ギャルが“宇宙物理学”を解説? 「天文物理学者BossB」のTikTokで宇宙を身近に感じよう

 “宇宙物理学”と聞いて、身近に感じる人はどのくらいいるだろうか。宇宙物理学とは、宇宙の現象や性質を物理学によって探求し、理解を深める学問だ。その学者ともなれば、未知の世界の探検家、といっても過言ではない。

 そんな、あまり馴染みのない存在である宇宙物理学者がTikTokにあらわれた。クリエイター名は「天文物理学者BossB」。TikTokのフォロワーは34万人、YouTubeの登録者数は25万人になる(2024年3月22日時点)。

 今回は、「天文物理学者BossB」(以下BossB)の動画から、人気の理由を探っていく。

わかってもわからなくてもいい 学問自体のワクワクを伝える

 この動画では、視聴者からきた「次元とはなんですか?」という質問に答えている。まず回答に行く前に、BossBの雰囲気や見た目に注目したい。派手なネイルや金髪からはギャルみを感じ、エレクトロニックなBGMに乗せて四次元について解説していく。そして最後には「PEACE!」と決め台詞を吐く。

 このようにBossBの動画には、宇宙物理学とは正反対の位置にあるような要素がふんだんに盛り込まれており、「物理学? なんか難しそう……」と構えてしまう視聴者の気持ちを吹き飛ばしてしまうのだ。

 そしてBossBは、0次元、1次元、2次元、3次元、4次元について順に解説していく。難しい単語はほぼ使っておらず、それぞれの次元を、点や紐、立方体であらわしながら説明していく。そして2次元を3次元のトンネルでつなげた際の見え方を解説し、最終的にどこでもドアの原理に着地した。

 正直筆者は途中までしか理解はできなかったが、それでも繰り返し動画を見てしまい、ほかの動画にも興味が湧いた。視聴者からも「途中から難しかった」「わかりやすかった」など、理解ができたかどうかについては人によってバラバラだ。だが、筆者のように物理学についてまったく無知な人間でも理解できるところまで噛み砕いて解説してくれることによって、“物理学のおもしろさ”を伝えてくれているのが、BossBの魅力のひとつだろう。

 理解することが重要なのではなく、宇宙物理学のおもしろさの片鱗に触れることができるのが、BossBが人気の理由なのではないだろうか。

 BossBは信州大学で天文・宇宙物理学を研究する准教授であり、アメリカのコロンビア大学で博士課程を修了している。これほどまで専門的な学者が、若い世代とダイレクトにつながるコンテンツであるTikTokで発信している例はほかにあまりない。

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 BossBは、本の要約サービス「flier(フライヤー)」の公式Youtubeチャンネルでインタビューを受けており、SNSを始めた理由について「宇宙で学んだことを社会にリーチアウトしていくべき」と語っている。それまでは「SNSはやったことがなく、あまり好きじゃない」タイプだったようだが、当時息子がTikTokに夢中になっていたのを知り、可能性を感じて発信を始めたという。

 好きじゃないとまで思っていたSNSも、可能性を感じるのであれば挑戦する。この探究心とチャレンジ精神が、まさにBossBが宇宙物理学を研究する原動力のように感じる。ぜひ機会があればBossBの動画を視聴してみてほしい。縁遠いと思っていた宇宙物理学という世界を、身近な存在にしてくれるはずだ。

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