発売4日で350万台 Nintendo Switch 2“予測超えの初動”で、ゲーム制作はミドルレンジ主流の時代に?

ゲーム制作はミドルレンジ主流の時代に?

 6月5日、Nintendo Switch 2が発売となった。

 世界で1億5,000万台以上を売り上げたNintendo Switchの後継機として、発表から予約、発売と、ことあるごとに世を賑わしてきた同機。本稿では、Nintendo Switch 2の初動から、同機が業界にもたらしそうな変化について考えていく。

発売4日で350万台を販売。任天堂史上、最高の初動を記録したNintendo Switch 2

Nintendo Switch 2 紹介映像

 その存在が公に認められる以前から、業界の内外を問わず、注目を集めてきたNintendo Switch後継機の動向。前世代機が商業的に飛躍したことも影響し、Nintendo Switch 2は前例がないほどに、フリークたちの期待を一身に背負ってきた。ようやく待望のリリースを迎え、界隈はお祭り騒ぎの様相を呈している。発売から2週間が経過し、しだいに販売台数に関する情報も明らかとなってきた。

 任天堂は6月11日、Nintendo Switch 2の発売後4日間(~6月8日)の世界累計販売台数が350万台を突破したことを発表した。この数字は、同社が展開したゲーム専用機として過去最高の数字になるという。うち、国内市場向けには94万台が販売されたと言われている。参考までに関連する前世代機の数字を挙げると、発売初月の全世界販売台数が274万台、発売後3日間の国内販売台数が約33万台(推計)、初月の国内販売台数が約60万台だった。比較してわかるとおり、少なくとも初動に関しては、高い注目度に恥じない結果へとつながった形だ。

 ここには、Nintendo Switchの普及状況からくる影響もあったと推測する。後方互換機能の実装によって既存ユーザーが安心して購入に踏み切れたこと、任天堂がリスクをとって強気の生産体制を敷けたことなどは、その一例であると言えるだろう。

マリオカート ワールド [Nintendo Direct | Nintendo Switch 2]

 他方、任天堂は5月8日に行われた2025年3月期決算説明会のなかで、Nintendo Switch 2の年間販売計画台数を、Nintendo Switchと同水準の1,500万台に設定したことを明らかにしている。両者のあいだには、先述した前世代機の普及状況や、生産・販売をめぐる世界情勢、展開モデル、価格、発売時期など、さまざまな違いが存在するため、数字を単純比較はできないが、発表時には「やや消極的なのではないか」との声が上がっていた。実際に蓋を開けてみると、そうした指摘のとおり、大幅に上回る実績が見えてきたことになる。

 私は当時、執筆した記事のなかで、初年度におけるNintendo Switch 2の国内販売台数が(前世代機の実績と同様に推移すると仮定した数字である)350万台を割り込むのではないかと予測した。公式ストアの予約抽選に対して220万の応募があったことも話題となった同機だが、前世代機の数字には「国内で購入され、海外へと転売されたもの」もいくらか含まれると考えられたからだ。

 しかしながら、現状の数字を見るかぎり、この予測は不的中となる公算が大きくなった。発売後4日間と3日間という1日分の差を考慮しても、両者のあいだには、2倍以上の初動差が存在している。「生産するばするほど、販売台数も無制限に伸びていく」ということは考えにくいが、それでも初月に150万台、初年度に500万台といった数字が現実味を帯びてきたと言えるのではないか(もちろん相応の生産数が確保できればの話ではあるが)。

 こうした試算を世界市場にあてはめると、当初の1,500万台という計画は上方修正される可能性が高くなった。おなじく生産が追いつけばという前提にはなるが、2,000万台、2,500万台といった大台の突破も夢物語ではなくなったのではないか。このような流通が実現すれば、任天堂プラットフォームの現在の地位はより確固たるものとなる。ゲームハードの市場では、「任天堂とそれ以外」という構図がさらに色濃くなっていくのかもしれない。

Nintendo Switch 2の「販売計画台数」は妥当なのか? 実績と環境から考える“初代超え”の可能性

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Nintendo Switch 2“一人勝ち”で、ゲーム制作のメインストリームはミドルレンジへ

Nintendo Switch 2 のひみつ展 紹介映像

 任天堂体制の盤石化は、業界にどのような影響を与えるだろうか。もっともわかりやすいのは、ソフトウェアメーカーにとっての第一の選択肢が、任天堂プラットフォーム、ミドルレンジとなっていくことだ。直近のゲーム業界では、Nintendo Switchのスペック不足もあり、高いグラフィック性能を要するAAAタイトルを同機を避けて、あるいは時差で展開するケースが見受けられた。『ELDEN RING』や『ホグワーツ・レガシー』『メタファー:リファンタジオ』などはその一例だ。

 うち、『ELDEN RING』に関しては、2025年内にNintendo Switch 2への移植版として、ゲーム本編に有料DLCなどを同梱した『ELDEN RING Tarnished Edition』の発売を予定しており、『ホグワーツ・レガシー』に関しては、6月5日にグラフィック品質の向上、ロード時間の短縮を盛り込んだNintendo Switch 2版をリリースした。もしかすると、『メタファー・リファンタジオ』でも近い将来、オリジナル版やいずれ発売になると目されている完全版がNintendo Switch 2で展開されていくのかもしれない。今後は類似する性質を持つ作品の同機への移植が活発化していくはずだ。

ELDEN RING Tarnished Edition [Nintendo Direct | Nintendo Switch 2]

 こうした動向の延長として、各ソフトウェアメーカーの新作タイトルも、Nintendo Switch 2での展開を中心に考えられていく可能性がある。場合によっては、要求スペックがそこまで高くないタイトルを、同機のみで展開する流れがさらに強まっていくのではないか。結果として、極端にグラフィックにこだわったゲーム制作のトレンドが鈍化していくこともあり得るのかもしれない。

 このような傾向が強まることで、任天堂プラットフォーム“一人勝ち”の状況はさらに顕著となっていくだろう。「Nintendo Switch 2があれば、他のゲーム機を所有していなくても、多くのタイトルを遊べる」ということになれば、同機がさらなる求心力を持つことにもつながっていく。今回の予測を上回る初動によって、任天堂はそのような好循環のスタートラインに立ったという見方もできるのではないだろうか。

 こうした影響力の拡大は、発売日に購入することを様子見していた層の購買意欲の向上にも寄与するに違いない。再三にはなるが、生産さえ間に合うのならば、今後は加速度的に販売台数が伸びていく可能性もある。

 最高のスタートダッシュを切ったと言っても過言ではないNintendo Switch 2。その勢いはどこまで持続するだろうか。まさにいま、任天堂がゲーム史に残る前人未到の大記録を打ち立てようとしている。

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