今年も熱戦が繰り広げられた『にじさんじ甲子園2024』 数万人が見守ったドラマを振り返る

育成配信の時点で白熱するシーンの連続 各校の育成配信振り返り

 『にじさんじ甲子園』は育成した自チームを率いて8人で対戦し合う企画であるが、こと育成配信において主眼に置かれるのは「相手チームをいかに打ち倒すか?」ということ。特に今回は凶悪すぎるCPUを相手にするということもあり、前回大会のような大会連覇など華々しい戦い・戦績を残すことが非常に困難なのは明らかだった。

「打たれても今作の敵CPU相手ならばしょうがない」

 先に筆者はこのように書いたわけだが、一言で言ってしまえば、これは「諦め」である。たしかに本作「栄冠ナイン」の敵CPUは、現実の野球ではありえないような打棒で自チームを脅かしてくる。

 だがいかなる相手であっても、なすすべなく敗着するのはどうしたって悔しいもの。なによりにじさんじといえば、ゲームに一家言あるような生粋のゲーマーばかり。先行していた4人からの灯火を受けとるようにして、8人の監督が「打倒・凶悪CPU」という名のミッションに果敢に挑戦していった。

 まず1年目となる初年度夏大会において、フレンと五十嵐が先輩選手を含めた新チームで準決勝まで勝ち上がった。特にフレンに関して言えば、準々決勝で総合戦力Aという格上チームを相手取って勝ちきり、初参加とは思えない手腕を見せた。

【 #にじ甲2024 】#02 帝国立ふれんず学園高校♡1年目夏 2回戦~ 勝つぞ!!【フレン・E・ルスタリオ/にじさんじ】

 前回大会に参加していた五十嵐も、打者・投手へ冷静に指示を飛ばしつづけ、CPUからの反撃を退け続けて準決勝へと駒を進めた。しかも五十嵐の場合、3試合とも先制を許してリードされた展開からの逆転勝利であり、喜びもひとしおであった。

 3年目の夏大会。フレンは1回戦敗退、五十嵐は甲子園出場。明暗はキッパリと分かれてしまったが、個々の選手ステータスが一回りも二回りも格上相手に、ひとつの手札を切ることに数分以上の思考をかけ、細すぎる勝利への線を手繰り寄せていった。1試合に1時間以上かけて一進一退の攻防を制し、奇跡のような昂ぶりを生み出したのだった。

 また初参加した叶は、自身のTwitchチャンネルで「試走配信」をこなしつづけた。「他の監督と違って『練習配信』と銘打って栄冠ナインをバシバシやっているのが新鮮です」とコメントが流れると、彼は「なんか『にじ甲』の伝統を壊してないか心配だね」「でも、試走しちゃいけないっていうルールないしね」と彼らしい言葉を続けていたのが印象的だった。

 昨年大会でもあったが、配信外で練習を兼ねてプレイする監督が増えたりなどして、いち企画のためとはいえ配信する時間が削られるというと、見る側であるファンとしてはすこく複雑な心境になるだろう。

 そんなファンの心境を見越しつつ、練習する姿すらも配信に載せるというあたりに、彼独特の配信者らしさ、矜持を見ることができた。事実「たくさん試走がみれてうれしい」というファンの書き込みが多くあったほどだ。

 そうして彼が試走を繰り返したのは約1週間、ゲーム内の時間に換算してじつに20年ものプレイを経て育成配信に臨んだのだが、育成する選手の引きが悪く序盤はかなり苦しんだものの、3年目の夏大会には決勝へと進出した。甲子園大会出場までとはならなかったが、試走配信から育成配信までの実に2週間近くをやりきった彼は一言、悔しさをにじませつつ「楽しかったぁ~!」と終えたのだった。

 さて、ここまで「オリジナル変化球」「凶悪すぎる敵CPU」について記してきたが、もっとも大きな新要素を書いていない。それは「転生選手の大幅な増加」である。

 現役プロ・引退OBが転生選手として登場するのはこれまでのシリーズにもあった要素だが、今回はなんと引退OBが400人を超えるということが既報としてあった。つまり「栄冠ナイン」でも彼ら転生選手を獲得できるチャンスはおのずと高まり、育成する自チームが強くなりやすい傾向になる。

 しかも以前からあった「入学前スカウト」(有力な選手を自チームに入学させやすくなる)において、今回からは転生選手を見つけることができるという新要素も含まれたことで、俄然転生選手を見つけやすくなったのだ。

 『にじさんじ甲子園2024』でもその傾向はかなり強く出ており、3回ある新入生の入学に転生選手を引くチームがいくつも現れた。特に顕著だったのは、不破とエクスのチームだ。

 エクスは3世代つづけて転生選手を引き、自チームに3人の転生選手を所属させることに成功。不破にいたってはエクスと同じく3世代つづいて転生選手を、しかも3年目には2人の転生選手を引き当てるという奇跡のような引きの良さをみせ、一気にチームを強化することに成功した。

 その影響もあり、これまで大会参加こそしていなかったものの自身の配信で何度も「栄冠ナイン」をプレイしていたエクスは、今作の凶悪なCPU相手にもうまく立ち回り、なんと2年目秋の地区大会を優勝。神宮大会ならびに春の甲子園に出場を決め、正念場となる3年目の夏大会でも県大会を優勝し、甲子園ベスト8まで勝ち進めたのだった。

 転生選手を4人揃えた不破も、3年夏の都道府県大会を優勝し、甲子園に進めると全参加チーム中最高順位準決勝まで進出。大会を最後まで勝ち抜いたこともあり、育成期間最終日のギリギリまで育成配信が延び、最後まで育成配信を続けた監督となったこともあり、6万人を超えるリスナーが不破の試合を観戦する大賑わいとなった。

【#にじ甲2024】ギラギラホスト高校、夏県大会決勝!!行くぞ甲子園!! 最終回【不破湊/にじさんじ】

 相手を見極めて選手の性格や固有戦術などをつかい丁寧に采配を振るう、学力をあげて本屋から特殊能力をゲットして育成を進める、強い転生選手を探し出すor引けるよう祈るなど、さまざまな育成・戦い方を見せながら敵CPUチームに勝利していった各校。

 結果、3年夏には5チームが甲子園に出場するほどとなり、リスナーたちや本人たちが想像していたような一方的な展開にはなりづらく、どこも強いチームができあがったと言えよう。もちろんこういった育成を「栄冠ナイン」モードで実際にできるかどうかは、プレイヤーの運勢が大きく関わってくるわけだが。

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