世界一優雅なエンタメ×テクノロジー空間「クイーンエリザベス号」を体験してみた!
豪華客船の代名詞としても知られる「クイーンエリザベス」。英国のフラッグシップ・ラインとしても知られるキューナード社から2010年にデビューした3代目「クイーンエリザベス」は伝統と現代的な快適さが見事に融合した、まさに“洋上の英国”。そして実はとてつもなく優雅なエンタメ×テクノロジー空間でもあった。知られざるその世界をお伝えしよう。
グランドロビーから始まる“英国”への旅
船の中央部に位置するグランドロビーに足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが見事な寄木細工だ。これは初代クイーンエリザベス号をモチーフに、エリザベス2世女王陛下の甥であるアーティストが手掛けたもの。ホテルのロビーさながらの空間で、ここから旅がスタートする。
グランドロビーは3層吹き抜けの壮大な空間で、2階部分にはステーキハウスレストラン、カフェなどが配置されている。エレガントな階段を上がると、そこには船内の象徴的な存在である図書館が広がっていた。
6,000冊の蔵書が眠る、海上の図書館
2層構造の図書館は、華麗な螺旋階段と革張りのソファが印象的。約6,000冊の蔵書は、乗客が置いていった本で構成されているという興味深いシステムだ。日本語の本もあり、海を眺めながらゆったりと読書を楽しめる。
ワーケーション需要にも対応しており、コンピューターやプリンターも完備。2024年に導入されたSpaceX社のスターリンクにより、洋上でも快適なインターネット環境が整っているのは嬉しいポイントだ。最新テクノロジーにもしっかり対応している点も、流石は「クイーンエリザベス」といったところ。
アールデコ調から一変、華やかなクイーンズルーム
今年3月にリニューアルされたばかりのクイーンズルームは、船内でも特に華やかな空間だ。従来のアールデコ調から一転、昨年デビューした姉妹船「クイーンアン」からインスパイアされたモダンなカラーリングが印象的。
ここはキュナード名物のアフタヌーンティー会場であり、夜は社交ダンスのボールルームに変身する。毎日生バンドが演奏し、優雅なダンスパーティーが繰り広げられる。日中はズンバレッスンや講演会など、多彩なプログラムが開催される多目的スペースでもある。
英国パブからカジノまで、多彩なエンターテインメント
右舷側に位置する「ゴールデンライオン」は、本格的なイングリッシュパブ。フィッシュ&チップスとともに、キュナード社オリジナルビールが楽しめる。IPA、ラガー、ブラックの3種類があり、ここでしか味わえない特別な一杯だ。ドレスコードが適用されない数少ない場所でもあり、カジュアルに過ごしたい時の隠れ家的存在となっている。
近くに位置するカジノは、日本の領海を離れてからオープン。ブラックジャック、ポーカー、ルーレット、スロットマシンなど本格的な設備が揃う。
1930年代へのオマージュ、ロイヤルアーケード
3階のロイヤルアーケードで目を引くのは、ロンドンのビッグベンと同じデント社製の時計。「CUNARD 2010」の文字が、この3代目の就航年を物語っている。
キュナードの楽しみのひとつがドレスコード。「ガラ・イブニング」と呼ばれるフォーマルナイトでは、仮面舞踏会やレッド&ゴールド、ブラック&ホワイトなど毎回異なるテーマが設定される。乗船前に専用ポータルサイトで確認できるため、事前準備も楽しみの一つだ。
洋上のウェルネス空間、スパとプール
9階のスパエリアは、船の最前部に位置する特等席。朝7時半から利用可能で、航行中は進行方向を眺めながらのワークアウトが格別だ。
特筆すべきはオーシャンビューサウナ。海を眺めながら入るサウナは、まさに非日常の体験。温度は約60度と控えめで、ゆったりと体を温められる。運が良ければイルカの姿も見られるという。
屋外には2つの大型プールがあり、「パビリオンプール」と船尾の「リドプール」はそれぞれバーとジャグジーが併設されている。
終日営業のビュッフェレストラン「リド」
リドレストランは、朝食から深夜の軽食まで対応するビュッフェスタイル。ドリンクバーは料金に含まれており、部屋への持ち帰りも自由。ドレスコードが適用されないため、気軽に利用できるのが魅力だ。
毎日異なるテーマメニューが提供され、ピザバーではカスタマイズしたピザをその場で焼いてもらえる。アフタヌーンティーに参加できなくても、ここでスコーンだけ楽しむこともできたりするようだ。
英国元首相の名を冠したシガーラウンジ
10階前部の「チャーチルズシガーラウンジ」は、シガー愛好家のための特別な空間。キュナードの顧客でもあったチャーチル元首相の名を冠し、壁には船上で撮影された写真が飾られている。
興味深いのは、英国籍のこの船が有事の際は軍艦として徴用される可能性があること。展示されている写真には、実際に兵士輸送船として活躍した時代の姿も収められている。まさに英国らしい「noblesse oblige(ノブレス・オブリージュ/高貴なる義務)」を象徴するような逸話でもある。
歴代7人のコモドアに捧げるカクテル
「コモドアクラブ」は船首からの眺望が素晴らしいバーラウンジだ。コモドアとは英国王室がキャプテンに与える勲章のことで、キュナード歴代7人のコモドアの歴史や彼らが愛した酒にちなんだオリジナルカクテルが楽しめる。
キュナード社はビールだけでなく、4種類のオリジナルジンも取り扱っており、クイーンエリザベスは日本やオセアニアを巡るため、オリエンタルなハーブやフレーバーを使用。他の姉妹船もそれぞれの航路にちなんだ味わいに仕上げられているこだわりぶりだ。
ディスコから劇場まで、夜のエンターテインメント
「ヨットクラブ」は夜になるとミラーボールが回るディスコに変身。一方、「ロイヤルコートシアター」では毎晩異なる45分間のミュージカルショーが上演される。1日2回公演で、追加料金も予約も不要。本格的なエンターテインメントが楽しめる。
今回のメディア向け乗船イベントでは、特別にショーを見せてもらうことができた。観覧したのは、クルーズの初日に上演されるという「Be Our Guest」。前から3列目くらいが迫力があってオススメとのことでその位置で観覧したが、かなり本格的でとても満足感のあるショーだった。
クルーズ料金に含まれる充実のサービス
基本料金には宿泊、3食の食事、エンターテインメントがすべて含まれており、追加でかかるのは有料ドリンク等。
10日間の日本周遊クルーズ(広島、長崎、釜山、大阪、横浜)の場合、バルコニー付き客室で1人あたり約21万円から。移動・宿泊・食事すべて込みと考えれば、決して高くない価格設定だ。
ラグジュアリー船ならではの大人の船旅
キュナードはクルーズ業界でも「ラグジュアリー船」に分類され、カジュアル船とは一線を画す。がっつりなエンターテインメント重視ではなく、大人がゆったりと静かに過ごすことを重視した「優雅なるエンターテイメント」を演出する設計。
船内では毎日配布される「デイリープログラム」に多彩なアクティビティが記載されており、一人旅でも仲間を見つけやすい環境が整っている。参加型のプログラムも豊富だ。
人生で一度は体験してみては?
クイーンエリザベス号は、単なる移動手段ではなく、それ自体が目的地となる特別な空間だった。次回の日本発着クルーズでは、ぜひこの“洋上の英国”で非日常の船旅を体験してみてはいかがだろうか。きっと、陸上では味わえない特別な時間が待っているはずだ。