オーディオ評論家が体感した「AKG」最新作の実力 プロに愛されるサウンドと圧倒的な機能性はコンシューマー向けモデルでも健在

専用ドングルを本体に内蔵したイヤーカップ型ヘッドフォン


 続いて、ANCワイヤレスヘッドホン『N9 HYBRID』をチェックしよう。こちらはアラウンドタイプのイヤーカップをもつ密閉型のワイヤレスヘッドホンで、一般的なBluetoothワイヤレス(LDAC対応)に加えて付属ドングルによるLC3+接続を用意するなど“ハイブリッド”な点は『N5 HYBRID』と同じ。加えて、有線接続でも使えるのが“ヘッドホン”ゆえの特徴ともいえる。ちなみに、ドングルはイヤーカップ内に収納できるため、持ち運びの際に忘れる可能性も低くなる。ありがたいかぎりだ。


 ANC機能やサウンドシステム、マイク音声の調整機能など、機能性もほとんど変わらない。シンプルに完全ワイヤレスイヤホンがよいかワイヤレスヘッドホンが欲しいか、で選択すればよい。

 とはいえ、扱いやすい操作性など、ボディの各所に『N9 HYBRID』ならではの魅力的なポイントがいくつかある。たとえば右ハウジングは上下に回転する作りになっていて、音量操作がしやすいし、ドングルが収納できる左ハウジングにはANCのオンオフのみが配置されているので、電源操作と間違うこともない。また、ヘッドホンを外すと音楽の再生が止まってくれるので、こちらも便利だったりする。

プロフェッショナルも認めるAKGサウンドを継承

 そして、サウンドに関しても、モニターヘッドホンで培ったAKGらしさが存分に感じられた。ドライバーの物理的な大きさの恩恵もあってか、完全ワイヤレスイヤホン『N5 HYBRID』と比べてより大きく深い抑揚表現となっている。AKGは過去にも密閉型とは思えないスムーズで自然な音場を持つ『K550』という有線ヘッドホンがあったが、ふとそれを思い出した。まさに、密閉型のイメージを一新させたAKGならではの空間表現を持ち合わせているのだ。おかげで、フルオーケストラは音がホールいっぱいに広がる、雄大でスケール感の大きい演奏が楽しめる。


 もちろん、女性ヴォーカルも魅力的。大人っぽく饒舌な、煌びやかで艶のある、そんな修飾語が相応しい、それでいてそれぞれの声の特徴が伝わる、リアルな歌声が存分に堪能できる。これは、AKGヘッドホン伝統のサウンドといえる部分であり、それが『N9 HYBRID』にもしっかりと受け継がれているのだ。


 正直、ここまでAKGらしさがしっかりと受け継がれていることには大いに驚かされた。今回のレビューでは、実際に手元にある『Q701』や『K712』とも聴き比べてみたが、そうそうAKGってこういう音だよね、といいたくなる上質なキャラクターを持ち合わせているのだ。勿論、作られた時代は異なり、当然チーフエンジニアも異なるだろうが、しっかり”AKGサウンド”が継承されているのは驚くばかりだし、大いに喜びたい。


 『N5 HYBRID』『N9 HYBRID』は機能性に関しても高い満足度を与えてくれるが、音“だけ”で選んでも充分な満足度を得ることができる。どちらもAKGを冠するクオリティに相応しい、完成度の高い製品と断言しよう。

参考情報

https://jp.akg.com/

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