マーベルのヒーロー&ヴィランがド派手に4 vs 4! 期待大の『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』試遊レポ

「マーベルのヒーローでド派手に戦いたい!」という夢がついに実現

 今年6月に公開された「State of Play」で『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』(2026年発売予定。PlayStation 5 / Microsoft Windows)が発表された時、「その手があったか!」という驚きとともにガッツポーズをした人は少なくなかったのではないだろうか(少なくとも筆者はその一人である)。

MARVEL Tōkon: Fighting Souls - Official Announce Trailer

 マーベル・コミックを題材とした格闘ゲームといえば、かの有名な「マブカプ」こと「MARVEL VS. CAPCOM」シリーズが挙げられるが、同シリーズは2017年の『マーベル VS. カプコン:インフィニット』以来、何の音沙汰もない状態が続いており、一方で今のゲーム業界は『ストリートファイター6』の大成功を経て、空前の格ゲーブームが到来。これまでにないほど格闘ゲームへの需要が高まるなかで、かつてのように「マーベルのヒーローでド派手に戦いたい!」と感じる人々の熱は、着実に大きくなっていた。

 一方、『MARVEL Tōkon』の開発を担当するアークシステムワークスと言えば、「ギルティギア」シリーズに代表される、アニメをそのまま動かしているかのような見事なグラフィックとド派手な演出、個性をしっかりと引き出した魅力的なキャラクター造形で知られる格闘ゲームの老舗。2021年に発売された『GUILTY GEAR -STRIVE-』は、『サイバーパンク2077』原案の人気アニメ『サイバーパンク: エッジランナーズ』をも巻き込みながら、現在も格ゲー好きを超えた幅広い層から人気を集めている傑作だ。

Guilty Gear -Strive- Opening Movie

 というわけで、「アークシステムワークス×マーベル・コミック」と聞いた瞬間に、これは現状考えられる限りベストの選択肢だ! と大興奮したのである。そして、「アークなら、きっとマーベルのヒーローやヴィランを、格好良く、ド派手に描いてくれるはずだ!」という期待は、今回の『東京ゲームショウ2025』での試遊体験を通して、間違いなく確信に変わった。

(注記:先に書いておくと、筆者は「ストリートファイター」や「モータルコンバット」、「インジャスティス」などの格闘ゲームをカジュアルに遊んでいる程度のプレイヤーであり、 本稿もあくまでその目線でまとめている)

コミックから飛び出したかのような演出の数々と、アークらしい魅力に満ちたキャラクター

 今回のプレイデモで使用できたのは、キャプテン・アメリカ、ミス・マーベル、ドクター・ドゥーム、スパイダーマン、ゴーストライダー、スター・ロード、アイアンマン、ストームの8名。筆者は主に、スパイダーマンとストームを中心にして試遊に臨んだ。『MARVEL Tōkon』では、「4 vs 4」という格闘ゲームとしてはかなり変則的なチーム戦となっており、キャラクター選択画面でも使用する順に4人を選ぶことになる。

 まず気に入ったのが、キャラクター選択が完了した時点で、コミックの表紙に4人が集まっているようなイラストが表示されること。この演出を筆頭に、UIの多くはコミックを意識したようなつくりとなっており、全体的に「コミックを飛び出してキャラクターたちが暴れまわっている」という感覚を想起させるようになっている。これは実際の試合中においても同様で、必殺技が発動する瞬間、まるでコミックの1コマのような演出が挿入されたり、遠くに吹き飛ばされた時にはカメラの角度を変え、さらにグッとスローモーションにすることでコマが変わった時のような表現を実現していたりと、とにかく「ここだ!」という見せ場をド派手かつコミック調に盛り上げてくれる。キャラクターのチョイスや造形からも分かるように、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)は意識しつつも、よりコミック側に重点を置いたバランスになっているのが印象的だ(例えば、スター・ロードはMCU版の三枚目的なスタイルよりも、むしろガジェットを巧みに操るクールさが際立つバランスになっている)。

 もちろん、MCU版に寄せ切った方が「今」という観点では受けが良いのは間違いないだろう。だが、『MARVEL Tōkon』のデザインは、現代的でありながらも、常にどこか懐かしく、親しみやすい感覚を抱かせるものとなっており、リリースから長年にわたってプレイされ続けることを踏まえると、より正しい判断であるように感じられる。何より、アークらしい活き活きとした2.5Dのカートゥーン調で描かれたキャラクターたちは本当に魅力的で、(個人的な推しでもある)ストームは最高にクールだし、ミス・マーベルはめちゃくちゃキュートだ。現在発表されている8名以外のキャラクターがどのように描かれるのかも気になって仕方がない。

 操作周りもシンプルかつ直感的で、たとえばスパイダーマンの場合は、お馴染みのスパイダーウェブを駆使して、縦横無尽かつ鮮やかにステージを飛び回ることができる。その動きは派手ではありつつも無駄がなく、試遊の限られた時間内でも「スパイダーマンを動かしている!」という感覚を十分に味わうことができた。他のキャラクターにおいても、ストームであれば竜巻を自在に操り、ミス・マーベルであればゴムのような手で殴りまくったりと、「このキャラクターといえばこれ」というアクションを、コントローラーを手に取ってすぐに実現することができる。滑らかでありながらもメリハリがしっかりと効いたアニメーションも相まって、動かすだけでも十分に楽しい。

