関わるすべての人が「ゲームを好きで良かった」と思えるように――GLOE株式会社・谷田優也&VTuber・渋谷ハルが語る“ゲームと寄り添う人生”

 「ゲームを好きで良かった」「ゲームをきっかけに人生がより良いものになった」――そんな原体験から生まれた思いに突き動かされるままに、それぞれのフィールドでトップランナーとして活躍する2名のゲーマーがいる。

 ゲーム・eスポーツ関連事業を手掛ける企業として、国内初の上場を果たしたGLOE(グロー)株式会社(旧:ウェルプレイド・ライゼスト株式会社)・代表取締役の谷田優也(たにだ ゆうや)氏。そして、自身もVTuberとして活動する傍ら、VTuber事務所・Neo-Porte(ネオポルテ)の運営も務める渋谷ハル氏だ。

 渋谷ハル氏といえば、国内最大級のコミュニティ大会『VTuber最協決定戦』(※1)の主催者としても知られており、GLOEは大会の運営担当を務める間柄でもある。『V最協』にてタッグを組んだことをきっかけに、お互いをリスペクトし合う仲となったふたりに、それぞれが秘める“活動の根底にある思い”について語っていただいた。

【※1……“VTuber最協のチーム”を決めることと、VTuberたちでゲームを盛り上げることを目的に、渋谷ハル氏が主催・定期開催しているゲーム大会イベント。2023年11月に開催された『VTuber最協決定戦 Ver.VALORANT Act.1 powered by Riot Games ONE』では、最大同時視聴者数が36万5613人を記録した】

ゲーマー経営者×VTuber、次元を超えた対談が実現

――本日はよろしくお願いします。はじめに、おふたりの現在の活動内容を教えてください。

谷田優也(以下、谷田):GLOE株式会社・代表取締役の谷田優也です。ゲーマーとしては「アカホシ(※2)」というプレイヤーネームでも活動しております。

【※2……格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズにおける谷田氏のプレイヤーネーム。『ストリートファイターIV』シリーズでは国内屈指の強豪ザンギエフ使いとしてその名を轟かせた】

 弊社はもともと、ウェルプレイド・ライゼストという商号で長らくご愛顧いただき、2022年11月よりeスポーツ銘柄として国内初の上場企業となりました。2024年2月1日からは商号をGLOEに変更し、「ゲームをきっかけに人と社会をHAPPYにする」というミッションを掲げ、「GAMING LIFESTYLE Company」として、ゲームの外側にゲームを遊び続ける価値を創る会社を目指しております。

 具体的には、ゲームやeスポーツのプロモーション、選手のマネジメントやブランディング、マーケティングなど、ゲームに関連する様々な事業を展開しています。

渋谷ハル:もともとは個人でVTuberをやっていたのですが、現在はNeo-Porte(ネオポルテ)というVTuber事務所の運営も務めているので、ちょっと立場としては個人勢なのか否かがややこしい状況ではあるんですけれども(笑)。

 現在は、アメリカ・ロサンゼルスに拠点を置くeスポーツチーム・TSM(Team Solo Mid)にコンテンツクリエイター(ストリーマー)として所属していたり、Red Bullのレッドブル・プレイヤーとしても活動していたり、『VTuber最協決定戦(以下、V最協)』の主催も務めたりと、いろいろなことをやらせていただいています。

――おふたりが出会ったのはいつごろで、どのような経緯だったのでしょうか。

渋谷ハル:谷田さんと初めてお会いしたのっていつでしたっけ? 『V最協』の運営をお願いすることになった際に、谷田さんにもご挨拶したと記憶しているのですが。

谷田:正確には、『V最協』のプロデューサーを務めていた弊社スタッフも交えて、3人でお話したのが「初めまして」だったような?

渋谷ハル:ああ、そうだったかもしれないです!

谷田:その後、プロポーカープレイヤーの世界のヨコサワくんと弊社が業務提携をさせてもらうことになったタイミングで、プロポーカープレイヤー対プロゲーマーで『Apex Legends』対決をする動画企画の撮影協力をすることになりまして。そこで、演者&技術協力を(渋谷)ハルくんにお願いしたところから、かなり接点が増えていったかなと僕は認識していますね。

渋谷ハル:そうですね。そこで谷田さんと仲良くなった……って言い方も変かもしれないですけど(笑)、そこから交流が増えて、今に至る感じです。

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VTuberが気軽に参加でき、参加した全員が楽しめる大会に

――渋谷ハルさんが主催する『V最協』に、GLOEが運営担当として携わるようになったのはいつごろからだったのでしょう。

渋谷ハル:そもそもの経緯をご説明すると、『V最協』は、最初期のころは“強い”という字を用いた『VTuber最強決定戦』という名前で、『PUBG: BATTLEGROUNDS』を扱う大会として、外部には一切委託せず僕が個人で運営していました。

