歌広場淳のフルコンボでGO!!!
「豪鬼と『女々しくて』はどこか似ている」 歌広場淳が『EVO Japan 2024』の熱戦を見守って思ったこと
『ストリートファイター』にとっての両国国技館は、ミュージカル映画にとっての「シネマスコープ」
もちろん、僕のようなハブ役は大会の盛り上がりに多少は貢献できたかな? という程度で。やはり『EVO Japan 2024』がこれだけ盛り上がったのは、ゲームメーカーさんたちや運営スタッフさんたちの、ショーとしての見せかたが良かったからだと思います。
そのゲームをおもしろくしているのは、ゲーム内容的なおもしろさだけじゃないなって思ったんですよね。当たり前のことかもしれないけれど。その意味では、「この演出、最高だな!」と思うような瞬間が多々ありました。
「EVO」などの大規模な大会では、だいたい各ゲームタイトルから何かしらの発表があるものなんです。新キャラクターの参戦だったり、バランス調整の実施だったり。
今回、僕は『スト6』の新情報に注目していたんですけど、「2024年のCapcom Cup(※4)を両国国技館で開催します」と発表された瞬間に、もう涙がポロポロ出てきちゃいましたね。
※4……カプコンカップ。2013年より毎年(コロナ禍による中止年あり)開催されている、『ストリートファイター』シリーズの世界大会。プレイヤーにとって、その年の集大成的な意味合いを持つトーナメント。
というのも、格闘ゲーム歴が長い人たちがよく言うんですよ。「昔、『ストリートファイターII』が流行ったころは、両国国技館でやった公式大会に8000人以上集まったもんなんだよ」と。
それをことあるごとに聞かされていたから、「僕はなぜ、その時代に格闘ゲームをやっていなかったんだ!」って悔しく思っていたんです。「もうそのころのような盛り上がりは一生経験できないのかな?」って気持ちがどこかにあったんです。
僕は映画やミュージカルもすごく好きなんですけど、とくに1950年代、1960年代のアメリカでは名作と言われるミュージカル映画がたくさん作られていて。『シェルブールの雨傘』とか、「あの名作をリアルタイムで観ることができたミュージカルファンって、幸せだろうなぁ」と、よくミュージカルファン同士で話したりするわけですよ。
自分が生まれる前にはもう終わっていて、絶対に手が届かないからこそ、なお憧れると。だから僕は、『ラ・ラ・ランド』(2016年公開)という映画を観たときに、もう本編が始まる前から大号泣してしまったんです。
映画が始まるときって、まず配給会社さんのロゴが映し出されますよね。『ラ・ラ・ランド』の場合もそこまでは同じ。だけど、スクリーンに目いっぱいに投影されている風じゃなくて、画面の比率も昔のテレビみたいに“4:3”っぽいなと。
その後、今度はスクリーンに「NEMASCO」という謎の文字列が表示されるんですが、よく見ると、なぜか左右が見切れてる感じ。そこからスクリーンの左右が引き伸ばされていくような演出が入り、ようやく「CINEMA SCOPE(シネマスコープ)」と書いてあったんだ、って観ている人がわかるような仕掛けになっているんです。
「シネマスコープ」とは、昔のミュージカル映画でよく使われていた撮影技術のことで。簡単に説明すると、一般的な撮りかたより画角が横に広く、横長に撮れる方法なんです。現代のテレビの“16:9”と比べても、「シネマスコープ」の場合はもっともっと横長の画面になります。
この「シネマスコープ」って、画面内にできるだけたくさんの踊っている人を映したいミュージカル映画にはうってつけで。ただ、一般的な撮影方法と比べて費用が倍か、それ以上に高額になってしまうから、「シネマスコープ」は次第に使われなくなっていくんです。
つまりこの『ラ・ラ・ランド』の一連の演出は、僕らが生まれたころにはもう廃れてしまった「シネマスコープ」文化を、「いまから観ている君たちに体験させてあげるよ」という、デイミアン・チャゼル監督からのメッセージだったわけですね。
