ペン先から生み出される“世界”で音楽を奏でる——堀江晶太×クミン100gが語り合う、ライブステージの作り方
少人数で進めるプロ並みの制作――ワンマン「END TO DESTRUCTION」の舞台裏
――次に、「詫びガ」の後に開催されたワンマンライブ「END TO DESTRUCTION」について。「週末の話が始まる」というアナウンスがまさにオデガらしい世界観だなと感じたのですが、コンセプトはどのようなものなのでしょうか?
クミン100g:cazeさん本人の経験や考えをメインに、コンセプトに込めています。そのスタート地点は、「ライブに来た人に、ふと顔を上げるきっかけを与えたい」ですね。
cazeさんはボーカルであり、フロントマンであり、マネージャーであり、プロデューサーのような存在でもあります。この人の内側から生み出されるモチベーションの種に、メンバーが全力で打ち返すスタンスで続いているバンドなので、ライブ制作時も基本的にはcazeさんが「こういうことをやってみたらどうだろうか」というのをみんなに共有しやすいよう、自分の中で噛み砕いて、分かりやすくまとめてプレゼンしてくれるんですよね。
――実際の制作はいつごろからスタートしたのでしょうか?
クミン100g:昨年の8月ごろからなので、制作期間としては2〜3カ月ぐらいですね。
堀江晶太:制作の裏側を聞いたのですが、出だしもDiscordで通話会議している裏で、イラストはラフで描き進めて、大まかな話が終わるころにはイラストがひとつ仕上がっていたそうで、異常なほどのスピード感で進めているようです。
そして、3カ月の間にやっていることもすごい。会場となるワールドは一から作っていて、ストーリーも作って、ストーリーに必要なものも準備して、プロモーション戦略も考えてて、満員になって会場からあふれた人への案内まで考えているんです。音響についても、実際に会場ワールドで鳴らしてみてから、「スピーカーもうちょっと後ろの方がいいね」みたいな微調整まで進めているようなんです。
一つの制作プロダクションが、一つのライブツアーを生み出す時と同様の工程を、このメンバーで取り組んでいるのだから、ものすごいことだと思います。
――堀江さんが出演されるようなリアルで行われるライブを開催する場合、大体どのぐらいの人員が関わって制作されるものなのでしょうか?
堀江晶太:1年以上前から発注連絡はしますし、一社では絶対終わらないので、マネージャーがスケジュールを出して、音楽制作は音楽チームに、音響や照明演出のプロフェッショナルに発注します。リハーサルもたくさん行う必要がありますし、グッズ販売はプロモーターとの連携も必要です。そこに誘導スタッフも入れるから……最終的には3桁以上の人は何かしら関与してきますね。
それを「END TO DESTRUCTION」の場合、メンバーとコアスタッフ4人くらいでこなしているんですよね?
クミン100g:そうですね。ライブ会場はステージと入り口を含めて広大なワールドですが、これを自分と、メンバー外の実装担当の方とで制作しています。それともう一つ、オデガを知ってもらったり、ある演出のために必要なワールドも作っていて、こちらはもう一人の外部の方と協力して制作していました。
そんな様々な制作進行を、cazeさんが一人でマネジメントしていて、自分は監修やフィードバックを常に担当していました。
堀江晶太:プロフェッショナルの現場で、莫大な時間・人数・コストを費やしてやることを、ものすごい密度でやっているんですよね。文化祭でやりきれなかったことを、大人になってもう一度本気でやっている……とも言えそうですね。
面白いと思ったことを無限にやっていく
――バンドとして、今後はどのような展開を予定していますか?
クミン100g:基本的には、面白いと思ったことを無限にやっていくのが、バンド全体の意思としてあります。メンバーが今やってることを面白がって、いいモチベーションが無限に湧き続けているバンドだなと思うので。
堀江晶太:HONNWAKA88さんは、「生身のバンドではやらないことをやるかもしれないし、活動場所をメタバースに限定するつもりもないので、リアルのライブハウスに進出することもある」と言っていましたね。リアルもバーチャルもいっしょくたにして、自在に行き来することで、もっと多くの人に知ってもらうよう動いていけるとよさそうですね。
クミン100g:やれることはVRChatでもリアルでもたくさんありますね。ワールド制作も、アートワークとしては始まったばかりですし、もっといろんな展開ができるようにワールドなどを仕込んでいます。継続して、より面白いコンテンツを生み出して、盛り上げていきたいとは常日頃から思ってます。
堀江晶太: ぜひ一度は、オデガのライブに足を運んでみてほしいですね。特にリアルでもライブに行ったことがあって、バーチャル空間の臨場感ってどれほど残るのかわからない人は、ぜひ。臨場感や表現のワクワク感はVRで体験するのがベストですけど、非VR環境でもしっかりとライブをしていることは感じられるはずです。
――実際、リアルのライブ見慣れてる人の方がびっくりするかもしれないですね。
堀江晶太: それはそうだと思います。私自身がそうでしたから(笑)。
「立体のキャンバス」がもたらす無限の可能性
ーー最後に、クミンさんから、イラストなどを昔やっていた人に向けて、なにかメッセージをいただけますか。
クミン100g:スランプに陥っていたり、なにか落ち込んでいる人がいたら、ぜひ一度はVRChatを訪れて、QvPenで描く作品を浴びていってほしいですね。自分も、描いた作品やワールドを見てくれた方から、「自分も絵を描けるようになりたい」と言っていただけたり、あるいはもう描き始めているって人も現れています。やはり、一度ここに入って、直に味わってみると、大きなきっかけになるはずなんです。
QvPenは、VRChatならばどこにでもあって、誰でも握ることができる鉛筆のようなもので、みんなが親近感を持っているものです。それを手に持って動かせば何かができるし、全力で描き続けたら、こんなものもできる――そんな希望というか、夢中になれば生まれるものを伝えていきたいと考えているので、その入口としてOFFICE DESTRUCTION GIRLのライブに足を運んで、刺激を受けてほしいなって思いますね。
堀江晶太:僕も昔、VRモードでログインした時に、QvPenでお絵描きしたことがあるんですが、そんなに絵はうまくない身でも、立体で奥行きを含めて好きに描くのがめちゃくちゃ面白かったんですよね。思わぬ表現ができることもあるので、上手じゃないけど、なんかいい感じに見えることがよく起こるものです。
2Dのイラストよりも、その感覚が強かったかもしれませんね。紙に描かれるイラストは、たくさん見ているから上手さがすぐにわかります。けれど、「立体のキャンバス」はまだそこまで多くはないので、いまから取り組んでいれば、誰も編み出していない技を生み出す可能性もありそうですよね。
クミン100g:可能性がいっぱい秘められてますからね。いろんな角度から見れるし、角度によって印象も変えられますから。立体なので大きさの制限もないですし、リアルではできないような大きなものも、自分の身体と筆一本あれば描ける。ここでしか味わえない自由度と身近さが詰まった、本当にいいツールだと思います。ぜひ一度は触れてほしいですね。