にじさんじ「さんばか」5周年の節目に寄せてーーあらためて深掘りたい、リゼ・アンジュ・戌亥のトリオが愛される理由
リゼ、アンジュという旧知のふたりと共にデビューした当時、戌亥とこの回想
リゼとアンジュはデビューする以前から旧知の仲であり、オーディションを受けたところリゼがオーディションに通らなかったため、アンジュが「オーディションを辞退したい」と申し出たという。当時の関係性を象徴するエピソードとして、これ以上ないほどのインパクトあるものだ。
リゼとアンジュの深い絆がありつつ、戌亥は当時についてこのように回想している。
戌亥「デビューしたのが2人で良かったと思ってる。2人は10年来の幼馴染みたいな感じやん、自分がそこに放り込まれた時、2人とも受け入れてくれた。それがとても嬉しくて、他のデビューした人も仲良くしてくれているけども、この2人は特別」
リゼも別の配信で、3人で集まった会話でこう述懐する。
リゼ「(3人でケンカしたことあるの?というリスナーからの質問に対し)ないけど、腹を割って話したことがある。仲良くなるときに大きなきっかけがあって、幼馴染のアンジュに頼ってばかりになってることが多かったんだけど、あるタイミングでそれじゃダメだと思ったから、とこちゃんに『何でも言い合える関係になりたいからお話したい』って言った」
「普通は積み重ねていくことで“言い合える関係”になると思うんだけど、私がコミュニケーション下手というか、言わなきゃ! と思ってつたえた。とこちゃんも不審がらずに聞いてくれた」
戌亥「さんばかとしてお互いが納得できるような状況でやりたいから、思ってることを話せる関係になりたい!って物凄い熱弁されて……2人で泣きながらね」
もしもアンジュがそのまま審査を辞退していたら、リゼとアンジュはにじさんじに所属していることは無く、戌亥もまた別のメンバーと同期としてデビューしていたはず。いまのにじさんじはまた違った未来、タレント陣を揃える流れができていたかもしれない。
くわえて「VTuber」というほとんど前例のない活動に飛び出していくこと。なにかの手違いで大きな炎上が起こってパッシングを受けるかもしれないし、そもそも視聴者にとって楽しんでもらう配信とは何かがまだまだ分からない状態でもある。
いま現在とは違い、リスナーのなかでも「VTuber」という存在と理解が深まっていない状況のなかでデビューした3人は、五里霧中のなかで孤独感や無力感すら抱えそうになっていたであろう。だからこそ、3人しかいない同期同士で早々に良い関係性を築いておきたいという気持ちは、痛切な願いのように表面化したのだと想像できる。
そんな3人の間柄・関係性をみるときに、3人の中でもイジられやすいアンジュの存在は非常に大きい。ちょっとした隙をみせやすい彼女の言動を拾い、リゼと戌亥がすかさずツッコミを入れたり、小ボケを差し込もうとするシーンが何度となくある。
“アンジュをイジってからスタートする”というコミュニケーションは、リゼとアンジュ、アンジュと戌亥など、2人同士のコミュニケーションでもよく見られる光景でもある。
これが3人になるとどのように変化するかというと、どちらかが隙をついて小ボケを使ってアンジュをイジり、「いやちょっと待って」とアンジュが一旦状況を制したところに、さらに小ボケを入れ込むなどしてアンジュにちょっかいを出して盛り上がったところで、すこし遠目から3人目がボソっとツッコんでキレイに落とすというコミュニケーションへと展開する。
この流れは、さんばかの黄金パターンともいえようノリ/話芸であり、多くの配信で笑いどころやハイライトシーンを生み出してきた。特に2021年夏頃に『Minecraft』を通じて行なわれた「さんばかロボ建設」では、この黄金の会話・コミュニケーションがこれでもかと炸裂しており、数年経過したいまでも「さんばか」らしさあふれるものとなっている。
あくまで一例としてあげてみたが、“アンジュをイジってスタートする”というのは参考程度だ。実際には、イジり・整理・ツッコミという役回りを3人のなかで自然とパスしあい、無限のように循環している。
先に述べたように、自身の配信では雑談枠が人気を集めていたり、公式番組でも司会役を務めるなど、3人それぞれに「弁が立つ」「場を回せる"タイプ」なのだが、このパターンが継続しているとブレーキが3人とも利かなくなってしまい、話すのに疲れて自然と落ち着くまでがワンセットになっている。
デビューから数年経っても「3人で話すのが楽しすぎて止められなくなる」とこぼすほどで、3人同士での会話をいかに愛おしく感じているかが伝わってくる。