マクドナルド、スズキ、スシロー……「ストリートファイター」はなぜ企業コラボと相性がいいのか?

 「ストリートファイター」シリーズとハンバーガーチェーン・マクドナルドのコラボレーション「ストリートバーガーズ」が話題を呼んでいる。

 ここ数年、さまざまな企業/ブランドとのコラボレーションが続いている同シリーズ。なぜ「ストリートファイター」はタッグの相手に選ばれるのだろうか。シリーズの現在地からその要因を分析する。

2D対戦格闘の草分け的シリーズ「ストリートファイター」

 「ストリートファイター」は、1987年にアーケードで稼働をスタートした『ストリートファイター』を初作とする2D対戦格闘シリーズだ。プレイヤーはゲーム内に登場するさまざまなキャラクターの中から1人を選択。パンチやキック、投げ、必殺技、ガードといったアクションを駆使しながら、敵キャラクターのノックアウトを目指す。

『ストリートファイター6』アナウンストレーラー

 初作の誕生から4年後の1991年には、第2作『ストリートファイターII』が前作同様、アーケードでリリースに。同作は翌年にスーパーファミコンへと移植されたことで、爆発的な知名度と人気を獲得。2D対戦格闘ジャンルの草分けとされる機会も多い。また、2023年6月には、シリーズ最新作『ストリートファイター6』が発売に。同タイトルは2025年6月末までの約2年で、全世界520万本のセールスを記録している。(※)

 今回のマクドナルドとのコラボレーションでは、シリーズの人気キャラクターであるリュウ、チュン・リー、ケンをイメージしたハンバーガーのほか、エナジードリンクを使ったオリジナル飲料、シャカシャカポテト用の新味「やみつきコンソメ味シーズニング」などが提供される。期間は10月22日からで、終了時期は11月下旬を予定している。

ストリートバーガーズ「うまいやつに会いにいく」篇

 特に『ストリートファイター6』の発売以降、「ストリートファイター」シリーズはゲームとその関連分野以外でのコラボレーションが相次いでいる。この項では主な事例を時系列で紹介する。

ゲーム内に登場するファッションアイテム「ENDACTUS」を再現したオニツカタイガー

 2023年6月、株式会社アシックスが展開するファッションブランド・オニツカタイガーは、『ストリートファイター6』とのスペシャルコラボレーションとして、ゲーム内に登場する装備に着想を得て特別に開発した新作スニーカー「ENDACTUS」を発売した。同アイテムでは、左足のかかと部に「Onitsuka Tiger」、右足のかかと部に「Street Fighter」のロゴをあしらうことで特別感を演出。ソールやステッチなど、細かいディティールにもこだわり抜いた印象的な商品となった。

 シリーズの開発/発売元であるカプコンとオニツカタイガーがタッグを組むのは、これが3度目のこと。その後、ゲーム以外の分野でさまざまな企業/ブランドとコラボレーションが続いていくことになる『ストリートファイター6』にとっては、実に意義深い取り組みとなった。

明治とは「きのこの山」「たけのこの里」を題材にしたゲーム内イベントを開催

 チョコスナックなどを中心に、さまざまな食品を製造/販売する株式会社明治は2023年9月、同社の主力商品のひとつである「きのこの山」「たけのこの里」を扱った『ストリートファイター6』のゲーム内イベント「きのこ vs. たけのこ!どっち派?」を開催した。同企画では、バトルハブ内においてどちらが好きかを投票することで、1位に輝いた商品をモチーフにした特別なアバターアイテムを手に入れることができた。

 「ストリートファイター」と各企業/ブランドとのコラボレーションには、ゲーム内における施策も多くある。明治とのタッグはその一例であると言える。

スシローとのコラボは、外食チェーンとのタッグの前例に

 2024年7月、株式会社あきんどスシローは、展開する回転寿司チェーン・スシローにおいて、「ストリートファイター」を題材にしたコラボレーション企画「スシローSUPERお得祭 [第一弾]大切り対決!まぐろVSサーモン」を開催した。イベントでは、シリーズのイメージに寄り添い、めばち鮪やサーモンといったこだわりのネタを大切りで提供。ほかにも、複数の期間限定商品を投入し、話題を呼んだ。

