堀江晶太が有識者と語り尽くす、VR空間と音楽の交差によって生まれる“化学反応”
「ジャズは敷居が高い」という壁を壊すために EMN Recordsが掲げる理念とは
堀江:僕からEmnyeca(アムニェカ)さんに聞いてみたいことがいくつかあるのですが、EMN Recordsってご自身でもおっしゃっていたように、すごく敷居を低くして活動をされている印象がはたから見ていてもあって。
一方でジャズという音楽は、やっていくのに求められる技術だったり知識、あるいは立ち振る舞いがある。そして、だからこそ、品格のあるジャンルであり続ける一面ももちろんあると思うんです。ツールを重んじるからこそ生まれる音楽的な魅力があるというか。
でもEMN Recordsの皆さんは、そういったイメージとはやっぱり離れているし、すごくフレンドリーですよね。そういう「ジャンルが抱える敷居の高さ」と「ウェルカムなコミュニティ」って、食い合わせの悪さがあったりしないのかな、と。改めてEMN Recordsを立ち上げた経緯を詳しく聞いてみたいです。
Emnyeca(アムニェカ):そうですね。まず、ジャズは敷居が高いというイメージはとくに日本だと顕著でして、先ほどお話した私の原体験としても「怖い」「とっつきにくい」というものはあったんです。なので、むしろそこに対するカウンターカルチャーとして、ジャズのイメージを覆したいという気持ちが強いです。
これも先ほど話しましたが、私は音楽をコミュニケーションとして捉えているので、ものすごく高貴なものというよりは、ひとりひとりの技量に関係なく楽しめるようにしたい。それが一番目指しているものですし、自然なことだなと考えています。人と人との繋がりのなかで音楽や作品が出来上がる、VOCALODにおけるpiaproのような親和性が、同時にジャズにも当てはまるな、と気が付いて。
ジャズもリアルタイムで行われる即興で人と人が繋がって、その場限りの素敵な音楽が出来上がる。だから、本来は人と交流するのが好きな人ほど好きになる音楽だという風に考えているんです。
で、ただEMN Recordsの現在の理念と、詳しい立ち上げの経緯はまた別の話がありまして……(笑)。元々EMN Recordsというのは、私がVTuberとして活動するなかで、個人としてリリースしたファーストアルバムを作ったときに生まれたもので、プロジェクトの中で知り合った方を、集めたグループだったんです。
アルバム制作が終わったあとも繋がりが残せるように、Discordのサーバーを立ち上げて、いつでも声掛けとかコラボレーションができる形にしたんです。これがEMN Recordsの始まりですね。
堀江:最初は「必要だから入れておくか」から始まって、そこからコミュニティ化した流れだったんですね。面白い。
Emnyeca:で、そこからのVRセッションをやるようになったのは、VRでの演奏に関する著作権の問題が出てきたときで。2020年ぐらいに、JASRACからバーチャル空間での演奏は「配信にあたる」と公的な見解が出たんですが、これってジャズではかなり重要な出来事で。
というのも、ジャズは非常にカバー演奏が多い音楽ジャンルなので、『VRChat』でジャズをやろうとすると著作権の問題をクリアにする必要があったんです。私はバーチャルでのジャズ文化に可能性を感じていたので、そこで営みを止めてはいけないと個人的に思いまして。「EMN Records」という団体としてJASRACと自腹で契約をして、クリーンに音楽イベントをできるようにしたんです。それで始まったのが「EMNジャム」というセッションイベントですね。
堀江:自腹で、みんなの分も出して、演奏できる場にしたんですね。
Emnyeca:そうですね。なので、必要だから始めた、という部分も大きいんです。
堀江:そういう必然から生まれた文化やものというのは、強いですよね。かつて音楽をやっていて、何かのきっかけでやらなくなってしまったとか、離れていたという人がEMN Recordsの中でやっていることも多いんですか?
Emnyeca:そういう方も結構多いですよ。社会人になって音楽から離れていて、VRChatに出会って「ジャズをやっているらしい」ということをきっかけに入ってくる方は沢山いらっしゃいます。
堀江:『VRChat』って、音楽に限らず演劇とか、そういう人たちが多いですよね。夢をもう一度追っているというか。そういう人たちにとって、『VRChat』の団体はウェルカムなところが多くて、それが印象的ですね。逆に、全然ジャズをやったことはないけれど、音楽を一緒にやれる友だちが増えるんだったら、という形で来る方も?
Emnyeca:そこが少し不思議で、EMN Recordsは外から見るとちゃんとしている団体、というイメージを持たれているらしく、全くの初心者の方はやっぱりあまり入ってこないんです。私は全然ウェルカムなんですが……。
でも逆に、そういう人たちが本当にジャズ未経験の人たちに向けたイベントを開いて「EMNジャム」での演奏を目標に学ぼう、と音楽好きを呼び込んだり、活性化させてくれていたりするので、それはそれですごく嬉しいなと思います。
堀江:意外とEMN Recordsさんって、ジャズだけじゃなくて歌モノのポップスとかもやられるじゃないですか。ジャズだけの団体というわけではないんですよね?
Emnyeca:そう、なぜか誤解されているところなんですよ(笑)。私のアルバム自体、もともとジャズではないですし、自身の音楽性も、ルーツはジャズですがポップスも歌モノも作りますから、EMN Recordsとしては“何でもあり”な団体です。
ただ、ジャズセッションをやっていた流れで「EMNといえばジャズ」というイメージがついたのもありますし、海外のユーザーにとって「ジャズの生演奏がVRで聴ける」というのが衝撃的だったようで……。結果、レインダンス映画祭のイマーシブ部門「Raindance Immersive」で賞をいただいたりもして、そのイメージがさらに強くなるという。
堀江:なるほど(笑)。Emnyecaさん自身がジャズに対する先入観を取り払いたいという感覚で活動されていても、やっぱりジャズという単語を聞くと「おっ、あのジャズか」となる感じは、どこにいってもあるんですね。
Emnyeca:そうですねえ。まさにその通り、取り払いたいんですよ。
堀江:じゃあその権威性みたいなものを一旦置いておいて、EMNジャムに参加してみたい、という人はまずどこに行くといいんでしょうか?
Emnyeca:それでいうと、最近の話なのですがEMN RecordsのDiscordサーバーを完全にオープンにして、誰でも入れるようになったんです。そこでイベントの情報も流しているし、雑談チャンネルも私は必ずチェックしているので、もっと気軽に書き込んでみてほしいなと思います。何でもお答えしますし、バーチャルのミュージシャン、音楽をやりたい方を最大限サポートするのが、今のEMN Recordsがやりたいことなので。本当に怖いところじゃないですよ、というのは強調しておきたいと思います。
堀江:お友達の紹介とかじゃなくても、気になったら気軽に入っていいんですね。
Emnyeca:もちろんです! いつでもお待ちしています。
堀江:じゃあ、もしインタビューを読んで気になる方がいたらいきなり行っちゃっても大丈夫ということで、ぜひ(笑)。
Emnyeca:はい、いきなりで大丈夫です(笑)。





















