『ARC Raiders』『ELDEN RING』など高難易度ゲームが次々ヒット “タイパの時代”にユーザーが求めるものとは
昨今の世の中では「タイパが重視されている」などと言われがちだが、ゲーム業界はそれに逆行しているのかもしれない。スキマ時間で気軽に楽しさや達成感、爽快感が味わえるタイトルだけでなく、高難易度のゲームが次々とヒットする流れが続いているからだ。
直近で代表的な例と言えるのは、5月30日にリリースされたフロム・ソフトウェアの『ELDEN RING NIGHTREIGN』。同作は“死にゲー”として名高い『ELDEN RING』を下敷きとしたアクションゲームで、そもそも全体的に難しめに作られているのが特徴だが、そのなかでも「深き夜」というチャレンジモードはかなりハードな設定だ。何度も挑戦してボスを撃破するごとにレートが上がり、レートに応じて“深度”もより深くなり、さらに難しくなるというゲームモードとなっている。
12月1日にBandai Namco Europeが公式サイトで発表したユーザーデータによると、「深き夜」の最高深度である“深度5”に到達したプレイヤーは、いまだ3%しかいないという。(※)
「深き夜」がゲームに実装されたのは今年の9月11日。攻略情報がすぐにSNSなどで共有される昨今において、PvE型のゲームで到達者が3%というのは、いかに高難易度モードとはいえ驚きの数字に見える。ともすれば「時代に逆行している」とも言われそうだが、実際にはそんな歯ごたえのあるゲーム体験こそが、多くのユーザーの心を掴んでいるのではないだろうか。あるいはゲーム実況などでストーリーを簡単に追えるようになった現代では、“自分で苦労してやり込む”ということの価値が相対的に上がっているのかもしれない。
これを「プレイ時間が長く高ストレスなゲーム」として括るなら、他にも同様のゲームがいくつもある。とくに最近の流行として挙げられるのは、PvPvEというスタイルを採用したゲームだ。プレイヤー同士が戦うPvPでも、プレイヤーとCPUが戦うPvEでもなく、その両方と戦うタイプのゲームとなっている。
ゲーム内キャラと戦いながら、つねに他のプレイヤーから背中を撃たれる脅威に警戒しなくてはならないこのジャンルは、自然とゲームとしての難易度が高くなりがち。代表的なのは『Escape from Tarkov』(以下、タルコフ)で、初心者には決してやさしくない作りでありながら、この手のジャンルの金字塔となった。
同作は2017年からクローズドβ版が公開されていたが、今年11月15日に製品版が登場。だが最初に“エンディング”に到達したプレイヤーが現れたのは、それから半月も経った後だった。
そして今年は他にも、“タルコフライク”なゲームがいくつか発売されている。たとえば『タルコフ』のプレイヤーをアヒルにした『エスケープ フロム ダッコフ』は、ストリーマーのあいだで流行ったことも手伝って、インディーズゲームとしては異例とも言える人気を博した。
さらに『タルコフ』のPvEの側面をより強化したような『ARC Raiders』は、Steamで48万人超という驚異的な同時接続プレイヤー数を記録。ゲーム流行語大賞があれば同作のゲーム内エモートである「ドンシュー!」(Don't shoot、攻撃しないで!)は確実にノミネートされると言えるほど、今一番熱いゲームと言えるだろう。
そのほかPvPvE型のゲーム以外では、今年10月にリリースされた『カオスゼロナイトメア』のヒットが印象的。プレイヤーがストレスに厳しいとされているソーシャルゲームでありながら、そんな風潮に逆行するように、戦闘バランスがそこそこシビアに作られている。
実はそこまでストレスに弱くなく、むしろ艱難辛苦を望んでいる節がある現代のゲーマーたち。「現代人は時間がなくストレスに弱い」とは幻想だったのだろうか。人気ストリーマーなどによる配信文化との相性も良いため、高難易度ゲームのブームはまだまだ続きそうだ。
参照
※ https://en.bandainamcoent.eu/elden-ring/news/more-numbers-the-night-the-latest-stats-elden-ring-nightreign