への配慮を両立させようとする、現在の電動シェーバーがどこまで進化しているのか。その一端を確かめる良い機会になった。