「AI使用の有無」から「AIの使い方」へ Steamの新方針が示すゲーム業界の転換点

 ゲーム業界においても当たり前に使われるようになってきた生成AI。しかしその倫理的な基準はいまだにあいまいで、さまざまな論争が巻き起こっている。そんななかで大手PCゲーム販売プラットフォーム・Steamがとある方針を打ち出し、話題を呼んでいた。

「開発ツール」と「成果物」で対応を分ける新基準

 これまでSteamはAI技術を使用したゲームの取り扱い方法をめぐって、試行錯誤を行ってきた。当初は販売拒否などの厳しい対応をとっていたが、2024年1月より方針を転換し、「AI技術を使用するゲームの大半がリリース可能」に。ただし開発者にはゲーム提出時に記入するコンテンツアンケートでAIの使用について説明するよう求め、その内容をユーザー向けのストアページにも掲載するという条件を課していた(※)。

 しかしゲームの市場調査などを行うGameDiscoverCoは、Steamのコンテンツアンケートの内容が更新されていることを1月17日にBluesky上で報告。その投稿によると、「AIを搭載した開発ツール」については明示しなくてもよくなったという。その一方、アートワークやサウンドなどプレイヤーが直接触れる範囲で生成AIを使用している場合は明示が必要として線引きされている。

 ここで重視されているのは「AIを使用しているかどうか」ではなく、「AIをどのように使用しているか」という点。生成AIの利用が一般化しつつある現在、AIを全否定するのではなく、明確な基準を打ち出そうとする動きが出てきたことには大きな意味がありそうだ。

CygamesやLarian Studiosでも騒動が発生

 最近のゲーム業界では、生成AIをめぐる混乱が続いている。たとえば1月上旬には、CygamesがAIを活用したサービスやツールの開発などに特化した子会社・Cygames AI Studioの設立を発表したのだが、これに対して同社のゲームに生成AIが使われているのではないかという声が続出。それから数日後、Cygamesが公式声明を出し、既存コンテンツのアートに「画像生成AIのアウトプット」が含まれていないことを釈明するという騒動に至った。

Cygames、AI子会社設立への反響受け声明 「無断で画像生成AIの生成物をコンテンツに使用することはない」

1月14日、X上のCygames公式アカウントより、生成AIに関するメッセージ文が投稿された。  公開されたメッセージ…

 また『バルダーズ・ゲート3』で知られるLarian Studiosは、新作ゲーム『Divinity』においてコンセプトアートの検討にAIツールを使用していることを明かしたところ、ゲームファンから批判が寄せられることに。これはあくまで“ネタ出し”段階のAI使用で、完成品にAIの出力物が含まれるという話ではなかったのだが、激しい論争が巻き起こった。

 これを受けて、同作のディレクターを務めるスウェン・ヴィンケ氏はReddit上のAMA(質疑応答企画)で余計な疑いを避けるため、AIツールの使用を取りやめるというスタンスを示した。こうした騒動を見ると、AIの使用に関する倫理的な懸念が広まっていることがよく分かるだろう。

「AIとの共存」が求められる時代に

 とはいえ、昨今主流のゲームエンジンであるUnreal EngineやUnityにもAIを利用した開発支援ツールが導入されている今、全くAIを活用しないゲーム開発はますます難しくなっていくかもしれない。

 たとえばバンダイナムコエンターテインメントでは、膨大な映像データから必要なシーンを素早く検索するAI技術などが利用されており、デバック作業の効率化などに役立てられているが、これを「AIで作ったゲーム」と言うことはできないだろう。

 喫緊の課題は、どんなふうにAIを利用する場合はOKで、どこからNGになるのかという線引きにあるはず。AIの技術倫理を問い直す出来事の1つとして、Steamの方針転換は注目に値するのではないだろうか。

参照
※ https://store.steampowered.com/news/group/4145017/view/3862463747997849618?l=japanese

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