『Baba Is You』の作者が送り出す超変則ソリティアの数々を見よ 『A Solitaire Mystery』プレイレポート

 先日発売された『A Solitaire Mystery』がインディーゲームファンのあいだで話題を呼んでいる。

 本作は『Baba Is You』の作者であるHempuli Oyの最新作だ。多種多様な変則ソリティアが30本も並んでいながら、どれもこれもプレイする価値のあるユニークなパズルになっていた。

 改めて、本作は変則ソリティアの入ったミニゲーム集だ。ソリティアとはトランプを使った一人遊びを指す言葉なので、正確にはフリーセルと呼ぶほうが正しいのだろうが、本稿ではHempuli Oyの表記に則ってソリティアと呼称したい。

 Steamで評価されたソリティア集といえば『Opus Magnum』などのプログラミングパズルを作ってきたZachtronicsの『The Zachtronics Solitaire Collection』が思い浮かぶが、本作は偉大な先人をはるかに凌駕するバラエティと深みを備えており、パズルゲームファンの心を鷲掴みにする出来だった(なお、いくつかのルールについてはZachtronicsからの影響を表明している)。

 とにかくルールはさまざまだ。まずもっとも左端にあるTAP SOLITAIREからプレイしてみた。

 このソリティアは『Baba Is You』のキャラクターたちを流用しており、見た目からしてkawaii。基本ルールは一般的なソリティアと同じで、画面右端の4スロットにカードを並べていけばいいだけだ。

 このルールでは、降順であればどんなスートであれ重ねていくことができるが、同じスートでなければすべてをピックして移動することはできない。フリーセルは2つしかないのでかなりシビアなルールに見えるが、その代わり好きなカードを3枚まで横向きに置いて、自由に中継することができる。横向きカードの下にはどんなカードを置いてもよい。

 実質フリーセルが5つあるようなもので、わかってくるとそんなに難しくはない。チュートリアルにはちょうどいいだろう。

 次に遊んだのがBABATAIREだ。こちらも『Baba Is You』のフレーバーだが、TAP SOLITAIRE以上に複雑なギミックが施されている。一般的なソリティアのルールの上に『Baba Is You』のルールが乗っかっているのだ。

 BABA、FOFO、JIJI、KEKEのキャラクター名のカードと、ISのbe動詞のカード、そしてOPPOSITE、+5、ON SAME、ANY SUITの目的語のカードがある。これらを組み合わせることで、ソリティアのルールを変更することができるのだ。

 たとえば、「BABA IS ANY SUIT」という文章を作ると、BABAに属する白いスートのカードはどのスートとも組み合わせて置くことができるようになったりするし、「BABA IS FOFO」のような文章を作ると、BABAとFOFOのカードがどちらも同じスートになったりする。

 ソリティアというフィールドに『Baba Is You』らしいゲームのルールを破壊する楽しみが混ざったなんとも言えない作品だった。

 他にも、表のカードと裏のカードの2種類しかないCHEATDECK SOLITAIREや、さらにそのルールを突き詰めた1種類のカードしかないSINGLE-CARD SOLITAIRE、ガーデニングをモチーフにしたGARDEN SOLITAIRE、人狼ゲームのような絵札の正体を当てる遊びが盛り込まれたCOUNCIL OF SECRETSなど、遊び尽くせないほど大量のソリティアが用意されている。

 まだすべてのゲームを遊び尽くせたわけではないが、筆者が今のところ面白いと感じたのはTRANSMUTATIONだ。

 他のソリティアに比べると、フリーセルは4つもあり、スートは昇順でも降順でも好きに置くことができるので、非常に簡単に思えるかもしれない。しかし、問題はカードを変異させる必要があるという点だ。

 TRANSMUTATIONではなんと1から26までのカードをスロットに置く必要がある。しかし、使用できるのは一般的なトランプカードだけ。では14以降はどうするのかというと、画面右下にあるフリーセルにカードを2枚置いて融合させるのだ。6と8をくっつければ14ができる……といった具合である。

 やってみるとこれがとんでもなく難しかった。そもそも26は13+13、25は12+13でしか作れないので、自由に使える13は1枚しかない。それだけなら13の使いどころだけ気を遣えばいいが、問題は20前後だ。19、20、21、22を作るあたりでどうしても10を何度か使うことになる。そうするとそこまでに10を残しておかねばならず、そのために9+9で18を作ったりするわけだが、今度は9が足りなくなってくる……。

 そんな具合で、完璧にクリアしたときの達成感は凄まじいものがあった。

 どのソリティアも基本的には面白かったが、モックアップをそのまま出力したようなゲームもあり、難易度や仕上がりにばらつきがあるのは否めない。特にCOUNCIL OF SECRETSは、1回目こそ目新しくて面白いとは思うものの、人狼としてのネタが透けるのが早すぎて、2回以上遊ぶことはないだろうと思ってしまった。

 また、現状は日本語に対応しておらず、PCOT(無料の翻訳支援ツール)などの外部アプリに頼ることになるので、その点も注意していただきたい。

 ソリティアというと古いPCにプリインストールされていた無料のアプリという印象の人もいるかもしれない。しかし、そんな見慣れたものに、これでもかと要素をてんこ盛りにした本作は、パズルゲームファン以外にも遊んでもらいたいと思える作品だった。

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