スタンミが明かす“俳優”としての側面 岩井秀人も「“自分を差し出すこと”が本能的にできる」と絶賛
作家・演出家・俳優として活躍する岩井秀人がプロデュースする、“初見の台本読み合わせライブ”『いきなり本読み!』。台本は出演者が舞台に上がるまで一切非公開、そこからその場で演出指導を交えたり、ときには観客が参加したりしながらおこなわれるライブだ。
昨年8月、東京・日本橋の三越劇場で『いきなり本読み!in三越劇場』」開催された。三谷幸喜が監督した名作『ラヂオの時間』の“アドリブだらけのドタバタ劇”を目の前で披露するような、各出演者の底力を存分に楽しめる本ライブは、この日も大きな盛り上がりを見せた。
この日の出演者に名を連ねたのは、前述した『ラヂオの時間』にも出演した名優・近藤芳正、元アイドルで現在は俳優・小説家・YouTuberとマルチに活動する松井玲奈、元BiSHで現在は俳優として活躍する加藤千尋、そしてスガワラユウヤ名義でモデルとしても活動するストリーマー・スタンミの4名。
バラエティに富む出演者のなかで、ひときわ異彩を放ったのは、スタンミだろう。スタンミは俳優を志し、さまざまなワークショップに通うなかで岩井と出会い、出演が決まったという。今回、リアルサウンド編集部は公演終了直後のふたりへ話を伺った。異色の経歴から『いきなり本読み!』への大抜擢、本番を終えたばかりの彼は何を感じ、学び取ったのか。映像配信を記念して、インタビューを公開する。
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「変わった奴が来たな」 スタンミと岩井秀人の初対面
——まずは本日の『いきなり本読み!』、お疲れ様でした。早速ですが、今日ご出演されての率直な感想と、どんな準備をされてきたのかをお聞かせください。
スタンミ:準備のお話ですが、今回のお話をいただいたのが開催の3週間前とかなり急だったんです。もちろん、それが面白いところなので、自分の中でできる準備は全部してきたつもりです。でも、その準備というのは、事前に練習をしておくとか、イメージを固めておくとか、そういうことではなくて「もう、いっそ放っておこう」というメンタルを作ることで(笑)。
結果的には、本当に楽しく……なんか、インタビューで「楽しかった」と言うと、浅く聞こえちゃいますよね(笑)。でも本当に楽しくて、これが伝わればいいなって思っています。
——見ていても、スタンミさんが楽しんでいるのは伝わってきましたよ。後半につれてどんどんノリノリになっていきましたよね。
スタンミ:ちょっと行き過ぎちゃったところもあるかもしれません(笑)。
岩井秀人:それはない! 大丈夫だよ。
スタンミ:本当ですか(笑)? そうですね、楽しかった証拠になっていると思うし、隣にいた松井(玲奈)さんがもう、やっぱりさすがだなぁ、と思って。控え室では「緊張してる」みたいな感じでおっしゃっていたんですけど、いざ舞台に出たらもう、ドッシリ構えていらっしゃるし、声も通るしお芝居も上手だし。
しかもエンタメとして場を成立させる能力もすごくて、うまくいかなかった時に「あーもう!」って悔しがってみせる、みたいなのも、お客さんが見ていて楽しいじゃないですか。そういう部分で、羨ましさすらありましたね。「僕もああいう人たちに続いていかないとな」と、勇気をいただいた気持ちです。
——岩井さんはいかがでしたか? 今回はかなり異色のメンツというか、「まさか『いきなり本読み!』にスタンミさんが出るとは」と思っていたのですが……。
岩井:実は今回の企画、スタンミくんをキャスティングするところから始まったんですよ。3週間前に(笑)。
スタンミ:えー!? そうだったんですか?
岩井:これ、言っていいのかな。実は今回の企画、キャスティングが難航して無くなるかもしれなかったんですよ(笑)。
スタンミ:え!?
岩井:そう(笑)。でも僕、そういううまく行かない時ほど「これは、絶対何か面白いことが起きるな」って思うタイプなんですよ。それで「どうしよう、どうしよう」と思いつつ、内心ニマニマしていたら、その時にスタンミくんが僕のワークショップに来てくれたんですよ。
スタンミ:あのワークショップがそうだったんですか……そんな噛み合うこと、あるんですね(笑)。
岩井:最初は僕も配信者だということを知らなくて、なんかすごい変な、特殊な人が来たなと思っていて。その時はまだ「スタンミくん」じゃなくて「菅原くん」(※スタンミの本名)として認識してたからさ。
スタンミ:そのワークショップの日、1ページ目の1発目の台詞を読むのが僕だったんですよ。そうしたら、終わった後に「今日は変な人も来たねー」って言われましたね(笑)。
岩井:終わってから直接話して、そこで初めて「実は僕、配信者をしていて……」って教えてもらってね。で、それを聞いたときに「ん、もしかしてコレは」と引っかかりがあったわけです。頭の中にあった台本と当てはめてみたら、絶対面白いことになると気が付いて。そこからはポンポンポンと、他の俳優さんも出ていただけることになったんですが、これは印象深かった出来事ですね。
あとは、『いきなり本読み!』全体にかかわることで言うと、これまでは俳優業を軸にした方々にご出演いただいていたんですが、少し違う風を取り入れてみたかったところで、それが向こうからやってきてくれた、というのもあります。
しかも、配信者でありながら、俳優もやるという、ちょうどいいバランスの人が来てくれたのも良かったですし、スタンミくんは見るからに勇敢なのも良い(笑)。「俳優としてこれからやっていきたい」ってワークショップに来てくれて、今回声をかけたときも「あ、出まーす!」って二つ返事で快諾してくれましたからね。
スタンミ:一応言っておきますけど、けっして軽い気持ちでお返事した訳じゃないですからね(笑)。テンションが上がりすぎてしまったのと、もともとフットワークが軽い方というだけですよ。
岩井:わかる。僕も軽い方だし、その方が面白いと思っているから。
——スタンミさんはもともと外配信だったり、最近では『VRChat』だったり、未知の世界にもガンガン飛び込んでいくタイプですよね。
岩井:そういう意味でも、本当に勇敢だよね。今日の舞台も、やっている途中でどんどん勇敢になって、ステップアップしたよね。
スタンミ:ありがとうございます(笑)。公演の最初はいろんなものが「足りてないなー!」と思っていましたよ。でも、それを修正していくのが『いきなり本読み!』の醍醐味でもあるなと思って、マイナスに思わずにどんどん修正していこうと頑張りました。