使い勝手は極めて良好 ハイエンドマウス『MX Master 4』は多機能モデルの完成形か

 初代『MX Master』が2015年に登場して以来、ロジクールの「MX Master」シリーズは、ビジネスワーカーやクリエイティブワーカーを支えるマウスとして君臨してきた。

 価格帯は初代から1万円オーバー。マウスを単なるポインティングデバイスと考えれば明らかに高価だ。だがMX Masterシリーズは、良質なインターフェースを求めるユーザーの心を確実に掴み、市場の声に応えながら着実に進化を続けてきた。

 たとえば、複数PC間でのコピー&ペーストを可能にしたFlow機能(『MX Master 2S』/2017〜)、スムーズな回転を実現した電磁式ホイールMagSpeed(『MX Master 3』/2019〜)、クリック音を大幅に抑えた静音化モデル(『MX Master 3S』/2022〜)など、定期的に大きなアップデートを重ねてきた。常に“最良の操作体験”を目指す姿勢が、シリーズの高い評価につながっている。

 そして2025年、最新モデルとなる『MX Master 4』では、新たに触覚フィードバックを活用したコントローラーを搭載した。マウスの世界ではあまり耳慣れない機能だが、振動によって触感を伝える技術であり、もともとはスマートフォンやゲームコントローラーなどで採用されてきたものだ。

マウスの操作性を大幅に高めてくれるActions Ring

 『MX Master 4』は8ボタン・2ホイールの多機能マウスだが、特に特徴的なのは左側のレイアウト。水平スクロール用ホイールに加え、親指を自然に置ける羽根状のサムレストを備える。

 側面から見てみよう。ホイールの下段には左からジェスチャー/仮想デスクトップボタン、進むボタン、戻るボタンが備わり、さらにパッド部分に8つの丸印で描かれた円のグラフィックがActions Ring(ボタン)だ。

 このActions Ringを押すと、『MX Master 4』を接続しているデバイスの画面にActions Ring(UI)が表示される。

 ここからが本領発揮だ。UI上の各アイコンにマウスポインタを動かすと、パッド部分が息づいているかのようにピクリと震える。他のアイコンに移動させると、また、ピクリ。そしてアイコンをクリックすると、また一度、震える。

 これが心地よい。

 これまでにも、ソフトウェアでマウスランチャーを実現した製品は存在した。また、多数の物理ボタンを搭載して“押した感触”を重視したマウスもあった。『MX Master 4』が狙ったのは、その両者の利点を融合することだ。

 むやみにボタンを増やして指の動きを妨げることなく、ソフトウェアによる機能切り替え+触覚での押下感を組み合わせる。

 その設計思想は、まさに多機能マウスの最新形と呼ぶにふさわしい。

フリースピンモードにすると極めてスムーズなホイールに

 縦スクロールを担うスクロールホイールは金属製。電磁制御によって、1行ずつの精密なスクロールに適したラチェットモードと、抵抗がほぼなく無限に回転し続けるフリースピンモードを切り替えられる。

 ラチェットモードは、一般的なマウスと同様のクリック感を持つが、そのラチェットの強さを細かく調整できるのが魅力だ。さらに、強めに回転させると長文の資料でも一気に最下段まで移動できるSmartShift機能が働く。作業のテンポを中断せず、スムーズにページを移動できるのは快感だ。

 一方、フリースピンモードに切り替えると、ホイールはまるでハンドスピナーのように滑らかに回転する。指先を軽く弾くだけで延々と回り続け、摩擦をほとんど感じさせない。

 これは「MX Master」シリーズ伝統のフィーリングであり、シリーズを象徴する心地よさといえる。

 そして、Excelやスプレッドシートでの列移動、Photoshopでの拡大・縮小、あるいは動画編集アプリでのタイムライン操作などの横方向の操作で真価を発揮するのが、左側に備わったサムホイール(親指ホイール)だ。

 回転させてみると、スクロールホイールに比べてねっとりとした重みを感じる。これは力の入りやすい親指で操作するため、あえて重めにチューニングされているのだろう。

 指先の力加減にしっかり応える粘りのあるトルク感は、精密なトリミングや位置合わせを行う際に安心感をもたらしてくれる。

著名アプリに合わせたプロファイルが用意されている

 『MX Master 4』は、接続しているデバイスにインストールされているアプリごとに、Actions Ring(UI)や各ボタン、ホイールの動作を自動で切り替えることができる。

 たとえば、Photoshopではツール切り替えやズーム操作、Excelではセル移動やスクロールなど、それぞれに最適化された操作が割り当てられるのだ。

 この仕組みは非常に便利だが、本来であればユーザーが一つひとつ設定を行う必要がある。これが面倒だ。

 アプリを起動すると、『MX Master 4』を自動で認識し、デバイス内のアプリに合わせたプリセットプロファイルを即座に読み込んでくれる。

 これにより、Photoshop、Premiere Pro、Excel、Chromeなどの主要アプリは、初回起動時からすぐに快適な操作が可能になる。

 まさに、手にしたその日から使えるプロ仕様マウスといえるだろう。

 また、「Logi Options+」による設定は非常に直感的で、ドラッグ&ドロップで機能を割り当てられるなど操作もわかりやすい。

 多くのユーザーが使いやすいと感じる初期設定を自動で行ってくれるおかげで、初めて『MX Master 4』に触れる人でも「これなら使いこなせそうだ」という安心感を得られるはずだ。

USBドングルはUSB Type-C仕様

 『MX Master 4』はBluetoothおよび、Logi Bolt USBレシーバーを用いたワイヤレス接続が可能だ。今回、このレシーバーがUSB Type-C仕様となった。小型薄型のモバイルノートPCやMacBookシリーズにはUSB Type-Aポートがない現在、個人的に大きなアップデートポイントだ、と感じた。

 また複数のデバイスと接続するEasy Switchも使いやすくなった。『MX Master 4』を持ち上げ、底面のボタンを押さなくても、Actions Ringから接続先を選べるようになったのだから。

何度も行う操作を簡略化してくれるプロ仕様のマウス

 一見すると、従来モデルとの差異を感じにくいが、Actions Ringの扱いに慣れれば明らかに生産性が高まる『MX Master 4』。特に、毎日使う機能をActions Ringに割り当てると、キーボードのショートカットキーを押したり、いくつものメニューを開いて機能を選択してきた今までは何だったんだ、と感じてくる。

 『MX Master 4』の定価は2万1890円。マウスとしては高価だ。しかし『MX Master 4』がもたらす時短力は、価格以上のものがある。

◯商品情報
『MX Master 4』
https://www.logicool.co.jp/ja-jp/shop/p/mx-master-4.910-007595

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