まるで紙のようなディスプレイ 『TCL NXTPAPER 70 Pro』は文字を読むのが楽しくなるスマホ
米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジーカンファレンス「CES 2026」において、TCLが披露した『NXTPAPER 70 Pro』は、スマートフォンとしてはやや異色のアプローチを取る一台だ。
TCLは、本機を「The Ultimate Eye-Care Phone(究極の眼ケアスマートフォン)」としてアピールしている。
その中核となるのが、同社独自の「NXTPAPER」ディスプレイ。本物のE-Ink(電子ペーパー)ではないものの、E-Inkに近い見え方や使い心地を目指した液晶ディスプレイだ。
E-Inkとは、Kindleなどの電子書籍リーダーに使われている表示方式で、紙に近い見え方が特徴。画面の切り替え速度は速くないが、長時間読んでも目が疲れにくいとされている。
E-Ink風と聞くと、表示が遅く、白黒で、使い道を割り切った端末を想像する人も多いかもしれない。ところが『NXTPAPER 70 Pro』は、120Hz表示に対応し、操作感は一般的なスマートフォンとほとんど変わらない。その一方で、画面の見え方や使い方には、明確に「紙らしさ」を意識した思想が感じられる。
ディスプレイはマット仕上げで、光の反射を抑えて屋外でも見やすさを確保している。最近のスマートフォンが、より明るく、より鮮やかに見えるように進化してきたのに対し、『NXTPAPER 70 Pro』はその流れとは少し距離を置き、派手さよりも、見続けられることを優先した。
この端末の特徴は、そうした「見え方」をひとつに固定していない点にある。用途に応じて画面の性格そのものを切り替えられるよう、複数の表示モードが用意されている。本体側面に配置された専用キーを押すと、標準の「Full Color Mode」のほかに、3つの紙風モードに切り替えることが可能だ。
まず「Full Color Mode」は、一般的なスマートフォンと同じフルカラー表示。動画や写真を楽しみたいときに向いている。
「Color Paper Mode」は、彩度を抑えた柔らかなカラー表示が特徴だ。マットな質感を保ちつつ色も確認できるため、SNSやカラーのコミック、写真の閲覧など、日常的な用途で使いやすい。
「Ink Paper Mode」は、グレースケールのモノクロ表示。色味を抑え、e-Inkに近い落ち着いた見え方になるため、ニュース記事や小説など、文字を読む場面に向いている。
「Max Ink Mode」は、さらに表示を絞り込んだ高コントラストのモノクロ表示だ。通知を最小限に抑え、読むことに集中できる状態をつくる。このモードでは消費電力も大きく抑えられ、読書用途で最大7日間、スタンバイ時で最大26日間の利用が可能とされている。
数字以上に印象的なのは、通知に邪魔されにくい状態を意図的につくっている点だ。スマートフォンで電子書籍やニュースを読んでいても、メッセージやSNSの通知で集中が途切れてしまうことは少なくない。その流れを、物理キーひとつで断ち切れる設計は、この端末の考え方をよく表している。
これら3つのモードは、画質を細かく調整するというより、「読む」「眺める」「集中する」といった用途に合わせて、画面の性格を切り替えるイメージに近い。
搭載するプロセッサはミドルレンジのDimensity 7300で、価格も約4万円前後に抑えられている。最新のハイエンドモデルのような処理性能を売りにする構成ではないが、電子書籍やニュースの閲覧、ブラウジングといった日常的な用途には十分だろう。
『NXTPAPER 70 Pro』は万人向けとは言えないが、スマートフォンで文字を読む時間が増え、目の疲れを意識し始めた人にとっては、これまでになかった選択肢になる。スマートフォンとの付き合い方を見直すきっかけを与える一台だ。