『FF14』を想起させるボスバトルを楽しみ尽くせ! 『Rabbit & Steel』は傑出した東方フォロワーSTGだ

 興味を引くキャラクターに、好みなタッチのストーリー、それらを結びつける素敵なミュージック。食指が動く内容で、やってみたいと考えてはいるのだが、ゲームが難しすぎて遊べないに違いない! その最たるものが弾幕系シューティングゲーム(以下、弾幕系STG)であり、極北はキャラクター人気が高い「東方Project」シリーズ(以下、東方)である。ああ、クリアするまで上手な人に助けてもらえたらよいのだが。今作も、プレイ動画を眺めて満足するしかないのか――。

RABBIT & STEEL - Release Trailer

 本稿で紹介する『Rabbit & Steel』は、まさに「上手な人に助けてもらえる」東方フォロワーだ。ゲーム概要はマルチプレイとローグライクを加えたレイドバトル風アクションゲームである。人気MMORPG『ファイナルファンタジーXIV(以下、FF14)』のエンドコンテンツを、いきなり楽しむゲームと思えばよい。フレンド限定や野良マッチで最大4人パーティを組み、ボスバトルを戦い抜く。宝箱から出た装備品で強さを磨き、次なる強敵に立ち向かおう。

本稿スクリーンショットはプライバシー保護のため他プレイヤーの名前にモザイクをかけてある。

 唐突に違うジャンルのゲームを紹介したように聞こえるかもしれないが、東方フォロワーに求められる要素は完備している。キュートでおしゃれないでたちの冒険者ウサギが、不和の呪文に苦しむ王国を救わんと、お姫様ドラゴンや学者カラスと戦う。ケモ耳やツノや羽が生えた女の子たちはバトル中もおしゃべりを欠かさず、たっぷりキャラ萌えさせてくれる。彼女たちを飾るステージBGMも聴き心地がよい。バトル中は剣と魔法の冒険ファンタジー調に変わり、サビのパートがメロディアスにゲームプレイのフィーリングと重なる。ゲームミュージックとして品質が高い。

 上記のポイントだけでなく、ゲームプレイでもフォロワーらしさが色濃く出ている。ステージ道中をなくし、ボスバトルに絞ることで、弾幕系STGのエッセンスたるユニークかつ容赦ない攻撃ギミックを強調した。そのうえで、他ジャンルの人気要素をもって参戦可能なプレイヤーの幅を広げているのが面白い。“2024年の最も遊びやすい東方フォロワー”として本作を推したい。

みんなと戦えるから怖くない!

 自分の力で勝てないなら、勝てる人を連れてくればいい。この力技を選べるのが『Rabbit & Steel』の魅力だ。STG有識者のフレンドと一緒に遊べばゲームクリアは目前である。ライフをすべて失っても一定時間後に復帰できるので、最後まで諦めずに祈ろう。

 画面は横視点で、宙に浮いたキャラクターが縦横に動く。プレイヤーは攻撃系スキル3種を活用してダメージを出し、無敵時間付きの防御系スキルでボスの攻撃を避ける。攻撃スキルはオートロックオンで攻撃範囲も広いため、スキルを当てられる場所で回避に専念すればよい。ボス攻撃は範囲の予兆が出るので、安全な位置を見つけて移動しよう。ボスの体力がゼロになるまで、押し寄せる攻撃範囲とダンスをするゲームだ。

 マルチプレイを盛り上げる要素はふたつある。ひとつはパワーアップ=装備品だ。装備品は最初のエリアでふたつ、以降はエリアごとにひとつ出現する宝箱にある。装備品の効果を組み合わせてDPS(毎秒ダメージ)を上げればボス戦が少しラクになる。ボス戦後のDPS発表でプレイヤーの強化度合いを煽るのが心憎い。

 もうひとつはボスの攻撃ギミックだ。ボス攻撃の一部は他プレイヤーと集合・散開できないとダメージを受けるギミックで、プレイヤー同士の連帯行動を求めてくる。他プレイヤーの位置や初動から移動地点を察し、邪魔にならないよう自分も動かなければならない。この連帯行動を全員無傷でやりとげると快い。

 それら装備品とボスギミックで他プレイヤーの意図が絡むから、マルチプレイのプレイ感は毎回違ったものになる。以心伝心のパーティとなるか、意外性に満ちたバトルとなるか。気心知れたフレンドとボイスチャットしながらプレイすると、「思いやり」や「遠慮」という言葉の意味を調べ直したくなる。クリアできるかはともかく、マルチプレイの体験が本作のストーリーに花を添えると約束しよう。

ひとりでも大丈夫、かも

 ストーリーはシングルプレイ用コンテンツだ。ステージクリアが必須ではないので、腕前に自信がなくても楽しめる。というのも、ストーリーはエリア開始時に進展するからだ。プレイを繰り返すだけでストーリーを追えるから、リプレイ意欲を保ちやすい。マルチプレイで気になるキャラクターを見つけたなら、シングルプレイでストーリーを追うのもいいかもしれない。

 物語の焦点は王国を包む呪文にある。呪文の影響で住人たちは「わだかまり」が強くなり、不和になった。プレイヤーとの戦いを通じて彼女たちは大切なコトを思い出す。それはマルチプレイでプレイヤーが手にした感情に近い、とても大切なコトだ。プレイヤーの体験と同じ道を辿るからこそ、彼女たちの過程を応援したくなる。

 プレイヤークラスと装備品のアンロック要素も、リプレイをうながしている。ゲームを進めることによってアンロックできるクラスは、クセが強いもののDPSが高い。装備品は種類が増えるとシナジーを狙いやすくなる。クラスと装備品が噛み合い高DPSが出せると、ボスの攻撃を回避しきれなくても火力で押し切れることがある。「運がよければクリアできる」と思えれば、リプレイ意欲の支えとなろう。

クリティカルや装備品効果などで大きなダメージが出たときは表示が大きくなり顔アイコンも付く。

 弾幕系STGの遊び方は「正解を見つけるまで挑む」、そして「覚えるまで挑む」だ。本作において、前者はボス攻撃の予兆がヒントになり正解を見つけやすい。後者はストーリー進行を容易にし、装備品の運要素を匂わせてリプレイを促している。両者の中心にかわいいキャラクターたちがいるから、シングルプレイでも遊びやすい。

東方フォロワーでも抜きん出た存在に

 『Rabbit & Steel』は数ある東方フォロワーのなかで頭ひとつ抜きん出た注目作だ。キャラクターの性格や由縁を表現した攻撃パターンを攻略する、東方Project的エッセンスがゲームプレイの主軸にある。そこにPvEマルチプレイやローグライクといった他ジャンルの要素を加え、プレイヤーそれぞれの「真剣さ」を幅広く受け入れた。弾幕系STGという様式を外れても本質は忘れていない。フォロワー作の成熟を守破離で例えると、本作は破の段階にある。

 STGが苦手なひとでも、レイドボス戦を遊ぶゲームだと思えば、興味が上回るだろう。この間口の広さをもって「ポップになった」と称したい。STG有識者が友人をSTGジャンルに誘う“入門用ゲーム”としてもオススメできる。なぜなら、有識者自身が引率すればよいのだから。誘った友人がキャラクターに興味を示せばしめたものだ。

 最後に本作のゲーム難度だが、難度ノーマルの攻撃パターンは『FF14』の「極討滅戦」級である。難度ハード以降は弾幕STG相応となるので、腕に覚えがあるゲーマーは心して挑まれたし。

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