連打でも戦えるほどにシンプルな操作性から垣間見えた、『MARVEL Tōkon』の狙い

 こうした極めて直感的な操作性を生み出す大きな理由は、操作方法のシンプルさにある。本作では、ガードやジャンプ、軽・中・重攻撃など、基本的なアクションは従来の格闘ゲームを踏襲しつつ、いわゆる必殺技にあたるクイックスキルやユニーク技などが個別にワンボタンに割り当てられており、コマンドを覚えることなく発動できるようになっている。また、強必殺技にあたるスーパースキルやアルティメットスキル、本作ならではのアッセンブル(選んだキャラクターたちが集結して一つの技を発動する)ボタンをそのまま連打すればコンボを組んだ上で自然に発動するようになっているため、チュートリアルを挟まなくとも、ある程度はバトルを楽しめてしまうのである。

MARVEL Tōkon: Fighting Souls Beginner's Guide

 もちろん、こうした操作方法の他に、ある程度のコマンド入力を必要とする操作方法も選ぶことができるようになっているのだが、それでも相当に簡易的で(少なくとも現在発表されている情報を見る限りは、『ストリートファイター6』のクラシック操作よりも遥かにシンプルだ)、さらに重要なのは、どのキャラクターにおいてもコマンド関連が共通していると明言されていることだろう。筆者の感覚では、『スト6』のモダンやダイナミック操作どころか、『大乱闘スマッシュブラザーズ』と比較してもおかしくないくらいにはシンプルに削ぎ落とされているように感じられた。

 近年のeスポーツとしての格闘ゲームの活況を踏まえると、かなり大胆な判断であるようにも感じられるが、これは「せっかくマーベルのキャラクターを使っているのだから、これまで格闘ゲームに触れてこなかったような層にもカジュアルに楽しんでほしい」という想いに加え、『MARVEL Tōkon』が「4 vs 4」という変則的な形式を採用しているということも大いに影響しているのだろう。

 「一つの試合につき、4人のキャラクターを選ぶ」ということは、従来の格闘ゲームの発想であれば、4人分のコマンドや戦い方を覚えるのと同義であり、ただでさえ高いハードルがさらに上がってしまう。「操作方法は共通」であれば、少なくともその片方の問題は解決するというわけだ。言い換えれば、それ自体が格闘ゲームの醍醐味の一つでもある「キャラクターを覚える」というプロセスを、ある程度犠牲にしてでも「4人のキャラクターがアッセンブルして戦う姿を実現したい!」という夢を優先したというのが、本作の位置付けをよく示しているように思える。実際、選んだ4人のキャラクターが一堂に介して戦う姿は、間違いなく試遊体験におけるもっともテンションの上がる瞬間であり、同時にこれまでの格闘ゲームでは決して見たことのない光景だった(ストームとドクター・ドゥームが一緒に戦うのを見るだけでも最高だ)。

「4 vs 4」や「派手すぎる」がゆえに感じられた課題もあるが、盛大なアッセンブルに期待

 ここまでは基本的にポジティブな内容をまとめてきたが、もちろん懸念がまったくないというわけではない。最も気になった点としては、ゲームスピード自体も早く、バトル自体も落ち着く余裕がないくらいにアグレッシブであることから、4人のキャラクターを使いこなす前に試合自体が終わってしまうということである。単純にまだシステムに慣れ切っていないというのもあるが、どうしても「メインキャラクター+α」という思考になりがちで、限られた試遊時間の範囲では、頑張っても一部の「MARVEL VS. CAPCOM」シリーズで採用されていた3体が限界だった。また、超必殺技はそこまで発動コストを必要としないにも関わらず、都度専用カットが挿入されるため、一つの試合で何度も発動するうちに、若干の煩わしさを感じてしまった。さらに、アッセンブル時にはあまりにもド派手すぎて画面内で何が起こっているのかが分からなくなってしまうこともあり、演出量のバランスにはある程度の調整が必要かもしれない。

 また、『スト6』界隈で今なお「モダン vs クラシック」論争が白熱しているように、今回の試遊で採用されていたシンプル操作と、コマンド操作の間で何らかの有利/不利が発生しないかどうかも気になるところだ。あくまで「幅広い層が楽しめるパーティー格闘ゲーム」という佇まいではありつつも、「EVO」を筆頭に「スマブラ」が熱狂的なeスポーツとしての需要を抱えていることを踏まえれば、本作も同様のニーズを抱えることは想像に難くない(実際、今回の『東京ゲームショウ』の前には「EVO」でプレイアブル出展を実施している)。カジュアルとプロのバランスは、あらゆる格闘ゲームが悩まされてきた課題でもあるが、本作はどこまで向き合ってくれるのだろうか。

 とはいえ、『MARVEL Tōkon』に最も期待していたのは、「クールなマーベルのキャラクターたちがアッセンブルして、ド派手に戦う」ということであり、今回の試遊体験は、それに見事に応えてくれるものだった。あとは、可能であれば「インジャスティス」級は高望みだとしても、物語の面でもキャラクターたちがクロスオーバーするような、魅力的なストーリーモードが用意されていれば最高なのだが……。とにかく、無事にリリースを迎え、盛大にアッセンブルする日を楽しみに待ちたい。

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