Veo 3やSora 2を凌ぐ動画生成AI「Runway Gen-4.5」登場 著名メディア・エンタメ企業がパートナー参画、制作はどう変わる?

 2025年はGoogle「Veo 3」やOpenAI「Sora 2」といった既存モデルの最新版が発表されるなど動画生成AIの性能競争が激しさを増している。そんななか、米AIスタートアップ・Runwayが12月1日に最新モデルとなる「Runway Gen-4.5」を発表。業界標準のベンチマーク「Artificial Analysis Text to Video」で首位を獲得し、注目を集めている。

 Gen-4.5は、前モデルのGen-4と同等の速度、効率、価格を維持しながら、複雑なマルチ要素シーン、精密な配置と流動的な動き、現実的な物理演算、表情豊かなキャラクター表現など、従来モデルを大きく上回る性能を実現したモデル。

 開発にはNVIDIAのGPUを全面的に採用し、同社と緊密に協力しながら学習効率から推論速度まで、動画拡散モデル(動画を生成するAI技術)の最適化を推進。推論処理にはNVIDIA HopperおよびBlackwellシリーズのGPUが使用されており、品質を損なうことなく最適化されたパフォーマンスを実現する。

物理的正確性が大幅向上、ただし因果関係の推論など課題も

 Gen-4.5の特徴は、卓越した物理的正確性と視覚的精度だ。これにより物体の重みや勢い、液体の流れといった物理的な挙動がより自然になったほか、髪の毛一本一本や素材の織り目といった微細なディテールも、動きや時間の経過を通じて一貫性を保ちながら表現できる。また、実写調の映像からアニメ調の映像まで幅広い表現に対応し、日常的なシーンから映画的な演出まで、多様な用途に活用できる。

 ただし、Runwayのプレスリリースによると、前モデルから大幅に性能が向上したGen-4.5にも「ドアの取っ手を押す前にドアが開いてしまう」といった因果関係の推論のほか、オブジェクトの永続性(例:カップが物陰に隠れると消えてしまう)、成功バイアス(例:狙いが定まっていないシュートでもゴールが決まる)といった課題が残る。そのため、同社は解決に向けた研究を進めていることも公式サイトで報告している。

Introducing Gen-4.5 | Runway

制作現場での活用の可能性が広がる一方で人間との役割分担の問題も

 現在、Gen-4.5は一部のユーザーを対象に段階的に提供が始まっており、早期アクセスパートナーには英公共メディア・BBC、仏ゲーム大手Ubisoft、米小売大手・Targetなどが名を連ねる。12月1日時点では、今後数日以内に全ユーザーが利用できるようになると発表している。

 著名メディア/エンターテインメント企業が早期パートナーとして参画していることは、プロの制作現場での動画生成AI活用機会が今後増加していくことを示唆している。こうした制作現場においては、動画生成AIを活用することで映画やゲームの制作コスト削減や効率化が期待される。例えば、背景生成では、天候に左右されずに撮影でき、道路封鎖などの煩雑な手続きが不要になるといったメリットが考えられる。また、アイデア段階のビジュアル化やコンセプトアート動画の生成などにも活用できる可能性があると指摘する識者も少なくない。

 一方で、実在の俳優をAIに置き換えることには、ハリウッドの俳優組合などから強い反発も出ている。Gen-4.5のような動画生成AIのクオリティが実用レベルに近づいてきたことで、AI技術をどこまで活用するのか、人間のクリエイターの役割をどう位置付けるのか、映像制作業界全体での議論が加速しそうだ。

参考:https://runwayml.com/research/introducing-runway-gen-4.5

ChatGPT、Claude、Gemini最新モデルの特徴を整理する “自分に合った”生成AIサービスの選び方

Gemini 3 Proの登場で大きく揺れた生成AI業界。ChatGPT・Claude・Geminiの最新動向と、それぞれの強み…

関連記事