映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』はさらなる“銀河”の存在とそれらを繋ぐ作品になるのか

『スーパーマリオギャラクシー』どんな作品

 2026年4月の上映が発表された『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』。2023年上映の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の続編に当たる本作は、『スーパーマリオギャラクシー』をモチーフとした内容になると発表されている。

【日本語版】 『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』 オフィシャルトレーラー

 『スーパーマリオギャラクシー』は、2007年にWii向けに発売された3Dマリオの1作だ。2025年10月4日には、Nintendo Switch向けに続編『スーパーマリオギャラクシー2』も含むHDリマスター版が発売されたのが記憶に新しい。

 『スーパーマリオギャラクシー』最大の特徴と言えば、球体地形を舞台にした“ヘンテコ”重力アクションだろう。小さな惑星の表面を走り、裏側へと周り込み、時には星から星へとジャンプで飛び移る。場所ごとに重力の概念が変わり、上下左右の感覚が入れ替わる宇宙空間特有の爽快感と躍動感に満ちた作りは、第1作の発売から18年以上が経過した現在もなお輝きを放ち続けている。

 そんな『スーパーマリオギャラクシー』が映画版続編の題材に選ばれると発表された際、不思議に感じた人も少なくないかもしれない。やや映画版前作のネタバレになることをご容赦願いたいが、「『スーパーマリオワールド』が続編の題材になるのでは?」と推測されたカットと演出があったためだ。

 ただ前作に登場し、意味深な発言を残した星の子「ルマリー」の存在を思えば、『スーパーマリオギャラクシー』も有力候補だった。

 そして何より、『スーパーマリオギャラクシー』には映画の題材に選ばれることで真価を発揮する、深い世界観とストーリー性が秘められているのだ。

“いつものマリオ”なストーリーに深みを加える要素をプラスした『スーパーマリオギャラクシー』の挑戦

 『スーパーマリオギャラクシー』は、アクションゲームのマリオ作品の中では異例の奥行きある世界観とストーリー性を持つ。

 ただし、大筋自体は“いつものマリオ”。「宿敵のクッパにより、銀河の彼方へとさらわれてしまったピーチ姫の救出に挑む」内容となっている。

 しかし、『スーパーマリオギャラクシー』が過去作のみならず、後発作とも大きく異なるのがバックストーリーの密度が濃いことだ。

 『スーパーマリオギャラクシー』にて初登場し、映画版続編での登場も明言されている謎の女性「ロゼッタ」と星の子「チコ」にまつわるエピソードが本筋とは別に用意され、“いつものマリオ”なストーリーに深みを加えている。

 このエピソードは、拠点フィールド「ほうき星の天文台」の「書斎」にある「絵本」を通して読む(聞く)ことができる。絵本は複数の章から成り立っており、本編で「パワースター」が集まるにつれ、新たな章が読めるようになっていく仕組みだ。

 そこで語られるのは、ロゼッタと思しき少女とチコの過去である。一見すると母と子の温かな物語に見えるが、その本質は「喪失」と「再生」というテーマを扱った、マリオ作品としては異質な内容だ。特に後半の章では、マリオ作品全体の世界観(構造?)にも踏み込みつつ、ショッキングな真実も明かされるものになっている。

 詳細は「現在販売中のリマスター版でお楽しみを!」とのことで割愛するが、こうしたバックストーリーの存在もあって、『スーパーマリオギャラクシー』では従来のマリオ作品にも増して厚みのある世界観が確立されている。

 そのことはクッパを倒した後に迎える(文字通り)度肝を抜くエンディングにも現れており、『スーパーマリオギャラクシー』の世界はひとつではない、“さらなる銀河”の存在を示唆する印象的なものとなっているのだ。

さらなる銀河の存在を示唆する続編は、後年のリマスター版でその設定が補強された……?

 実際にさらなる銀河の存在を示唆する作品として、続編『スーパーマリオギャラクシー 2』がある。ナンバリングこそ冠されているものの、そのストーリーは前作と何ら繋がりがない。それどころか、大筋もクッパにさらわれたピーチ姫を救出する同じ内容である。

 ただし、マリオが宇宙へと出るまでのいきさつ、コミカルに描かれるクッパなど、その作風は前作と異なる。そもそも、冒険を手助けしてくれたロゼッタがいない。

 実際は“ある場面”で登場するのだが、前作よりもマリオとの絡みは控えめだ。しかし、その台詞には続編の世界が前作のエンディングで示唆された別の“銀河”であるのを匂わすものがあり、実は見えない所で繋がっている可能性を微かに提示し、プレイヤーに考察の余地を残していたのである。

 どちらかと言うと、続編は3Dアクションとしての面白さと発展に振り切っていて、前作よりもストーリー性は薄くされている。それでも微かな繋がりを感じさせる要素がある点では、過去のナンバリングを冠したアクションのマリオ作品とはひと味異なり、独特の価値を持っている。

 そして、この微かな繋がりについては、2025年発売のHDリマスター版にて大きな補強が行われた。リマスター版には、オリジナル版には存在しなかった全4章構成の新たな「絵本」のストーリーが追加されており、前作『スーパーマリオギャラクシー』、果ては映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』との関連までもが示唆されているのだ。

▲この色のチコ、どこかで見た覚えが……?!

 特に映画との関連が示唆されているのは注目に値する部分で、これを確かめれば、2026年4月上映の映画がいかなる"銀河"を描くのか、その期待が一層高まるだろう。

 なお、リマスター版と時を同じくして、前作『スーパーマリオギャラクシー』の絵本をそのまま実物にした「ロゼッタの絵本」が発売されている。

 残念ながらこの「ロゼッタの絵本」には、リマスター版で追加された4章の新ストーリーは含まれていない。だが、『スーパーマリオギャラクシー』の興味深い世界観を知る入口の作品としては最適なので、ゲームをプレイする時間がない人や、その部分だけを優先して味わいたいという人にはオススメである。

 それを経てゲーム本編に進めば、より情感あふれる体験が味わえるはずだ。

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