リリー・フランキーも注目する羽永の価値観 留学の“気まずさ”を伝えるYouTubeチャンネル「はなのにちようび」人気の背景

2024年10月のこと。Xで、一般ユーザがポストした「最高すぎるチャンネル見つけて嬉しい」という呟きと、1枚のスクリーンショットが大きなバズを起こした。具体的には、いいね数が約22万で、リポスト数が8,000強。これは2025年12月末時点での数値だが、当時からそう乖離はないと記憶している。件のスクリーンショットを見ると、YouTubeに投稿されているだろう、動画2本のサムネイルが並んでいた。
どちらのサムネイルにも、女子大生らしき人物のなんともいえぬ真顔が写っていたほか、うち1本には「ホストファミリーとの気まずい朝食Vlog」という、これまた絶妙なタイトルが付けられている。これが件の人物、羽永の人生を180度変える発端の出来事だった。
宮城・仙台市出身。2003年10月5日生まれの22歳、羽永。イギリス・ロンドンを拠点にフォトグラファーとして活動する傍ら、YouTubeチャンネル「はなのにちようび」にて、現地での生活を切り取ったVlogを投稿。11月11日には、自身初のエッセイ『Happy Accidents ロンドンで見つけたときめく人生のヒント』を発売し、すでに重版もなされるベストセラーとなっている。
お花畑に雷を落としたような子、現実だけどちょっと夢ーー。不思議なオーラを纏う彼女はいま、なにを考えているのか。リアルサウンドテックでは今回、ロンドンの羽永にリモートでインタビューを行い、自身の価値観や感性などについて、たっぷりと語ってもらった。時間の関係上、取材終盤に本人に伝えきれなかった言葉があるため、ここに書き残しておきたい。“上手くいかなかった”という気持ちの化石が、数年後にはガソリンになるので、これからも一緒に頑張っていきましょう。(一条皓太)
バレてしまったYouTube〜気まずい会話を繰り広げたホストファーザーとの後日

ーーまずは大前提となりますが、ロンドンを留学先に選んだ理由から聞かせてください。
羽永:ロンドンには、幼い頃から縁があるんですよね。父がブリティッシュイングリッシュに関わる仕事をしているので、「子どもたちにも英語に触れてほしい」というこだわりから、小学生の頃に2回、夏休みの間にこの街に連れてきてもらっていて。なので、留学するとしたらロンドン以外は思い浮かばなかったです。
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ーー今回の留学は、いつ頃にスタートしたのでしょう。
羽永:2024年4月です。もう1年半になりますね。ワーキングホリデービザの期限が2年間なので、滞在できるのもあと半年ちょっとです。
ーー「はなのにちようび」がXで一気にバズったのが、2024年10月のこと。つまり、留学開始から約半年が経った時期だったと。
羽永:そうですね。正直、一気に拡散される様子が見ていてすごく怖かったのと、私自身はもともと動画を投稿しているとバレたくなくて(笑)。あの当時も、チャンネルの存在は友だち3人程度にしか教えていなかったし、洋服や写真のことをアップしていたInstagramでは絶対に紹介しないでおこう、と決めていたくらい。なので、フォロワーさんたちには「えっ、この人めっちゃ喋るじゃん……」と思われてしまい。本当、人生が180度変わる瞬間でした。
ーーしかも、チャンネルに辿り着いた先でおそらく目にするのが、初投稿作品「ホストマザーに追い出されました。イギリス留学」。ホームステイ先のおうちでパンツを落とした犯人だと決めつけられる話でした。
羽永:アカウントがバレるうえに、そこでしているのがパンツの話というのがますます嫌ですよね(笑)。メインは私の退去エピソードなはずなのに、SNSではパンツの部分だけがすごく切り取られて、「人生が終わるかも……」ってレベルには恥ずかしかったです。
ーーこれから先ずっと、“パンツの人”として後ろ指をさされ続けるという。
羽永:そう! 「下品っ!」とか思われそうだし、とにかく焦るしかなかった。
ーーXの投稿から最も流入があったのが「ホストファミリーとの気まずい朝食Vlog」。転居先でのおじいさんとの会話、続かなかったですね。件のバズ以降、こちらのホストファミリーと連絡を取ったりは?
羽永:してはいないんですけど……あのおうちに後々、ファンの方が偶然ホームステイされたそうなんです。こちらとしては、あのおじいちゃんともそこまで仲よくお別れをしたわけではなかったので、「バズったことを知って、イギリスから怒りの通報をされたらどうしよう……」って、ずっと怯えていました。私、考える方向がいつもネガティブなんですよ。
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ーー実際に動画内でも、カメラを向けたおじいさんから「クライスト・チャーチの方に写真映えする建物がある(=カメラを回すなら他所でやれ)」というブリティッシュど真んなかな皮肉を返されたくらいですし、無理もないかと。
羽永:えっ、そんなこと言われてたんですか……。
ーー知らぬが仏、でしたか……。
羽永:いまさら気まずくなっています。というより、過去の動画は見返さないようにしていて。恥ずかしくて見ていられないんですよ。著作権の関係でBGMが消されたせいでガビガビな音声が際立っているし、みんなは気づかないかもしれないけど、いまは編集の仕方やこだわりも変わっているので。
ーーちなみに、こだわっているポイントとは?
羽永:変わった部分でいうと、最近は声をハツラツとさせる意識をしています。変わらないのは、“間(ま)”ですね。今回のエッセイにも書いた通り、私は会話の間がとにかく怖くて。昔は友だちと遊ぶときも事前に台本を書いていたほど、ちょっとした沈黙にも耐えられない性格でした。それが現在のYouTubeにも少なからず引き継がれているせいで「観ている人を一瞬でも飽きさせちゃいけないんだ」って考えちゃうんです。なので、私の動画はわりかしテンポが速めです。
ロンドンに取り残されている感覚〜リリー・フランキーから向けられたジェラシー

