Kan Sanoに聞く“スピーカーで音楽を聴く”ことの良さ GenelecのG One RAWフィニッシュは「劇的にリスニング環境を変える」
「こういうスピーカーが出てきたらと思っていたので嬉しかった」環境に配慮したRAWフィニッシュモデルの魅力
――今回RAWフィニッシュの『G One』を実際に使われてみて、いかがでしたか?
Kan Sano:自分が普段使っているものよりコンパクトなんですけど、すごくパワーがあることにまずびっくりしました。あとはこのサイズ感が影響しているのか、結構音がギュッとしてるというか、中域から低域にパワーがあって密度が濃い印象がありました。
僕はGenelecのシンプルでちょっと丸みのあるフォルムもすごく好きなんですけど、その感じも健在で。スピーカーのボディーにリサイクルアルミを使っているのもポイントで、こういう環境にも配慮したスピーカーが出てきたらいいなと思っていたので、嬉しかったですね。あとは僕の中で良いスピーカーは重いと思っているところがあるので、小さいけど結構重さがあるのも安心です。
ーーちょっと丸みのあるフォルムになっているのは、音が回り込んでしまうことによって起きる音の濁りの発生をできるだけ抑えて、より忠実な音を再生をするための工夫なんです。また、スピーカーがどこまでパワフルな音を再生できるのかは、スピーカーの内部スペースの大きさも重要です。Genelecは強度の高いリサイクルアルミニウムを使うことで、内部により大きなスペースが確保でき、だからこそG Oneはこのサイズでもローエンドまでしっかりと、しかもタイトに再生されるんです。
Kan Sano:音のタイトさ、クリアさはGenelecらしさだと思うので、そこが健在で嬉しいです。僕はプロデュースの仕事もしますし、そういう仕事には客観性が必要なので、客観的に聴けることも嬉しいですね。
――自分の名義で自分で作る音楽とプロデュースをする楽曲では、使う頭や耳は異なる感覚なんですか?
Kan Sano:自分の曲を作るときもある種自分をプロデュースしているといえるので、後ろにもう一人の自分がいて、それが常に自分を見ている感覚ではありますね。
――音以外の機能性の面ではいかがですか?
Kan Sano:本体下にIso-Pod™ スタンドがついていて、簡単に向きを変えられるのはいいなと思いました。かゆいところにも手が届く感じがして、便利ですね。あとはサステナビリティであったり環境負荷が少ないものを使っていこうという大きな流れがある中で、音響機器や楽器は中々そっちにシフトしていかないなと思っていたので、リサイクルアルミニウムを使っているということもすごく好感が持てます。
――普段から買うものなども、サステナビリティを考えているかどうかで選ぶことが多いですか?
Kan Sano:そうですね。特に服や食品は以前に比べてそういう選択肢が増えているので、自分で調べて選んでいます。ただ楽器や音響機器ってまだそういう流れがあまりないですよね。Genelecはフィンランドのブランドだから国自体がすごく進んでいると思いますが、こういうものがもっと増えたら嬉しいなと思います。ちなみに、このスピーカーって、どういう風にこの質感になっているんですか? 塗装はしていないということなんですよね。
ーー溶かしたリサイクルアルミニウムを成形したあと、通常行っている塗装の工程をあえて省いています。そのため、一台として同じ模様が存在しない独特の風合いとなるんです。RAWフィニッシュはデザイン性だけでなく、あえて塗装をしないことでより地球に優し生産工程となっているのも特徴です。
Kan Sano:Genelecならではのシンプルさは健在なので、いろんな家具や部屋の環境にもマッチしそうですね。
――リスナーの方にもGenelecのスピーカーを使って聴いてほしいというお話もありましたが、『G One』は価格帯的にも一般の方でも少し頑張れば手の届く価格帯でもあるのかなと思います。リスナーがこういったスピーカーを使って生活の中で音楽を聴ける価値についてどう考えますか?
Kan Sano:やっぱり作り手としては、自分が作った音楽をいい音で聴いてほしいという思いは当然あって。今はスマホで聴く人が多いですが、それだけで聴いた気になられるのはちょっと悔しいというか、残念な気持ちもあるんです。音楽を聴くのはひとつの体験なので、その体験の密度や充実度を上げていくときに、機材選びって大事だなと思いますね。それこそ僕もいつもGenelecのスピーカーを使っているので、リスナーの方も使ってくれることによって、自分がどういう音を聴いて作っているのかをより理解してもらえるんじゃないかなと思います。大きさも、6畳前後の部屋で聴くのにすごく良いんじゃないかと思いますし。スピーカーに対してどの位置で聴くかも大事なので、その部屋の中で自分がよくいる場所で一番いい感じに聴こえるようにセッティングするといいと思います。
――リリースしたライブアルバムも含め、このスピーカーだったらこういう音で聴いてみたらいいのではというおすすめはありますか?
Kan Sano:最近K-POPがすごく好きで聴いているんですけど、K-POPってトラックの精度がすごく上がっていて。結構みんな低音をしっかり鳴らすので、スマホで終わらせずにぜひこういうスピーカーで聴いて低音を感じてほしいです。あとはレコードも、もし機会があれば聴いてもらえたら嬉しいですね。僕はジャズが好きなので、マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスをおすすめします。レコードで聴くというのもそうですけど、少し機材のグレードを上げるだけでも結構変わると思うので、まだやっていない人は試してほしいです。数万円とか、少し価格帯を上げるだけで、劇的にリスニング環境が変わるんですから。
■製品情報
Genelec ホーム向けシリーズ
詳細:https://www.genelec.jp/home-speakers/
今回レビューした最もコンパクトな『Genelec G One』
詳細:https://www.genelec.jp/g-series/g-one/
Kan Sano愛用モデル『Genelec 8020DPM』
詳細:https://www.genelec.jp/active-2-way-studio-monitors/8020d/
■リリース情報
Kan Sano『Live in Tokyo 2023(ライブ イン トウキョウ ニセンニジュウサン)』
リリース日:2024年11月27日(水)
形態: ストリーミング / ダウンロード
レーベル:origami PRODUCTIONS
URL:https://kansano.lnk.to/LiveinTokyo2023
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