リメイクとは「思い出と戦う勇気を持つこと」 プロデューサーに聞く『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』の裏側
2026年2月12日にNintendo Switch 2、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、PC(Steam)にて発売予定の『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』。「変わる伝説、新たな歴史」というコンセプトのもと、2009年にリリースされた『龍が如く3』をリメイクした『龍が如く 極3』と、完全オリジナルストーリーで描かれる新作『龍が如く3外伝 Dark Ties』の2作品を1本に収録したタイトルで、桐生一馬と峯義孝という2人の男の熱いドラマを描いた作品だ。
今回は同作でプロデューサーとディレクターの両方を担当する堀井亮佑氏にインタビュー。「リメイクの常識を超える」と宣言した同作を作った背景について、じっくりと話を聞いた。
『龍が如く3』制作の背景
――『龍が如く3』をリメイクする上で考えたことと、実際に完成した手応えを教えてください。
堀井:今もオリジナルの『龍が如く3』が普通に遊べる時代なので、同じものを作っても意味がないと考えました。今回は「新しく作り直す」つもりで取り組んでいます。結果として、リメイクという言葉がもったいないくらいフレッシュなものになりましたし、手応えにはとても満足しています。
――新録ボイスが印象的でした。どういった狙いがあったのでしょうか。
堀井:桐生のセリフを録り直した部分については、黒田崇矢さん(主人公・桐生一馬役)と相談しながら決めました。柏木修などはシリーズが続くにつれてキャラクターの位置づけ自体が変わってきていますし、よりエモーショナルな表現が必要だと感じました。
実は新規で追加した要素のほうがはるかに多いんです。メインストーリーも、オリジナルはスピーディーでしたが、『極3』では説明を増やしています。島袋力也との関係性も、あえてじっくり描き直しました。追加した要素によって物語の流れも変わるので、そのあたりは全体を見ながら再構築しています。
――キャスティング変更の意図について教えてください。
堀井:力也や浜崎豪は特に登場機会が多いキャラクターです。オリジナルと同じ役者さん、同じ演技だと体験として変化が出にくいですよね。「同じシーンでも、この人ならどう演じるんだろう?」というワクワク感を出したかったんです。
当然、批判が出ることも折り込み済みですが、それでも新しいものを作りたかった。あとは、純粋に「この俳優さんがこのキャラクターを演じるところを見てみたい」という気持ちもありました。
――特に印象に残った演技は?
堀井:香川さんのいやらしい~感じの演技(笑)。さすがだなと思いました。力也も、笠松将さんの演技によって子分っぽさだけでなく、くすぶっている若者としてのリアリティが強くなったと感じています。
――『龍が如く』シリーズは時代性も強い作品です。今、2009年を描く難しさはありましたか。
堀井:当時の感覚を取り戻すために、雑誌を大量に買いました。若槻千夏さんが表紙のものとかですね。資料集めも本当に大変でしたよ。ネットで「平成レトロ」と検索しても、西野カナさんが出てくるので、これは違うかなあ……と。
あと、ガラケー文化も特に重要ですよね。赤外線通信とか、待ち受けを特定の画像にするとヒートが上がるとか、そういう細かいところで時代感を出しています。
――一方で、現代的な工夫もありますよね。
堀井:ゲームデザインをわざわざ古くすることはしませんでした。オリジナルの『龍が如く3』はバトルがかなり難しかったので、今回は最新のアクションゲームとして、今のトレンドに合わせて気持ちよく遊べるようにしています。
――8種類の武器を駆使する新たなバトルスタイル「琉球スタイル」についてはいかがですか。
堀井:これもかなり悩みました。最初は装備品にしたんですが、あまりに付け替えが面倒臭くて(笑)。最終的には、連打で8種類の武器が出る形にしました。アクションとして切り替えがゴチャゴチャしないようにしつつ、それぞれの個性を出すことを意識しています。
――『3外伝』では、様々な意味でプレイヤーにインパクトを残した神田の掘り下げが印象的です。
堀井:峯が主人公で、神田強はヒロインです(笑)。それはもういっぱい出てきますよ。彼は基本的にクズなキャラクターで、どんなに掘り下げてもクズはクズなんです。ただ、神田に対して峯がどう刺激を受けるのかを見てほしい。もしかしたら神田のファンが増えるかもしれませんね。
――峯義孝とはどんな人物なのでしょうか。
堀井:コンプレックスの塊ですね。イケメンでお金も持っていますが、それが薄っぺらいものだと理解している。いざというとき、誰も助けてくれないという無力感を抱えながら、それでも人を信じたい。そんなキャラクターなんです。
桐生や春日(※『龍が如く7 光と闇の行方』から登場した主人公格のキャラクター・春日一番)は人を助けて説教もしますが、峯はヤクザなのでそんなことはしない。ただ、それでも見過ごせないものがある。彼なりの優しさは確かに存在します。
――桐生が沖縄で営む児童養護施設・アサガオでの日常が楽しめる「アサガオライフ」や、沖縄の弱小レディースチーム・ハイサイガールズと共闘するチームバトル「ツッパリの龍」を入れた理由は?
堀井:「アサガオライフ」は最初から企画書にありました。『3』は、桐生が一番“家族”を持っていた時代だと思っています。なので、父親としての桐生を描きたかった。このあとどんどん孤独になっていきますからね……。私も子どもがいるんですが、親というのは、特別なイベントで良いことを言うだけじゃなくて、毎日の積み重ねなんですよね。なので僕が苦手な家事を中心に桐生にはやってもらいました(笑)。
「ツッパリの龍」は、正直ノリです(笑)。チームバトルを入れたかったですし、2009年という時代に合わせて、ダサいけどカッコいい感じを出したかった。僕もヤンキーものが好きなので。
――裁縫のミニゲームは、セガの名作レースゲーム『アウトラン』がモチーフだとか。
堀井:あれは難産でした。裁縫をどうゲームにするか悩んでいて、若手にアイデアを出してもらったんですが、正直ピンと来なくて(笑)。考えているうちに「ミシンって、針に対して布が動くよな」と気づいたんです。これ『アウトラン』じゃんって。
昔のレースゲームは、車に対して地面が動くじゃないですか。そこを若手に説明して作ってもらいました。あの思い付きは自分でも「天才だな……」って思いましたね(笑)。それと、桐生の真剣な顔も必ず入れてほしい、とも伝えました。姿勢はおかしいんですけど、あの顔が大事なんです。
――リメイクで一番大変だったことは?
堀井:過去作をどこまで引きずるか、その判断です。思い出は美化されるものでして、やっぱり『龍が如く3』を今やり直すと粗もあります。でも、変えないでほしいと思う人がいるのもわかります。ただ、そこを恐れてはいけない。全部同じにするのは楽で安全ですが、それでは作る意味がない。思い出と戦う勇気が必要でした。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
堀井:今回は新作のつもりで作りました。とにかくフレッシュです。リメイクの常識を超えるくらい、挑戦的な作品になったと思っています。『3外伝』も、いつもとは違う主人公で、違った感情や解決の仕方を描きました。どちらも自信作です。20年間続けてきたシリーズの記念作でもあります。感謝の気持ちを込めて作りましたので、ぜひ楽しんでください。
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