ーー個人的に大好きなのが「ロンドン、森、友達、牛に潰されてそうになるVlog」。動画内では、ハイキングで歩き疲れた友人たちが道端で険悪なムードになり、一時は“徒競走の距離感”を保ってバラバラに歩き始めるという。
羽永:ありましたね〜。
ーー私自身も羽永さんと同じ年齢だった頃に留学経験があるのですが、留学の醍醐味って、異文化で育った人間同士が集まって、お互いに歩み寄れない特有の“気まずさ”を肌で感じることにしかないと思っていて。
羽永:マジでそう思います。当時の留学、楽しかったですか?
ーーもうまったく(笑)。
羽永:ですよね!? 最近になって、私も「留学って楽しいもんじゃないな」って考えられるようになりました。そう言ってくれる人が本当にいないんですよ。「留学は絶対に楽しいし、楽しくあるべきもの」「なにか大きなものを掴むべきだし、なにも成し遂げられないのは恥ずかしい」なんて価値観が、世の中的にはやっぱり大半を占めているので。
ーーそこにも“答え”はあるのかもしれませんが、我々は“人と人は違う”と気づくことに本当の学びがあると考えている側ですよね。実際、あのハイキング中もそんなことを考えていたり?
羽永:あのときは正直、安心感に包まれていました。動画を観て察したかもしれないですけど、ハイキング中の私は1日のなかで3回くらいしか言葉を発してなかったんですよね。
ーーたしかに。
羽永:英語が苦手な私と違って、一緒にいた子たちは全員がネイティブで早口。だけど、私のことは気遣ってくれる。そんな状況にただ孤独を感じていたんです。なので、あの動画でテーマにしたのは、私の鬱な気持ちでした。いまもそう。私だけ常に、ロンドンの街で取り残されている気がします。
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ーーそうした留学でしか味わえない感情が伝わってくるから「はなのにちようび」が大好きなんですよね。いまでこそ、留学の失敗談を語るYouTubeチャンネルも増えてきたなかで、羽永さんの場合はそこでの“気まずさ”を装飾せずに切り取ってくれていて。これは意図していないところかもしれませんが、お子さんが留学を控える親世代が観ると、現地での生活をイメージしやすいのかなとも思います。
羽永:言われてみれば、そんな楽しみ方もできるかも。それこそ、私のチャンネルのメイン視聴者層は、25〜34歳、45〜54歳の順に多くて、逆に同世代の10代が意外と少ないんです。エッセイにも書いたように、ロンドンに来てから直感で動く好奇心旺盛な人間になってしまったせいで、危なっかしい子どもを見守るような感覚で、みなさん動画を楽しんでくださっているそうです。
ーーすごく想像がつきます。
羽永:ちょうど先日、ラジオ番組『リリー・フランキー「スナック ラジオ」』(TOKYO FMほか)に出させていただいた際、リリーさんから「僕もこういうことをしたかった」「僕の期待を羽永ちゃんに託してる」って、ジェラシーの目で見つめていただくことがあって。とてもうれしかったのを覚えています。
ーー30歳の私から見ても、羽永さんの人生はすでに羨ましいものだらけですよ。ちなみに動画内では明かされていませんでしたが、ハイキングの末に逃しかけていた終電には間に合ったのでしょうか?
羽永:あっ、たしかに私、言ってなかったか。終電、無事に乗れてみんなでロンドンに帰れてました(笑)!


















