『ドラゴンクエストXI』5周年 原点回帰を謳った「勇者」の物語
『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』は、2022年7月29日をもって発売5周年を迎える。和製RPGの金字塔ともいえる『ドラゴンクエスト』のナンバリングタイトルとしてリリースされた同作は、原点回帰を謳い、過去作のオマージュをふんだんに取り入れながら、新たな物語を構築した。今回は、そんな『ドラゴンクエストXI』がどのようなゲームだったのか、いま一度振り返る。
ネタバレを含むため、未プレイの方は注意してご覧いただきたい。
原点回帰を謳った「勇者」の物語
『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』は、2017年7月29日に発売されたRPGだ。PlayStation 4とニンテンドー3DSという描画性能の大きく異なる2つのプラットフォームでリリースされたことも記憶に新しい。前者はEpic Games社の「Unreal Engine4」で開発されており、入り組んだ町並みや広大な草原などの美しいグラフィックが楽しめる。一方、後者はデフォルメされたポリゴンモデルで冒険を楽しめる「3Dモード」、ドット絵で描かれた懐かしい質感の「2Dモード」を選択することが可能。シリーズとしての進化を見せるだけでなく、既存ファンを大切にした幅広い展開が印象的だった。
また、原点回帰を謳った本作では、「勇者」というキーワードにフォーカスしたストーリーが展開された。勇者の生まれ変わりである主人公と、彼のもとに集った仲間たちが手を取り合い、やがては魔王を打倒して世界を救うという一連の流れは、まさに王道といえよう。その一方で、プレイヤーの予想を裏切るような展開も用意されており、賛否は分かれたものの、ストーリーそのものの完成度は高い。
システム面においても、従来の『ドラゴンクエスト』シリーズを遊んでいれば抵抗なく遊べるようになっている。成長要素として新たに「スキルパネル」が導入されていたり、キャラクターが連携して攻撃する「れんけい技」が追加されたりといった新要素はあれど、『ドラゴンクエスト』ならではのすっきりとしたUIと平易な戦闘システムにより、RPG初心者にもおすすめしやすい作品といえる。
2つの時間軸、2つの結末
本作は「勇者」を軸にした王道のストーリーではあるが、プレイヤーを驚かせる展開も数多く用意されていた。それが「時間遡行」の要素だ。
本作のストーリーは、大きく分けると3部構成となっている。主人公たちが世界の真実を明かすために「命の大樹」を目指す第1部、魔王によって引き起こされた悲劇の後の世界を描く第2部、そして第2部での悲劇を起こさないために主人公が単身時間遡行を行う第3部である。
本作は、この第2部に当たるシナリオをクリアした時点でエンディングが始まる。したがって、時間遡行を行う第3部については「裏ダンジョン」的な立ち位置といってもいい。
とはいえ、この第3部については賛否が分かれる要素でもあった。というのも、そもそも本作のストーリーは、第2部の時点で完成されているためである。
本作の第2部のストーリーは、魔王ウルノーガによって世界の根幹ともいえる「命の大樹」が崩壊した後の世界が描かれる。砕け散った山々が隕石として降り注ぎ、大地は荒れ果て、魔族が跳梁跋扈するという絶望的な世界観になっている。主人公は勇者としての能力を失い、仲間も散り散りになるなど、勇者の受難が描かれ、鬱屈とした展開が続く。特に、やっと再会できたと思ったパーティーメンバーのベロニカがすでに死亡していたことに絶望したプレイヤーは多いだろう。
その一方、そんな状況にあっても希望を捨てず運命に抗う人々の姿もていねいに描かれており、プレイヤーとしても主人公に感情移入がしやすい構成になっていた。挫折を経験した勇者が再び立ち上がり、魔王を打倒するまでを描いたストーリーは非常に見応えがあり、十分にカタルシスを味わえるものだった。
しかしながら、第3部で時間遡行を行うと、各キャラクターの成長にもつながったこれらの悲劇がなかったことにされてしまうのである。したがって、2部のストーリーへの思い入れが強いプレイヤーほど3部のストーリーを受け入れがたく、賛否が分かれる結果となった。