こういうの、胸が熱くなりませんか!? 僕にはめちゃめちゃ刺さって、物語がなにも始まっていないのにボロボロ泣いちゃったんですけど……。すみません、話が長くなってしまって(笑)。
『ラ・ラ・ランド』でそんな経験をしていたものだから、「Capcom Cup2024、両国国技館で開催!」の発表でも泣いちゃったってことなんです。まさに、黄金期の再来だなと。
豪鬼に感じた、“お約束”に対する送り手側の矜持
『スト6』は『EVO Japan 2024』内で、追加キャラクターである豪鬼の最新PVを公開していましたが、会場は大盛り上がりでしたし、それを見た僕の友人の友人も「おおっ!」と声を上げていたのが印象的でした。
コアな格闘ゲームファンからすると、豪鬼が追加参戦するのって“お約束”(※5)みたいなところがあるじゃないですか。確かにいつものパターンなんだけど、だからこそ開発の方も「カッコイイ豪鬼にしよう」「カッコイイ参戦演出にしよう」と真剣に作ってくださっているはずで。
※5……『ストリートファイターII X』にて隠しキャラクターとして登場して以来、『ストリートファイター』シリーズのナンバリングタイトルにおける豪鬼は、タイムリリースでの参戦や、バージョンアップ時に追加される形式が通例。
「“いつもの”だからこそ本気で作りました」「僕らは本気で豪鬼がカッコイイと信じて作っています」みたいな送り手側の矜持を、生で感じさせてもらったような気がして。だから格ゲーにそこまで興味がない人も、コアな格ゲーファンも、一緒になって盛り上がることができたのかなと。
これって『女々しくて』も似たようなところがあると思ったんです。僕らにとっては大切な曲だし、特別な曲だけれど。だからこそ、「さすがにみなさん、『女々しくて』はもう飽きたでしょ?(笑)」って、あえて雑に扱うことで味が出るというか、おもしろく使えるネタみたいになっているところもあります。
定番だし、鉄板。それでも、フェスなどで数万人のお客さんの前でトリに『女々しくて』をやったりなんかすると、いまでも大歓声が巻き起こるんです。僕らもやるとなったら全力でやるし、みなさんも踊って盛り上がってくれるから、毎回やるたびに新鮮な喜びを感じるんです。
いや、それにしても豪鬼のPVは本当にカッコよかったです。カプコンの映像チームのみなさん、ゴールデンボンバーのパフォーマンス会議にも参加してくださらないかなぁ……。
ゴールデンボンバーとして「EVO」のステージに立たせてください!
『EVO Japan 2024』の会場では、「EVO」のグローバルビジネス開発ディレクターを務めるマークマンさんにごあいさつできる機会もあって。海外の方なので、通訳さんを介して会話させてもらったんですけれど。
ありがたいことに、マークマンさんは「あなたが日本で活躍しているミュージシャンであり、優れたプレイヤーでもあることは、私たちも知っています」と言ってくださって。僕もうれしくなって、前日の仙台でのライブの写真をお見せしたら、彼も「なんてすごいんだ!」って喜んでくれました。
それで去り際に、「ぜひ機会があったら、EVOのテーマソングをやってもらいたいものだよ。HAHAHA」的なことまで言ってくださったんですけれど……そういえば、僕らがエアーバンドだってこと、マークマンさんは知っているのかな?(笑)
仮に本当に「EVO」のテーマソングをやれることになったら、僕としては願ったり叶ったりで。もちろん鬼龍院さん次第なところはあるんですけど。テーマソングが無理でも、最終日のステージでパフォーマンスさせてもらえたりしないかなぁ……!
もしも「EVO」のステージに出させていただけることになったら、曲の中のパフォーマンスで、楽器をほったらかしにしてゲームしたいですね。曲中に“背水の逆転劇”チャレンジを成功させるとか。
これはもう本当に、世界中を探しても僕らにしかできないことだと思うので。どうか、このインタビュー記事が「EVO」関係者の方々に届くことを願っています(笑)。
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