 同企画からは2024年8月、第2弾として「スシローSUPERお得祭 [第二弾]決めろ!お得コンボ!」、第3弾として「スシローSUPERお得祭 [第三弾]最終得技!」も開催されている。誰もが利用しやすい外食チェーンでのコラボレーションという意味では、今回のマクドナルドとの取り組みに続く、特別な例となったことは間違いない。

スズキはジュリに着想を得たバイクを制作

 2025年3月、軽自動車や二輪車の製造/販売で知られるスズキ株式会社は、「ストリートファイター」シリーズに登場するキャラクター・ジュリに着想を得て制作したオリジナルバイク「GSX-8R Tuned by JURI」を、同社が協賛する『ストリートファイター6』の世界大会「CAPCOM CUP 11」および「ストリートファイターリーグ:ワールドチャンピオンシップ 2024」の会場で展示した。同機では、ジュリのトレードマークである蜘蛛模様をカラーグラフィックに採用。左目の風水エンジンをバイクのエンジン上にも表現し、彼女の特徴を演出している。

 イベントでは、このバイクにまたがって記念撮影ができるフォトスポットも設置。スズキは2025年9月に開催された『東京ゲームショウ2025』でも同様の取り組みを行っている。2025年10月現在、一般に販売はされていないが、このこともイベントでの訴求にはプラスに作用しているに違いない。オニツカタイガーとのコラボレーション同様、モノとして残っていく取り組みには、期間限定のそれとはまた違った価値があると言えるのではないだろうか。

シリーズのキャッチコピーを用い、オリジナルゲームを提供した大正製薬とのコラボ

 2025年3月、医薬品などの製造/販売を行う大正製薬株式会社は、同社の商品「リポビタンDX」と「ストリートファイター」シリーズとのコラボレーションとして、「リポビタンDXと元気な朝(やつ)に会いに行く!」キャンペーンを実施した。企画では、シリーズに登場するキャラクター・リュウの象徴的なセリフ「俺より強いやつに会いに行く」をモチーフに、リポビタンDXをはじめとした関連商品の販促を展開。対象品目についているシールのポイントを5つ集めたうえで、リポビタンシリーズの公式キャンペーンサイト「リポビタンポイントチャージステーション」に登録することで、『ストリートファイターⅡ』CPU対戦オリジナルゲームをプレイできた。

 ゲーム業界外の企業との、ゲームを接点にしたコラボレーションという意味では、この取り組みも特別な例のひとつであると言える。以上のように、「ストリートファイター」シリーズは『ストリートファイター6』の発売以降、ジャンルの枠を超えて、話題性のある印象的なコラボレーションが続いている現状だ。

界隈内にとどまらない抜群の知名度が企業/ブランドから選ばれる理由に

 なぜ「ストリートファイター」は、さまざまな企業/ブランドからコラボレーションの相手に選ばれるのだろうか。そこには誕生から約40年のあいだで築き上げてきたシリーズのネームバリューが影響していると考える。

 先にも述べたとおり、第2作『ストリートファイターII』は、2D対戦格闘の草分けとして広く知られている。その認知度の高さは、界隈のみにとどまらない。ゲームカルチャーに明るくない層であっても、シリーズ名や「リュウ」「春麗」「昇竜拳」といったゲーム内に登場するワードだけは知っているというケースが珍しくない。

 その後、対戦格闘ジャンルでは、「ストリートファイター」のフォロワーとも考えられるさまざまなタイトルが発売され、群雄割拠の時代に突入。それぞれが横並びとなり、相対的にシリーズの立ち位置は下がったが、最新作『ストリートファイター6』発売以降は、その成功により分野を牽引していたころの求心力を取り戻しつつある。直近、企業/ブランドとのコラボレーションが相次いでいるのは、シリーズが復権しつつあるからと考えるのが自然だろう。

 「ストリートファイター」はゲームカルチャーにおいて、「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」に匹敵する知名度を誇っており、現在進行形でマーケットやジャンルを牽引しているという事実がある。このことが企業/ブランドから選ばれる主因となっているのではないか。そして、『ストリートファイター6』の快進撃が続くかぎり、この状況が暗転することはないとも言える。おそらく今後も、マクドナルドのみにとどまらず、さまざまな企業/ブランドとのコラボレーションが続いていくはずだ。

 はたして次に話題となる「ストリートファイター」のコラボレーションはどのようなものになるのだろうか。広い意味でのシリーズの次なる展開に注目したい。

参考:https://www.capcom.co.jp/ir/business/million.html#tab2

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