「Dell」ベースグレードになっても中身は「Inspiron」? 『Dell 14/16(AMD)』の気になる構成要素を分析してみた

DDR4ショックで急遽登場したDell 14

 2025年8月29日、デル・テクノロジーズは『Dell 14/16(AMD)』を発表した。これまでの記事とは違う角度でこの発表会を見てみたい。今年の『CES』でDellはパソコンブランドの大刷新を発表し、個人・企業向け等々いくつかのサブブランドが付いていたパソコンをDellブランドに統合した。例外はゲーミングパソコンの「Alienware」でこれは残る。

 基本的に知名度の高いDellブランドとして、個人向けとSMB向けは「Dell」ブランド、企業向けは「Dell Pro」、ワークステーションを「Dell Pro MAX」の3種類に、グレードとして松竹梅(Premium、Plus、無印)となり、4ケタで年代の違いが分かりにくかったモデルナンバーも7ケタの英数字で統一が図られている。

2025年Dellブランドパソコンもやっとラインナップ完成
2025年のパソコンブランド改定のチャート。これは7月のDell Pro MAX発表会のもの

 今回発表されたのは、従来だとInspironという名称で個人/SMB向けに販売されていたベースグレード製品のAMDプロセッサ版だ。前回の発表会で「これでひと通り発表が終わった」と説明がありつつモヤモヤしていたことがある。それは『Dell 16』は発表されたが、最も台数が見込める『Dell 14』のリプレース製品がないことだ。14インチ製品としては『Dell 14 Plus』があるが、グレードが上がるので高くなる(が、Copilot+PCでの使い勝手を実感しやすい『Dell 14 Plus 2-in-1』が現在イチオシだそう)。

 当日明かされたのは「次のモデルチェンジまで『Inspiron 14』は残る予定だった」ということ。実はXPSの13インチモデルやQualcomm採用製品もまだDellブランド製品になっておらず、一部は今年も販売を続ける予定だった。

6月の『Dell 14/16 Premium』発表会のもの。『Dell 14』や『Dell 13 Premium』がない

 実は今年、大手メモリメーカーが「DDR4メモリの製造を終了する予定」とアナウンスしたことで流れが変わった。スポット市場ではDDR4メモリの方がDDR5メモリよりも高くなったこともあり、今後DDR4メモリを使用した製品提供を続けるのが難しくなる可能性がある。ということでDDR5メモリを使う製品を投入した。

 もうひとつは今のDDR5メモリならSO-DIMMでも5600MT/sという速度が得られるようになったうえ、前々回のInspironはSMB向けのVostroブランドを吸収し、法人向けで要求される「メモリ増設、ハードウェアTPMに対応する」に対応できるという効果もある。

29日の発表会で『Dell 14/16(AMD)』が追加

デル・テクノロジーズ株式会社 ジャパンコンシューマー&リテール アソートメントプランナー兼コンサルタントの松原 大氏が製品を紹介した
『Dell 14(AMD)』ことDC14255の仕様。型番もディスプレイ製品のようにわかりやすくなった。末尾が5なのはAMDプロセッサなため
『Dell 16(AMD)』はアルミ筐体がDC16255でプラ筐体がDC16256。『Dell 14』と異なりプラ筐体はSDカードスロットがないので型番が変わったようだ。差別化で商品構成は絞られている。

名称は異なってもやはりInspironらしさは残る

 なお、筆者は2020年からDellのInspironを愛用している。Dellにしたのはこの当時「パソコンがリモートワークとなりバカ売れしたことで在庫がまったくなく、納期がわからないメーカー多数の中『標準納期+2週間≒4週間』で『Inspiron 14 5000(5485)』が届く」と書かれていたからだ。(実際には標準納期の2週間で届き喜んだが、到着3日前に新型の発表があり、枕を濡らした)。

 その新型『Inspiron 14 5000(5405)』は個人的にはその後の「Inspiron 5000」シリーズの筐体設計を決めたエポックメイキング的な製品だった(CPUアーキテクチャがZen3からZen4へ移行しパフォーマンスの差は歴然。筐体デザイン変更によりエアフローも大きく改善されていた)。

 今回登場した『DC14255』こと2025年モデルの『Dell 14』も非常に似た筐体設計かつ、最近のノートパソコンはPD電源が当たり前になっている中で「Dell小型筐体電源コネクタ(外径4.5mmで電源の容量を伝える機能を持つ独自コネクタ)」が備わっている。

 PDでの給電にも対応しているので市販のPD電源やモバイルバッテリーでも(保証外ながら)動作するが、Type-A×2+Type-C×1の構成ではType-Cを電源として利用するのはちょっと厳しい。名前は変わっても後継モデル感がある。

 「Inspiron」ロゴがあるのは底面パネルで、パッと見た感じで『Inspiron 14』と『Dell 14』を見比べた場合、天板のDellロゴが〇で囲われているかいないかぐらいの差しかない。変わったのは名前で中身は変わらないと言えるだろう。

ちなみに筆者の『Inspiron 14(5440)』。最後のInspironということで購入した私物だ
『Dell 14(AMD)』。ベースグレードでI/O周りもそれに準じている
左に電源、HDMI 1.4、USB Type-AとType-C
右は盗難防止ロック用の穴、USB Type-AとSDカードスロット
天板のDELLロゴは塗装の塗り分けで丸の囲みなし
左に電源、HDMI 1.4、USB Type-AとType-C
右は盗難防止ロック用の穴、USB Type-AとSDカードスロットとI/O周りは同じ
天板のDELLロゴが〇で囲われているのが外見上の差で、ブランド表記は変わっても基本構成は全くと言ってよいほど同一だ

 ちなみに「Inspiron」は基本アルミトップボディだが、コスパ最優先の「Vostro」はプラ筐体で統合後のInspironと今回の『Dell 14/16』にプラ筐体があるのもこの名残だ。今回の製品ではアルミ筐体とプラ筐体ではCPUシリーズやWebカメラ、電池容量も変更されており、DELLを愛用している筆者的にはプラ筐体はお勧めしにくくなった。

 発表会でポロリと『Dell 14(Intel)』に関しても言及があったが、9月3日から販売開始となっている。こちらもアルミ筐体はCore 7-150Uのみと差別化が行われている。

『Dell 14(AMD)』のマニュアルの一部。バックカバーを外す場合もどのネジを緩め、外すためにはどうすればよいのか詳細に記述されている

 なお、デル製品の隠れポイントとして「マニュアルの存在」がある。RAMの増設、交換やSSDの換装がスムーズに行えるのも交換マニュアルがあるからだ。現在はスマートフォンを利用してARで作業手順を指示される「Dell AR Assistant」も提供されており、交換作業が容易になった。SSDの換装も、ファームウェア内にマイグレーションツールが備わっており、USBメモリまたはUSB-M.2アダプタがあればアップグレードが容易だ。この二点はあまり知られていないが非常に便利な機能となっている。

関連記事