レタッチなしでも大満足! 小さなボディなのに本格派のフルサイズミラーレス『LUMIX S9』と九州旅
日々エンタメ×テクノロジーについて発信するリアルサウンドテック編集部。腕利きの執筆陣による読み物も好評ですが、一方で若年層の読者も多い媒体として、参考にしているのは現役大学生たちの声。連載「Z世代のリアルレビュー」では、編集部にインターンスタッフとして勤務する現役大学生ライターの視点から、毎週さまざまなトピックをお届け。今週は大学生活最後の春休みを満喫している中安がお送りします。
カメラでの撮影が趣味の筆者が今回使ってみたのは、Panasonicの『LUMIX S9』。昨年(2024年)登場し、コンパクトなサイズ感のフルサイズミラーレスとして話題となったカメラを片手に九州旅行へと繰り出しました。
今回は『LUMIX S9』を使ってみた正直な感想と、このカメラの使いやすいポイントや考慮すべき点について、実際の写真とともに紹介していきます。
『LUMIX S9』の第一印象
まず触ってみた第一印象としては、とにかく「コンパクト」。約126(幅)×73.9(高さ)×46.7(奥行)mmの大きさとまた、本体の重量も約486gと軽いため、使うレンズにもよりますが、他のミラーレスカメラと比較しても、収納しやすく写真を撮っていても苦にならない重さになっています。
見た目は、どこか懐かしさを感じさせるレトロでおしゃれな仕上がり。今回はキャメルオレンジの貼り革でしたが、なんと貼り革には7種類ものカラーバリエーションがあります。まるでライカのようなレトロな四角いボディと7種類から選べるカラーバリエーションはどの層の方でも使いたくなるデザインではないでしょうか。
また、本機の特徴としてファインダーやストロボ、ハンドグリップがないことが挙げられます。他の一眼やミラーレスカメラを使ったことのある人にとっては、少し違和感があり、かく言う筆者も最初は違和感を感じていました。特にハンドグリップがないことで「持ちづらいのではないか……?」と懸念していましたが、親指の部分が革になっていて滑りづらくなっており、出っ張りもあるので、そこまで持ちづらいと感じることはなかったです。また、ファインダーがないことに関しては、スマホでの撮影に慣れている人が多いため、こちらもそこまで問題ではなさそうです。
- ハンドグリップがないので、横から見てもフラット。また、Type-Cで充電できるのもポイント。
- 親指部分が革のため、滑りにくくなっている。
撮影をしてみて気づいたこと
撮影をしてみて最初に感じたことは、モニターに写っている明るさと実際に撮った写真の明るさが異なるということです。モニターでは明るさばっちりなのに、撮った写真を見てみると暗くなっており、最初はなんでこうなるのかわからず、困惑してしまいました。調べてみると「常時プレビュー」がoffになっていることが原因でした。これはLUMIX特有の仕様らしく、LUMIXのカメラを初めて使う方は気を付けてほしいポイントです。
使用感としては、モニターの右側にあるボタンは一目で機能がわかりやすく、コントロールダイヤルは十字キーとしても使え、ダイヤルとして回すこともできるので使いやすいです。他のメーカーのカメラでは十字キーを何回も押さなければならないものもありますが、本機はダイヤルを回すだけで上下のメニューに簡単に移動できます。さらに、撮った写真をダイヤルを回すことでズームして確認できるのも嬉しいポイントです。
シャッターは電子シャッターが採用されているため、慣れていない間は連写になりやすいと感じました。この点も慣れれば、連写になることは少なくなり、電子シャッターによる静音のメリットを感じられます。また、メカシャッターではないためフリッカー(蛍光灯やLED照明の明滅によって写真に縞模様のような色ムラができてしまう現象)や動体歪み(動く被写体に対して高速シャッターを切った際に若干の歪みが起きる)が生じることがありますが、電子シャッターによりコンパクトなサイズ感が実現している点を考えるとメリットの方が大きいのではないかと思いました。
一番の注目ポイントは“リアルタイムLUT”
本機の大きな特徴として「リアルタイムLUT」があります。「LUT」とは「Look Up Table」の略称で、写真加工アプリのフィルターのようなものを指します。本来は撮影後のレタッチ(編集)として使うものでしたが、これを「カメラの中で、撮影する時に適用しよう」というのが、LUMIXで搭載している「リアルタイムLUT」なんです。
カメラを使い始めた際によく陥ることとして「思っていたよりキレイな写真が撮れない」という問題があります。それはスマホで撮影した写真はスマホ内で明るさやコントラスト、彩度などが編集されているので撮った瞬間に綺麗な写真になるのに対して、カメラは撮った光景をそのまま写し出すので、レタッチをしなければ思い描いた綺麗な写真にはならないことが要因です。
しかし、このカメラでは「リアルタイムLUT」によって、モニター上にLUTが適用された色味で写るので、撮った瞬間に綺麗で味のある写真となります。操作もモニターの上部にある「LUT」ボタンを押すだけで簡単にできるので、いろんなLUTを試してみて一番気に入った色味で撮れるんです。
LUTを変えるだけでガラリと雰囲気の異なるテイストの写真になるので、被写体に合わせて選びやすいですし、普段はしないような雰囲気の写真にも挑戦しやすくなっています。
写真は熊本城。画面上でこれだけ差が出ると撮っていて楽しいんです……!
