かわいいタヌキと一緒に一本道の通りを作り上げていく カジュアル街づくりシム『おいでませ、みなみ通りへ』プレイレポート

 2025年7月9日『おいでませ、みなみ通りへ』がPlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One向けに配信された。また、同日にXbox Game Passでも遊べるようになった。

 すでにPC(Steam)とNintendo Switch向けに発売されていたタイトルだが、この機会に遊んでみたところ、とてもカジュアルで楽しい街づくりシムだったので、紹介させていただきたい。

 本作は街の開発や運営を行う都市経営シミュレーションゲームだが、お手軽さはジャンルのなかでも群を抜いている。

 管理するのは「みなみ通り」というたったひとつの通り(Lane)だ。通りの奥か手前のどちらかに建物を置き、どんどん一方向に伸ばしていくことになる。建物の隣接ボーナスであるとか、通りの長さといったようなややこしい要素は一切ない。

 ゲーム中はエマというタヌキが説明してくれるので、何も難しいことはない。「住民を増やす」「住民の満足度を高める」といったミッションをこなしていくことで、次の通りが解禁されていく仕組みだ。

 家を建てることで住民が増え、ラーメン屋やタピオカストアを建てることで住民が買い物をしてくれる。そこで得たお金でさらに住民を増やしたり、通りをきれいにして満足度を高めたりしていくのだ。

 本作はカジュアルを売りにしているため、お金が減ったり、ゲームオーバーになったりといったマイナスの仕掛けは一切ない。あまりに非効率だとサブミッションに当たるフリー目標が達成できないこともあるが、そこまでシビアなものでもなく、意識して遊んでいれば問題ないだろう。

 特に急かされることもないので、この手の街づくりシムなどのシミュレーションゲームが苦手な人でも必ずクリアすることができるはずだ。

 建物を建てたあとは、みなみ通りの一日が始まる。住民たちは好きなように行動し、公園でくつろいだり、ラーメンを啜ったりして一日を終える。

 彼らをクリックすると内に秘めている本音が聞けるのだが、これがなかなか健気でかわいらしい。みなみ通りに引っ越してきてどんなことが待ち受けているかワクワクしていたり、あまり人に言えないような悩みを抱えていたり、頭の中がラーメンやタピオカのことでいっぱいだったりとさまざまだ。

 同時に、建物でアクティビティやショッピングを楽しんだあとの住民をクリックすることで、感想も聞くことができる。主にラーメンの麺が足りないとか、値段が高いとか、そういった感じだ。彼らの感想に個体差はないので、言う通りに調整してあげることで、満足度も売上もあがっていく。

 本作の特長はなんといってもそのユルさだろう。システム上、何かに煩わされることはなく、ちょっとずつ伸びていくみなみ通りを眺めていられる。

 猫ちゃんをクリックしてゴロゴロ鳴かせたり、「Demon」という物騒な曲がなぜかお年寄りのあいだで流行っていたり、温泉の隣にまた温泉を建ててみたりと、ちょっと笑ってしまう瞬間がいくつもあった。

 サンドボックスモードではミッションに囚われず好きなように通りを作れるので、ぜひそちらも試してみて欲しい。

 メインとなるモードでは、ひとつの通りに課せられたミッションをクリアすると、また次の通りへと向かうことになる。高齢化が進んでいる通りや、不潔なために猫がいなくなってしまった通りなど、さまざまなテーマの通りが全5ステージ用意されている。どれもバラエティがあって素敵だが、難しいステージはひとつもなく、カジュアルさを徹底していた。

 若者やお年寄り向けにメニューのコンセプトを替えたり、人気のないお店を潰したりと、ゲーム内の要素は増えていくが、全編を通して3時間程度でクリアできるので、ボリューミーでハードな印象もなかった。   

 とりたてて大きな問題点はなかったが、唯一あるとすれば、後半の通りで毎日イベントが起きるようになる(新聞が発行され、書かれているニュース通りのことが起きる)のだが、これが味変にはなっているものの、面倒なものもあった。

 たとえば、お年寄りの味の好みが変わると、今までに設定したお店を見返してもう一度メニューを調整しなければならないので、やや手間に感じた。とはいえ、やる気を削ぐほどの問題ではなかった。

 ちょっとした時間に楽しめるゲームながら、細部まで調整とディレクションが行き届いていた。ラストには、自分が作り上げてきたみなみ通りと別れることに少し感傷的になってしまったほどだ。

 街づくりシムに苦手意識がある人や、かわいいゲームに目がないという人はぜひとも遊んでみてほしい。

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