スマホを持っていても「調べない人」の特徴とは 検索離れが進む現代人の心理を専門家が解説
多くの人がネットを使いこなせるようになった今でも、自分で情報を調べない、あるいは“調べられない人”を一定数見かける。そういった人々を単に“ネットに疎い人”でくくってしまうことは簡単だが、実際にはSNSをはじめネットのサービスを頻繁に利用している人も例外ではなく、得手不得手の問題だけではなく、傾向のようなものがあるのだろうか。
そして、そういった人のなかには、何か疑問やわからないことがあったときに「SNSで質問をする人」もいる。もちろん、専門知識を要する質問などはSNSで有識者に聞くのがよいこともあるだろう。一方でそういった人たちに対して「(検索エンジンで)調べればすぐにわかるのに」という見方をする人もいる。
今回は、こうした情報の「検索」や「取捨選択」に関する人それぞれの向き合い方について、識者に話を聞くことに。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授で、『スマホを持たせる前に親子で読む本: 子育て中のネットメディア研究者が教える』(時事通信出版局)の著者・山口真一氏に、SNSはするけれど検索はしない人の特徴や、誤情報に振り回されないためのコツなど、話を聞いた。(望月悠木)
“検索をしない人”の2つのパターン
――検索をしない人とはどういう人なのですか?
山口真一氏(以下、山口):大きく2つのパターンに分けられると思います。1つ目は“自分で調べる”という発想や習慣が乏しいパターンです。すぐに誰かに質問したり、SNSのタイムラインに流れてくる情報を漠然と追うだけになっていたりなど、情報検索の主導権を持っていません。
――なるほど。もう1つのパターンはいかがでしょうか。
山口:もう一方は“検索しない”というよりは、検索がうまくできない人です。例えば、自分の身体に何かしらの異変が起きて、解決策を知りたいと思って検索した場合、その異変を検索ワードにただ打ち込んでも適切な情報は見つかりにくい。
自身の異変を正確に言語化し、なおかつスペースで区切りながら「病院」と入力するなどして、検索ワードを組み合わせなければほしい情報にはたどり着けません。
――検索するのにもスキルが必要なのですね。
山口:はい。検索リテラシーが求められるのですが、それが十分ではないと適切な情報収集はできません。その結果、ネットは使えるものの、誰かに情報を教えてもらおうとするのではないかと。とはいえ、統計を取っているわけではないためハッキリとしたことは言えませんが、「ネットを使えるけれど検索をしない」という人は前者に多い傾向のような気もします。
受動的に情報を得られる時代ゆえに「検索が習慣化しにくい」
――“自分で調べる”という発想や習慣が乏しい人の特徴は?
山口:高齢者はネット文化に馴染みのない人が他の世代よりも多いため、検索しない傾向が強いとは思います。ただ、年齢や性別といった明確な属性があるわけではなく、個々人の性格によるのではないでしょうか。
――具体的にはどういった人になりますか?
山口:他者に時間を使わせることを気にする人は、「まずは自分で調べてみよう」となりやすい。言い換えれば、そこに頓着しない人が該当しそうです。また、「人に聞くほうが面倒」という人もいます。“面倒くさがり屋=人にすぐ聞く”と連想されそうですが、一概には言えないと思います。
――検索する人と検索しない人の明確な違いを見出すことは難しいと。
山口:そうですね。ただ、SNSや動画サービスは受動的に情報を得られる空間ですので、何か気になる情報に触れたとしても、そこから自分で検索して深掘りするというのは明確な意思が必要になります。そのため、SNSや動画サービスが一般化した現在、ネット検索が習慣化しにくい環境にはなっているのかもしれません。さらにいえば、そういった昔から存在していた「検索をしない人(情報を調べない人)」というのがSNSなどを通じて「見える化した」ということもあるのかなと。
『ChatGPT』が検索にもたらした影響
――一般的に“ネット検索”は検索エンジンを使って行うものでしたが、最近は『ChatGPT』をはじめとした生成AIで調べ物をケースも増えました。生成AIが検索にもたらした影響は?
山口:先ほど検索リテラシーについて触れましたが、生成AIが普及したことにより、検索に対するハードルは大きく下がりました。例として挙げた、身体の異変を検索エンジンで調べる場合、適切なワードを入れなければいけない。しかし、生成AIは思ったことをそのまま入力すれば、もしくは人に聞くように音声入力すれば、ほしい情報を提示してくれます。
――確かに取り留めのない質問でも、内容を汲み取って回答してくれますね。
山口:ただ、「わからないことがあった時に生成AIに質問する」という発想が必要なため、ある程度はITに関するリテラシーが求められます。
――生成AIで情報を検索する際に気を付けるべきポイントは?
山口:検索エンジンでも同様ですが、正解が100%出てくるわけではないことは留意すべきです。AIが間違った情報を生成してしまう現象=“ハルシネーション”は決して珍しくありません。実際、生成AIに質問すると、参考文献を引用しながら回答したものの、その参考文献が架空のものだったということもあります。
――情報ソースが本当に存在するのかを検索する必要性がありますね。
山口:はい。検索リテラシーの重要度は下がりましたが、代わりにAIリテラシーを身に付ける必要性が高まりました。そういった意味でも、やはりリテラシーが一定程度必要であることには変わりません。
――生成AIが確からしいことを教えてくれても、鵜呑みにせず、やはり主体的に調べなければならないと。
山口:もちろんです。最近はXのGrok機能を使い、「Grokではこう言っているぞ!」「Grokが言っているのだから間違いない!」と反論して、自身の主張に疑いを持たない人も少なくありません。ただ、申し上げたようにハルシネーションがあるため、AIの意見に疑いを持たないことは危険です。あくまで良きパートナーとして、「AIと協働するんだ」という意識を持つと良いのかなと思います。
――AIに振り回されないようにはしたいですね。
山口:とはいえ、人に聞いても誤情報を教えられることもあり、なにより手間がかかります。何気ない疑問は、人ではなく生成AIに聞くのが普通になっていく可能性もあり、「何かを誰かに質問している」という光景は減っていくのかもしれません。