ゲームはもちろん、音楽鑑賞用としても一級品のDACアンプ Fosi Audio『K7』を先行レビュー

解像度の高い音質で、音楽鑑賞とゲーミングの両面をしっかりとサポート

 肝心の音質についても、まずは音楽鑑賞面で捉えると、良い意味で「ゲーミング」という言葉を意識する必要がないくらいに丁寧かつ自然に引き上げてくれるという印象だ。「無駄に低音が強い」といった“余計な味付け”は一切施されておらず、フラットなままに解像度の上がったサウンドを楽しむことができる。

 本稿の執筆期間中は、主にPCスピーカー(Bose『Companion 20 multimedia speaker system』)との間に『K7』を挟んで使用していたのだが、ポップスからダンス・ミュージック、ロック、ゲーム音楽に至るまで、どのジャンルでも物足りなさを感じることはなかった。

 特に印象的なのは解像度の高さであり、情報量の多い楽曲でも各楽器の音色をしっかりと描き分けることで、(結果として)より立体的で広がりのある、スッキリとした音像を作り上げているように感じられる。試しに『K7』を外してみると、音同士がぶつかってしまい、どこかグチャッとした感じになってしまったので、決して気のせいではないだろう。

 たとえば、Porter Robinsonの「Cheerleader」ではシャワーのように鳴り響くロック・サウンドの層と、強靭なシンセサイザーの音色がしっかりと描き分けられているし、Beyoncéの「BLACKBIRD」ではボーカルと楽器の位相を細かな音まで的確に表現することで、まるで目の前で歌われているかのような感覚に浸ることができる。

 また、好みの味付けをしたい場合には、トレブル(高音域)とベース(低音域)を±7段階まで調整できるようになっている。2万円台という値段を踏まえても、もし本製品を音楽鑑賞目的に購入したとしても、きっと十分に満足できるであろうコストパフォーマンスを発揮しているのではないだろうか。

 つづいてゲーミング面での評価だが、前述した「解像度の高さ」は、ゲームプレイにおいても抜群の効果を発揮してくれる。細かな音色までしっかりと捉えながら、位相を的確に表現してくれる『K7』の音質は、特に敵の位置を正確に捉える必要のあるタイトルにおいて威力を発揮する。

 本稿執筆中はよく『Escape from Tarkov』をプレイしていたのだが、まさに「音で状況を察知できなければ死ぬ」というシビアなバランスを誇る同作との相性は抜群である。これまでは「あの方向から足音が聞こえる」という程度だった一つの音に対する情報量が、「あれくらいの距離で、あの高さから足音が聞こえる」というくらいまで解像度が上がったことで、ゲームプレイに大きく役立てることができた。

 遅延に関しても(Bluetoothを含め)、気になる場面は特になく、一瞬の判断力が求められる場面でもしっかりと反応してくれる。これは『VALORANT』や『Apex Legends』といったスピード感のあるタイトルにおいても同様であり、幅広いタイトルで活躍してくれるのではないだろうか。

解像度の高さはボイスチャットやアクション、アドベンチャー作品においても威力を発揮

 また、友人とボイスチャットをしながらプレイするという場面でも、音同士がぶつかりあわないという『K7』らしい音質が効果を発揮する。ゲームの音とマイクからの音をしっかりと描き分けてくれるため、普段よりもボイチャが聞き取りやすくなるのだ。

 『Marvel Rivals』をプレイした際には、大量のキャラクターボイスやスキルの発動音が入り乱れるカオスの中でも、しっかりとボイチャの音を聞き取ることができた。マイクに関しては前述の通り、製品のノブやボタンを操作することでマイクの音量調整やミュートができるようになっているため、いわゆるオーディオインターフェースとしても非常に便利である(ただし、ノブ全体を押す必要があるミュート機能に関しては、やや押しづらいところがあるため、欲を言えば独立したボタンとして用意してほしかったとは思う)。

 また、こうした「声の聞き取りやすさ」は、『DEATH STRANDING』のようなカットシーンの充実したシングルプレイの作品においても同様に効果を発揮してくれる。eスポーツ系はもちろん、普段マルチプレイをしないというゲーマーにとっても、きっと役に立つはずだ。

 このように、Fosi Audio『K7』は、持ち前の解像度の高さによって、音楽鑑賞はもちろん、ゲーミングオーディオデバイスとしても優れた効果を発揮してくれるという、コストパフォーマンスに優れた一品だ。

 洗練されたデザインやコンパクトなサイズ感、幅広い入出力対応などによって使い勝手も非常に良く、(オーディオ製品としては平均的な部類に入る)2万円台という価格も相まって、「ゲーミングDACアンプ」という言葉のインパクトとは裏腹に、万人にオススメできる極めて良質なデバイスとなっている。

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