フィッシャーズ、『東京2025デフリンピック』1年前イベント登壇 きこえない世界で痛感した“世界一の凄さ”

フィッシャーズ、単独インタビュー “きこえない世界”の率直な感想

ーー今回のイベントではデフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手と長谷山優美選手と一緒に登壇されましたが、共演して感じた世界トップレベルのアスリートのすごさを教えてください。

ンダホ:気配りがすごい。視野といっていいのかわからないですけど、守備範囲がすごく広くて、人としてすごく素敵な方でした。


シルクロード

シルクロード:僕とかだったら目が疲れるとか、意識の配分だけで疲れてしまうことを平然とやってのけてるんですよ。視覚情報が人より多いのに処理が早いというのを、近くにいて感じました。

モトキ:舞台上で道具をはけるときに一緒に手伝ったんですけど、手話で「ありがとうございます」と伝えようとしたら、その動きをちゃんとみていらっしゃって。そういう一瞬の動きが全部みえていて、すごいなと思いましたね。

マサイ:常に周りを見ていて、アンテナがすごい。

シルクロード:対応を予測しているみたいな。“心の目”があるような感じがしました。

ーー中田選手のジェスチャーゲームもすごかったですよね。

シルクロード:「負けないぞ」というオーラすごかったですよ。人前でジェスチャーするのはちょっと恥ずかしいと思うんですけど、それをまったく感じなかったですね。勝つことに執着しているあの感じが、アスリートだなと思いました。

マサイ

マサイ:本当に“アスリート”だったね。見ている側だったけど、楽しそうだった。

モトキ:僕は回答者だったんですけど、ちょっとだけ中田選手のジェスチャーを参考にしつつ答えを書いていました(笑)。あまりにキレがよくて。

ーー皆さんいつもサービス精神旺盛で、盛り上げ上手ですけど、引けを取らないくらい選手のおふたりもすごかったですよね。選手としてはもちろんですが、人としての魅力も感じました。

ンダホ

ンダホ:だから世界一なんでしょうね。

ザカオ:ただバレーがうまいだけじゃ、絶対無理だよね。

モトキ:普段の姿勢から世界を感じますね。

ーーデフバレーボール女子日本代表の皆さんと一緒に動画も撮影されていますが、撮影時にも選手の方々の人柄や意識の高さを感じた出来事はありましたか?

シルクロード:一つひとつに感じましたね。バレーボールをやったことのないメンバーが困っていたら、すごくわかりやすく教えてくれましたし、一緒にコートに入って、デフバレーを体験させてもらうときには、わかりやすい手話とオリジナルのサインで身振り手振りコミュニケーションをとってくれたり。

ザカオ

ザカオ:ジェスチャーのプロだよね。

ーーデフバレーを体験してみて、普段バレーボールやスポーツをする時に比べて難しさはありましたか?

シルクロード:単純に怖かったですね。音がなくて、みえている情報がすべてなんで、めちゃくちゃ不安でした。スパイクを打つ時のインパクトやどのくらいの強さでボールがくるのかが分からないなかで、フェイス・トゥ・フェイス、目と目で会話しているので、その分、心のつながりが強い感じがしましたね。

ンダホ:プレイヤー同士の距離感が近いからこそ、ちゃんと連携ができていないと絶対できない。ケガもしちゃうし、成立もしないから。

マサイ:それこそ動画を撮影した時、選手の皆さんたちは常に自分の周りをすべて把握している感じがしたんですよ。1対1で何回も繰り返して動きを確認するというやり方なんですけど、僕が動きを確認しているまさにこの瞬間、この間にボールが飛んでくると、動き出すまでに時間がかかるんです。そういう難しさはありました。

ーー皆さんは中学生のときから一緒にいて、チームワークも抜群ですが、選手の皆さんの心のつながりはそれ以上でしたか?

シルクロード:僕らより意識配分が絶対的に上なので、心のつながりもすごい。僕らの場合、僕らのなかでは通じるけど、僕ら以外では通じないものが多いんです。

ザカオ:向こうは全員がわかるようになっているから、そこがすごいよね。

シルクロード:手話は勉強が追いついてないところもあったんですけど、コートに入ったら手話だけじゃなく、ボディランゲージも使って会話してくれている時点で、意識が違うなと思いました。普通は、「手話でわかってよ」と思うじゃないですか。たとえば、海外で言葉がわからないときに、日本語でしゃべりますよね。僕らに合わせてくれている感じがして、配慮を感じました。

ンダホ:余裕が違いましたね。

ーーきこえない世界を体験するためのヘッドギアの着け心地はどうでしたか?

