FRUITS ZIPPERが届けた“超めでたい”青春の贈り物 サプライズがつなぐアイドルと人の物語『FRUITS ZIPPERの超めでたいさぷらいずTV』
第3話は、サプライズ企画の集大成とも言える“卒業式エンディング”が描かれた回である。担任の先生たちが、卒業生へのプレゼントとしてFRUITS ZIPPERとのダンスステージを用意し、文字通り“人生最高の式典”を演出する。
ダンスの選曲は「超めでたいソング ~こんなに幸せでいいのかな?」。テンポ感のある明るい楽曲を、教師たちが全力で踊る姿は、笑いを誘いつつも、どこか胸に迫るものがあった。生徒たちは最初こそ戸惑いながらも、やがて手拍子を始め、目を輝かせてステージを見つめる。アイドルと教師、生徒という異なる立場が“祝福”という一点で繋がったこの場面には、学校という場所の持つ本質的な優しさが滲み出ていた。
その後に続いた、メンバー一人ひとりによる卒業生へのメッセージは、単なる台詞の応酬ではなく、それぞれの人生経験から言葉を紡ぐ語りとなっていた。早瀬ノエルは「本当は大学に進むつもりだったが、夢を諦めきれなかった」と明かし、だからこそ「諦めずに(夢を)追いかけてほしい」と力強く語った。メンバーの誰もが、卒業を迎える若者たちと地続きの存在であり、同時代の空気を共有する“等身大の応援者”であることを、改めて感じさせるシーンだった。
そしてクライマックスは「旅立ちの日に」の合唱である。卒業生、先生、そしてFRUITS ZIPPERの7人が肩を並べ、共に声を重ねるその情景は感動的だったし、涙ぐみながら歌う生徒たちの横で、メンバーも同じように感情を抑えきれずに涙を流す姿が印象的だった。
第4話の舞台は、東京都内の高校ダンス部。コロナ禍で中止されていた送別会を復活させたいという依頼に応え、FRUITS ZIPPERはサプライズの準備に動き出す。依頼主はダンス部顧問の岩見先生。実は寿々歌の大ファンであり、かつて『天才てれびくん』で彼女の姿を見て以来の“ガチ勢”であることが明かされる。ファンとしての距離感を飛び越えて、人生の指針として彼女を見ていたという告白は、番組に一層のドラマ性を加えた。
サプライズ準備の中で起きたのが、松本かれんが自分たちの振りを忘れてしまうハプニング。それに対して鎮西寿々歌が「なんでやねん!」と明るく突っ込む場面もあった。
本番当日、後輩たちと仕掛けたサプライズダンスに3年生部員たちは文字通り絶句し、涙を流して喜ぶ。その反応に、舞台袖から見守っていた岩見先生が誰よりも先に号泣し、メンバーもまたもらい泣きする。この連鎖的な感情の高まりが、どんな演出よりも「伝わった」ことの証明であった。
これまでの4話を通じて明らかになったのは、FRUITS ZIPPERというグループが単なる“アイドル”という枠を超え、人の人生の節目に寄り添う“祝福者”としての役割を果たせる存在であるということだ。もちろん、彼女たちはプロであり、華やかなパフォーマンスを提供する側にいる。しかし、その奥には、不安も迷いも抱えながら、それでも前に進もうとする普通の人間としての姿も確かにあった。
サプライズに挑む過程で垣間見せた素の表情や、人の話に本気で耳を傾け、涙を流し、悩みに寄り添うその姿に、視聴者はきっと“自分たちと同じ地平に立っている”という感覚を持ったはずだ。祝われる側と祝う側という一方通行の関係性ではなく、想いを共有し合う共犯者としての距離感こそが、FRUITS ZIPPERの最大の魅力であると感じさせられた。
『超めでたいさぷらいずTV』は、そのキラキラした表層の奥に、今の時代における「アイドル」のあり方と、「人と人のあたたかい接点」を静かに浮かび上がらせる番組だった。そして、そのサプライズの余韻は、いつまでも心に残り続けるだろう。
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