 その後、大会名がいまの“協力”をテーマにした『VTuber最協決定戦』になり、使用タイトルも『Apex Legends』に移したなかで、2021年8月に開催した『VTuber最協決定戦 Ver APEXLegends SEASON3』から、GLOEさんにも運営に入っていただくようになりました。

――『V最協』の主催者として、渋谷ハルさんが毎回こだわっているポイントや、苦労していることなどを教えてください。

渋谷ハル:大前提として、「参加者ファーストな大会にしたい」という思いが根幹にあるので、参加者の皆さんが楽しんでもらえるルール設計や、気軽に参加できる環境づくりには毎回気を使っていますね。

 最近は企業所属のVTuberが多いので、「事務所との関係で、本当は出たいのに出られない」というケースができる限り発生しないようにしてあげたいんです。たとえば、なるべく商業感を抑えて「あなた方のタレントさんをお借りするけれども、お金稼ぎに使いたいわけじゃないんですよ」とアピールしてあげるとか。

 総勢60名で大会を開催するとして、その60人ができる限り平等に楽しめるようにするにはどんなルール設計がいいのだろうとか、ルールを整えた後に実際にどうやって60人に参加してもらうかとか、そういった準備段階がやはり大変ですね。

――『V最協』をはじめ、さまざまなゲームイベントや大会の運営や配信制作を手掛けるGLOEですが、運営業務に携わるうえでどのような点が強みであると自己分析されていますか。

谷田:我々の使命は、「おもしろいことをやりたい」と思っている人に、それを実現するための環境や手法を提供することだと考えています。だから彼らのアイデアや、根底にある思いには全身全霊を持って応えたいと思っていますし、そうしたセッションを通じて得られたノウハウは、弊社にとっての大きな財産にもなっているんです。

 たとえば、お客さまから「〇〇で△△なことをやりたいんですが、これって実現できると思いますか?」という相談をいただいたとしても、「それでしたら以前、□□という方法で近いことをやった実績があるので、実現できますよ!」と柔軟に対応できるのは我々の強みだと思います。

 また、多人数が参加するマルチ対戦型ゲームの大会運営では欠かせないのが、試合状況を伝えるオブザーバー(ゲーム内カメラマン)ですが、弊社はこのオブザーバーという仕事に関して高い優位性があると自負しています。

 刻一刻と変化する戦局の中で、突如として“ヒーローが誕生する瞬間”を逃さず配信上で伝えていくために、ゲームに対する高い理解度と、カメラワークや映像演出などの高度なスキルを兼ね備えた専門の担当チームがオブザーバーを務めています。そういった面でも、クライアントさんの“やりたいこと”を下支えできていると思いますね。

――GLOEの存在も大きいところとは思いますが、これほどまでに大規模な大会を渋谷ハルさんが個人で主催するというなかで、心が折れそうになる瞬間などはありますか。

渋谷ハル:やっぱり、「そろそろまた『V最協』を開催するか……」と重い腰を上げる瞬間は毎回大変ですね(苦笑)。「やります」と言ってしまったが最後、また準備に追われる日々に忙殺されることが目に見えているというか、身にしみているので。

 それでも懲りずに開催しようと思う最大の理由は、過去の『V最協』に参加してくれたVTuberの皆さんからの声があるからです。おかげさまで、「前回は楽しかったよ! つぎはいつ開催するの?」と僕に直接言ってくださる方が多くいるので、それがイチバンうれしいしモチベーションになりますね。

 初期のころは、主催する僕自身を宣伝するツールとして、セルフブランディング戦略の一環として開催していた側面もあったのですが、僕のことを知ってくれている人が増えたいまとなっては、皆さんからの“求められている感”が原動力であり心の支えです。

 また、そういった声をかけてくださる方に対しては、僕としても「また出場してもらえませんか?」と声をかけやすくなります。こちらとしては次期開催のために考えないといけないことがひとつ減ったも同然なので、本当に助かりますね。まさに“V最協”は、皆さんの協力のおかげで成り立っています(笑)。

――『Apex Legends』プレイヤーとして知られる渋谷ハルさんですが、2月14日より開始された最新シーズン20の印象と、気になる“V最協”の次回開催予定についても、ぜひお聞かせください。

渋谷ハル:新シーズンはかなりいい感じだと思います! 僕は『Apex Legends』に限らず、大好きなゲームに対しても良いものは良い、だめなものはだめとハッキリ言わなければ我慢できない性格なのですが、そんな僕から見ても、シーズン20は「かなりおもしろいものになりそうだ!」という期待感がありますね。

 “V最協”の次回開催については、じつは昨日もGLOEの皆さんとご飯に行っていろいろとお話をしたところでもあって。いまのところは今年(2024年)の夏ごろにまたやりたいよねということで、準備段階に入りつつあります。

 本当に夏ごろに開催できるかは正直未知数なのですが、こうでも言って自分の逃げ道を減らしていかないと覚悟が決まらないので(苦笑)。ぜひ楽しみに待っていてもらえたらうれしいです。

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