HoYoverseが「崩壊」シリーズ最新作の映像を公開 既存作品との共存に向けたカギは他ジャンルとの融合か

 HoYoverseは5月3日、「崩壊」シリーズの新作にあたるタイトルの映像を公開した。

 『原神』や『崩壊:スターレイル』の台頭もあり、界隈ではその名を広く知られる存在となったHoYoverse。突如発表となった「崩壊」シリーズの新作は、どのようなタイトルとなるのだろうか。映像から見えてきた輪郭からそのゲーム性を考察する。

既存の人気キャラクターたちがモンスターを使役する?「崩壊」シリーズの新作が発表に

「スターレイルLIVE2025」公式録画完全版

 映像は、中国・上海で開催された『崩壊:スターレイル』の2周年ライブコンサート「スターレイルLIVE2025」のオンライン配信にて公開された。30秒ほどの短い内容(※)であったが、『崩壊:スターレイル』の刃、『崩壊3rd』のキアナと見られるキャラクターが、モンスターのようなものを使役して戦う姿が確認できた。HoYoverseによると、同タイトルは「崩壊」シリーズの新作になるという。

 HoYoverseは、「崩壊」シリーズや『原神』などの開発/発売元として知られるmiHoYOが展開するゲームブランドで、現時点では、2024年7月に配信となった『ゼンレスゾーンゼロ』がもっとも新しい作品となっている。今回、発表されたタイトルのリリース時期は未定だが、遅くとも数年内にはプレイヤーの元に届くと推測される。

 また、配信内では、『崩壊:スターレイル』と『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』のコラボレーションの開始時期が、2025年7月11日に決定したことも明らかとなった。同コラボをめぐっては、ストーリーの監修を、「Fate」シリーズのシナリオライティングで知られる奈須きのこ氏が手掛けることがすでに明かされていたが、今回、新たに『Fate/stay night』の人気キャラクター「セイバー」「アーチャー」が限定ガチャに登場することも発表となった。

映像に見た“フェーズの変化”。そのゲーム性がmiHoYoの事業に与える影響

 『崩壊:スターレイル』の2周年イベント開催にあわせてサプライズ発表された「崩壊」シリーズの新作は、いったいどのようなタイトルとなるのだろうか。先にも述べたとおり、映像内では、関連作品の人気キャラクターたちがモンスターのようなものを使役する様子が確認できた。おそらく同タイトルは、キャラクターがメインだったこれまでの作品とは異なり、モンスターで戦っていく、もしくはキャラクターとモンスターの掛け合わせを考えていくシステムを持つのだろう。

 仮に基本プレイ無料・アイテム課金型でリリースされるとすれば、こうした変化にともなって、ガチャの対象は、「キャラクター」と「装備」から「キャラクター」と「モンスター」、もしくは「モンスター」と別のなにかに置き換わっていく可能性がある。ファンにしてみれば、新たなアイコンに出会えること、それらを収集できることは、同タイトルのリリースを心待ちにするひとつの理由となるのかもしれない。

 他方、直近のゲームカルチャーを振り返ると、「モンスターを使役する」というキーワードからは、“ある作品”のヒットが連想される。その作品とは、ポケットペアによるオープンワールド・サバイバルクラフト『パルワールド』だ。

 2024年1月に早期アクセスをスタートさせた同作は、新規IPながらリリースからの24時間で200万本を販売。その後も順調に支持を拡大し、Steamプラットフォームにおける2024年の年間売上ランキングで首位を獲得すると、2025年2月には総プレイヤー数が3,200万人を突破した。ここには、『パルワールド』が主とするゲーム性への追い風も作用したと考えられる。裏を返せば、「モンスターを使役すること」や「オープンワールド」「サバイバルクラフト」といった要素こそが、直近のゲームカルチャーのトレンドのひとつ(「モンスター」に関しては直近にとどまらず、もはや定番化しているとも言えるかもしれないが)というわけだ。

 このことを踏まえると、「崩壊」シリーズ新作に同様の成分が盛り込まれる可能性もないとは言い切れない。特にオープンワールドに関しては、『原神』で培ったノウハウを活かすことができ、競合作品ともとらえられる『鳴潮』(KURO GAMES)に対抗できるひとつのアプローチであるとも言えるだろう。

 一方、サバイバルクラフトについても、部分的に取り入れられる可能性があるのではないか。たとえば、おなじく競合のひとつと考えられるHypergryphの『アークナイツ:エンドフィールド』は、アクションRPG作品でありながら、一部に工場自動化シミュレーションの要素を取り入れている。これと同程度の共存ならば、RPGをベースにしていると見られる「崩壊」シリーズ新作にも可能なのかもしれない。

 同タイトルをめぐり、オンライン配信にて映像を確認したファンからは、作品の乱立を危惧する声もあった。現状、HoYoverseからは、『崩壊3rd』や『崩壊:スターレイル』『原神』『ゼンレスゾーンゼロ』と、共通部分の少なくない作品が多数提供されている。ここに新たに「崩壊」シリーズ新作も加わることで、個々の作品における体験の密度の低下、ユーザーの分散、プレイヤー側のリソースの不足、(これらを経ての)サービスの先細りを引き起こすのではないかというものだ。しかしながら、「モンスターを使役する」「オープンワールド」「サバイバルクラフト」といったようなゲーム性で差別化が図れるのならば、こうした課題は解消するだろう。必ずしもこれらの要素である必要はないだろうが、共存にあたって、なんらかの工夫は求められていくのかもしれない。

【Palworld / パルワールド】PS5版 ローンチトレーラー【ポケットペア】

 また、映像で明らかとなった同タイトルの輪郭には、コンテンツ制作をめぐるHoYoverseの事業フェーズの変化もうかがえる。少なくともこれまでの作品では、一部例外こそあるものの、ひとつのシリーズとしてIPの強さを積み上げてきた印象があった。その反面、新作は、おなじく「崩壊」シリーズに分類されるという特徴を持つ一方で、「既存のアセットをミックスして再登場させる」「モンスターを使役する」という、過去の作品とは異なる一面も内包している。

 こうした姿勢を“攻め”ととらえるか、“守り”ととらえるかは、人によって意見がわかれるところだろう。「既存のアセットをミックスして再登場させる」という試みは、顧客の囲い込みと考えることもできる。対し、「モンスターを使役する」という新たなシステムの導入は、ゲーム性に新鮮さをもたらし、新たな顧客層を開拓するものであるとも言える。

 もし、同タイトルのゲーム性に「オープンワールド」や「サバイバルクラフト」、もしくはそれらに準ずる他ジャンルの要素が取り入れられるとなれば、挑戦的なスタンスは色濃くなるだろう。一方で、RPGの枠を出ることがなければ、「既存の顧客層に再度アプローチし、IPからの利益を最大化する」という、ある意味で保守的な取り組みとなるのかもしれない。仮に後者であったとするならば、ファンの懸念はより現実性を帯びることになる。場合によっては、市場のキープレイヤーであるmiHoYoの浮沈をわけるターニングポイントともなり得る可能性がある。

 「崩壊」シリーズ新作は、ファンの想像を良い意味で裏切るタイトルとなれるだろうか。今後の動向を注視したい。

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