夜でもここまで違いが出ます。ちなみに筆者は右下が好きです。
そんなLUTは、専用アプリ「LUMIX Lab」で様々な種類をダウンロードすることができます。中には有名写真家が作ったLUTもあり、撮った写真をアプリ上でレタッチすると、その設定を自分のLUTとして作成することもできます。アプリを使うことで写真の転送のほか、LUTの転送もできるのです。
これを無料で使えるのは、太っ腹では?
また、LUTとは別に16種類ものフォトスタイルがあり、中でも注目なのは「LEICAモノクローム」はあのライカの色味を再現したもの。この価格の機種でライカのようなハイライトの明るさと深みのあるコントラストを表現できるのも手に取る理由になりますよね。
全然関係ないですが、宣材写真がモノクロの芸能人ってだいたいカッコいいですよね。
さらに、LUTを重ね合わせてマイフォトスタイルとして記録することもできます。その際にLUTの濃度や細かな設定もできるので、「この2つのLUTの中間色を出したいな」という場合も対応できるのです。今回筆者も2つのマイフォトスタイルを作成し、メインで使っていました。
その他の嬉しいポイントと考慮すべき点
今回筆者は『LUMIX S 35mm F1.8』の単焦点レンズを使っていたのですが、単焦点レンズにするとボケ感を出しやすい半面、ズームができないという欠点があります。そんな時に使えるのが「クロップズーム」という機能です。このクロップズームは、モニター内をタップ(または長押し)するだけでズームの倍率が変化し、単焦点レンズでも画質をそのままに約3倍までズームができるんです。
お土産で買ってきた名物『やまやの明太子』。パッケージがかわいい。
また、「ハイブリッドズーム」もあり、こちらはズームレンズにのみ使える望遠効果を高める機能です。ズームレンズの操作だけで光学ズームとクロップズームを同時に使うことによって、約3倍のズームができます。この2つの機能を使うことで、持ち運ぶレンズの数を減らすことができます。カメラ本体が軽いだけではなく、持ち運ぶレンズの数を減らせるのはとても嬉しいポイントです!(カメラの機材って結構重いんです……)
その他にも、マニュアルフォーカス時にモニター上に拡大画面が表示されるので、撮った後に「ピントがあってない…」と嘆く心配がなくなります。意外とマニュアルフォーカスで撮ったときに、後で見返すとピントが被写体にうまく合っていないことがあるので、確実にピントを合わせられる拡大画面があるのは使いやすいと感じました。
今回一緒に旅行に行った友達は元カメラマンなんですが、そんな彼が「モニターの画質がいいね」と言っていました。本機のモニターは184万ドットで他のカメラに比べても高精細。ファインダーがないからこそ、綺麗な画質のモニターなのは嬉しく、撮った写真を見返す際にもモニターに綺麗に写っているとテンションが上がります。
一方、考慮すべき点としては、ストロボが使えないということです。筆者は今回、夜間の撮影もしたのですが、どうしてもシャッタースピードやF値、ISO感度だけでは明るさが足りないこともあり、後ろからスマホのライトで照らしたりしていました(笑)。また、ストロボを使った撮影テクニックは使えないという点も本格的にポートレートを撮りたい人などにとっては懸念点になり得ます。また、個人的に夜間だとオートフォーカスが合いづらいなとも感じました。
初心者に優しく、経験者でも楽しめる
そんな本機は、初心者にとってはまるでデジカメのように簡単に使え、リアルタイムLUTによって撮った瞬間に映える写真となる使いやすいカメラとなっています。そして経験者にとっても、簡単に自分の色合いが表現でき、ライカのようなモノクロも撮れる小型なフルサイズのサブ機として重宝されるものなのではないでしょうか。
価格もレンズキットで23万4630円(税込)とフルサイズミラーレスとしては手に取りやすい価格となっています。近年ではスマホでも高画質な写真が撮れるようになってはいますが、カメラならではの微細な明暗をも捉える圧倒的な画質の良さや被写体と背景とのボケ感は、一度使ってみるとトリコになること間違いなしです。スマホよりも綺麗で味のある写真を『LUMIX S9』で撮ってみませんか?