シルクロード:いま、この空間で何が起きているかというのはわからないんですよ。ぼやぁっと、金属音がボーンって鳴っているような。水中のけっこう深いところにいる感覚で、1対1で話しかけてギリギリわかるくらいです。

ンダホ:その状況で、瞬時に体を動かさなきゃいけないんですけど、普通、動かないですよね。判断がすごく早いんですよ。

シルクロード:聴覚レベルによっても、ぼんやり聞こえている方、まったく聞こえない方がいると思うんです。すごいなと思ったのは、レシーブを拾う人が両手をすごく高く上げて、「あー」と叫んで、「私、行くよ」と合図していたんですよ。しかもスパイクが飛んできている1秒の間にその動きを全部やって、全員に伝わるようにやっていたので驚きました。

ーー驚くべき処理速度ですね。皆さんは今回のイベントのほか、9月に開催された「 TOKYO FORWARD 2025 『東京2025世界陸上 1 Year To Go! 』」にも出演されましたよね。デフリンピックと世界陸上の東京開催において、フィッシャーズは認知拡大に一役を買っていますが、そういう大きな役を担われることに対してどう思っていらっしゃいますか?

シルクロード:僕らは「知らないものを知ってみたい」という気持ちが強いグループなんです。僕らの場合は、新しいことを知りたいといえば、すぐに知れますけど、メディアに出ない限り、新しいことについて知らない人もいると思うんです。僕らみたいに、いろんなことを知りたいという方は世の中に絶対いるはずなので、僕らが関わることで、知りたいと思っている人の知的好奇心を満たすことができたらいいなと思います。

マサイ:届けられるならね、すべての人に届けたいよね。

ンダホ:何年か前、トランポリンの動画を出した時に、その動画をみてトランポリン施設で働きはじめた方や選手になられた方がいたんです。今日みたいに僕らが出ることで、皆さんとイベントとの出会いにもなれたらいいなと思いますし、競技との出会いというのにも一役買えるんじゃないかなと思っています。

ーー競技人口増加に寄与していますね。

ンダホ:このイベントで、「陸上選手になりました」という人も今後出てくるかもしれないから、やり続けたいよね。

モトキ:皆んなどこかで知るきっかけを求めているから、そのきっかけになれたらいいよね。

ザカオ:コミュニケーションの取り方は無限大だなと、この活動でめちゃくちゃ感じましたね。どうしても、ちゃんと喋れるのかなとか躊躇してしまう場面はあるじゃないですか。でも、こういうイベントでコミュニケーションについてみんなに広められたら、そういうこともなくなっていくと思うので、今後もこういう活動をしていきたいです。

ーー今回のイベントは、コミュニケーションの奥深さを学んだイベントにもなりましたが、デフアスリートの方との共演や動画撮影を通して、日々の生活で意識が変わったことはありますか?

シルクロード:アイコンタクトを試みているんですけど、うまくいかない(笑)。現場で、「この場面、こうしてほしいな」という思いはうまく伝わらないですね。

ザカオ:日々、成長中だね。

ンダホ:トライ&エラー&エラーぐらい。ちょっとエラーが多いです(笑)。

シルクロード:活動上、僕は最後に意見するタイプなんですよ。みんなで話し合いをしている時は最後まで口は出さないんですけど、この感じが伝わっていないなと。僕らは意思疎通は言葉にした方が早いんですけど、それも環境によって違うじゃないですか。そこについてもいろいろと学ぶ必要があるなと思いましたよね。

モトキ

モトキ:周りをみて、全体とコミュニケーションを取るのと、1対1でのコミュニケーションを繰り返すのとは違うんだなと思いました。話し方もそうですけど、僕らは使い慣れた方法に頼りがちなところがあるんですよね。デフの選手の方をみて、新しいコミュニケーションの仕方に触れられて、視野が広がった感じがします。こういう活動をしないと、そのことにも気付けなかったので、僕らとしても成長のきっかけになったかなと思います。

マサイ:人に物事を伝えるのがすごく下手なので、そういう意味でもボディーランゲージを鍛えるというのは役立つんですよね。手話とかそれっぽい動きをすると、デフの方たちには大体通じていて、ラフに意思疎通できるのはいいなと思いました。その様子をぜひ動画でみて欲しいなと思います。イベント終盤には視覚や聴覚に障害のある子どもを含め、多様な子どもたちが参加している合唱団「ホワイトハンドコーラスNIPPON」とのスペシャルステージにも登壇したフィッシャーズ。始めたばかりの手話に悪戦苦闘しながらも、やり遂げた彼らの姿には、胸を打つものがあった。本イベントを窓口に、さまざまな人が『東京2025デフリンピック』に注目してくれることを願いたい。

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