VΔLZとDRAMATIC STARSが紡ぐ、“次元を超えた友誼” 拡張される実在性への期待

 にじさんじ所属のVTuber弦月藤士郎、長尾景、甲斐田晴によるユニット「VΔLZ」と、『アイドルマスターSideM』315プロダクションに所属する、天道輝、桜庭薫、柏木翼の3人によるユニット「DRAMATIC STARS」によるコラボARライブ『VΔLZ×DRAMATIC STARS COLLABORATION LIVE ~劇的演舞~』が、7月21日に開催される。この“次元を超えた”異例のコラボライブは、大いに話題となっている。

 異例とは言ったものの、じつはVΔLZとDRAMATIC STARSは、これまでに二度、YouTubeの番組で共演したことがある。今年3月にVΔLZのチャンネルで配信されたコラボ番組『VΔLZ A LIVE』、そしてアイドルマスターチャンネルで公開された『315プロダクションプレゼンツ 315パッションアワー!!! コラボ特番』での2度目の共演を経て、今回のコラボライブが発表となった。

配信サムネイルより

 3月に配信された『VΔLZ A LIVE』は、VΔLZがDRAMATIC STARSから「アイドルの心得」を学ぶ、というテーマのもとバラエティ企画を勝負形式でこなす内容であった。VΔLZがVTuberとしての強みである高いバラエティ力を見せながら、DRAMATIC STARSの3人は、バラエティ番組の中でのアイドルとしての立ち居振る舞いや、独特の空気感を醸し出すことで個性を開示したことが印象深い。

配信サムネイルより

 2度目の共演となった『315プロダクションプレゼンツ 315パッションアワー!!! コラボ特番』では、“次元の違い”によるぎこちなさは息をひそめ、より滑らかにコミュニケーションが取れていた。お互いのライブを鑑賞しあって魅力を語ったり、長尾景が過去DRAMATIC STARSの楽曲「MOONLIGHTのせいにして」をカバーしたことなどに触れるなど、お互いへのリスペクトや、立ち位置の違いを尊重し合う姿が見られた。こうした仲睦まじさが影響してか、お互いのファンがそれぞれへのリスペクトをさらに深めたように感じられた。

新たな局面を迎える、「アイドルマスター」シリーズの“実在性”

vα-liv

 過去にも生配信やMRプロジェクトの始動などを通じて、隣接領域への進出に取り組んできたアイドルマスターシリーズだが、基本的には楽曲面のパワーやキャラクターをリアルに感じさせる声優ライブ、ARライブの開催などを前面に打ち出していたように思う。

 故に、VTuberとのコラボレーションやvα-liv(ヴイアライヴ)などの展開に、多少なりとも戸惑いの声があがったことは理解できる現象であった。だが、地道な活動によってvα-livは徐々に支持され正式デビューを果たし、星街すいせいと『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』がコラボするなど、今回のコラボレーションも含めアイマスシリーズとVTuberとの距離は徐々に近づいているようだ。

星街すいせい×デレステコラボ楽曲「ジュビリー」MV 3D 【アイドルマスター】

 そうした垣根を取り払った上で見てみれば、声優によるライブや実在性ARライブ等でも徹底されていた、アイマスシリーズの「アイドルの実在性」というこだわりと、日常的に配信や動画投稿を行うことでパーソナルな部分をファンに開示していくVTuberというジャンルは、ファンやリスナーに“キャラクターを身近に感じさせる”点でも類似性があると言える。

 そういった点からみれば、アイマスシリーズは時代に変化に応じて「実在性」を少しずつ拡張している、とも読み取れるし、2022年末に発表した「PROJECT IM@S 3.0 VISION」にも沿う展開だ。これまで声優やゲームが担ってきたアイドルの存在感、そしてキャラクターたちを日常に落とし込む役割を、VTuber的なコンテンツ展開で広げることも将来的にありうるのかもしれないし、その試金石となるのがvα-livなのであろう。

個性の違う二組だからこそ、補い合って輝ける

『VΔLZ×DRAMATIC STARS COLLABORATION LIVE ~劇的演舞~』KV
©ANYCOLOR, Inc./THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.

 翻って、話をアイドルマスターSideMに限定してみると、また少し違った魅力が見えてくる。同タイトルは現在ゲームコンテンツとしての展開がない状況である。そんな、SideMキャラクターたちの新たなストーリーや、個々の魅力を新規ファンに提示する場として、VTuberとのコラボレーションは大きな機会となりそうだ。

 VΔLZには、築き上げた独自の世界観やそれぞれのフィクション性、3人のチームワーク、単独ライブで魅せたドラマチックな演出の数々が武器としてある。そしてDRAMATIC STARSのキャラクターたちが持つバックボーンや、長く活動していることによってかなり深められたキャラクター性とストーリー、パフォーマンスから浮かび上がる個性は長い年月を経て磨き上げられたものである。次元の違いによって生まれる違和感はかなり薄いと言えるのではないだろうか。

 前述のコラボ番組で見せたように、ないものを補い合いつつ、お互いを尊重するコラボは、これまで以上に広く受け入れられるものになるだろう。もちろんアイマスのAR技術やライブ演出、にじさんじのライブ技術が相互作用し、相乗効果を狙える点にも期待が膨らむ。

 今後も、アイマスシリーズは最大の武器と言える声優ライブ、ARライブによるアイドルの実在性を示す取り組みを続けていくだろう。だが、星街すいせいと高垣楓が壁を壊し、後に続く形で実現した今回のコラボライブ。結果や反応如何で、今後また別のコラボレーションが生まれることもあるかもしれない。ゲスト出演に留まらない“大型共演”の先駆けとして、VΔLZとDRAMATIC STARSが生み出す化学反応に期待したい。

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