ゲームの元ネタを巡る旅 第3回

「Fallout」シリーズの源流『少年と犬』を読む 荒廃した世界を生き抜くふたつの影

 多種多様な販売形態の登場により、構造や文脈が複雑化し、より多くのユーザーを楽しませるようになってきたデジタルゲーム。本連載では、そんなゲームの下地になった作品・伝承・神話・出来事などを追いかけ、多角的な視点からゲームを掘り下げようという企画だ。

 企画の性質上、ゲームのストーリーや設定に関するネタバレが登場する可能性があるので、その点はご了承願いたい。

 第3回は「Fallout」シリーズの源流『少年と犬』を考えていく。

『Fallout』とは何か? 核戦争後の世界を生き抜くポストアポカリプスRPG

 大元は1997年にInterplayから発売されたコンピュータRPG『Fallout』だ。「A POST NUCLEAR ROLE PLAYING GAME」と題されている通り、剣と魔法のファンタジー世界ではなく、核戦争後のアメリカを生き抜くハードコアな設定が特徴である。

 現在までにいくつものフランチャイズ作品が展開されているが、大きな転換となったのは『Fallout 3』である。2007年に、『The Elder Scrolls』シリーズという大河ファンタジーRPGで人気を博していたベセスダ・ソフトワークスが、Interplayから知的財産権を買い取り、翌2008年に発売したのが『Fallout 3』であり、世界中から注目された。

 先日、Amazon Prime Videoでドラマ版『Fallout』が配信された。原作の設定を忠実に再現しつつ、オリジナルストーリーを展開しており、ファンからの評価はおおむね高い。まだゲームを遊んでいないという人は、ドラマから入ってみてもよいのではないだろうか。

ドッグミートの原点 ハーラン・エリスンの「少年と犬」

 さて、そんな『Fallout』のイメージの源流はいくつかあるが、もっとも特徴的な作品はハーラン・エリスンが1969年に執筆したSF短編『少年と犬』(『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハヤカワ文庫所収)である。こちらは1975年に映画化もされている。

 全面核戦争によって荒廃した世界で、少年と喋る犬が生き抜いていくというストーリーだ。『Fallout』の主人公とドッグミートを思い起こさせるビジュアルで、スーパーミュータント(小説内では「放射能鬼」という表記)の話もここで登場するし、ユートピア化された地下社会の限界というテーマも『Fallout』のVaultに近しいテーマ性を持っていると言えるだろう。

 「Fallout」シリーズ(特に『Fallout 4』)は、アメリカの近現代史や、放射能汚染に対するブラックユーモアなどの要素を多く盛り込んでいるが、本作『少年と犬』は短編ということもあり、もう少しソリッドでミニマルな筆致である。

 比較する部分があるとすれば『少年と犬』の主人公の動機はほぼすべて性欲であり、そのあたりを『Fallout』シリーズは抑えて描いている。そこにはそれぞれ理由があり、前者は放射能汚染による遺伝子疾患で女性が産まれづらくなっているという設定があり、後者は何にでもなれるロールプレイングゲームなので、特定のモチベーションを持ったキャラクターを主役に置くのは難しいというところがあるだろう。

 いずれにせよ、ハーラン・エリスンが兼ねてから描いてきた暴力性も遺憾なく発揮されているし、「Fallout」というコンテンツにファンが求めているものも詰まっている作品だ。ぜひともチェックしてみてほしい。

※ちなみに「少年と犬」の時代設定は2024年であり、現実世界と同じ年にドラマ版『Fallout』が公開されたわけだ。なかなか小粋なことをするではないか。

ゲーム『Wasteland』シリーズや、映画『マッドマックス2』など その他の元ネタ

 その他、忘れてはならない作品群もいくつかチェックしておこう。

 まず『Fallout』シリーズをInterplayが制作するうえで参考にしたのが、1988年にエレクトロニック・アーツが発売した『Wasteland』である。核戦争後の世界を生き抜く物語という点は共通しているが、主人公たちは「デザートレンジャー」というアメリカ陸軍の残党に属しており、のちの『Fallout』シリーズに比べるとだいぶヒロイックな設定が注目点だ(「Fallout」シリーズに登場する「Brotherhood of Steel」に近い組織と言える)。

Wasteland 3 - Official Gameplay Trailer | X019

 本シリーズは2016年にInXile Entertainmentによって2016年に『Wasteland 2』として復活し、その後もシリーズが続いている。興味のある人はチェックしてみてほしい。

 そして、忘れてはならないのが、ジョージ・ミラー監督の映画『マッドマックス2』だ。1981年に公開され、メル・ギブソンを一躍スターにした重要な一本である。

ブルーレイ『マッドマックス トリロジー』トレーラー2 6月17日リリース

 “ポストアポカリプス”モノを巷間に流布し、ジャンルを定義づけた作品で、日本では『北斗の拳』などにも影響を与えている。とはいえ、あまりにも有名であり、わざわざ詳細に比較するほどではないため、紹介するに留めておこう。

 ドラマ版『Fallout』の成功により、シリーズ作の同時接続者数が急激に伸びているというニュースも上がっている。「全面戦争への恐怖」という冷戦下に蔓延していた想像力から生まれたシリーズだが、現代においてもまだその恐怖が払拭されたわけではない。未来を考える手がかりとして、いまこそ「Fallout」シリーズとその源流たちに触れてみてはいかがだろうか。

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