Z世代に「オールドコンデジ」なぜ流行? 秋葉原のカメラ専門店で聞いてみた

Z世代に「オールドコンデジ」なぜ流行?

時代に逆行した設定方法

 そのまま撮影するだけでも十分フィルムライクな写りになるのだが、より粗さや古さを求めるのであれば、設定で自分好みに調整するのもおすすめだ。三村氏に、いまの流行に合わせた設定方法についても語ってもらった。

 「キヤノンの『IXY』を例に説明しますね。まずおすすめなのが、『すっきりカラー』です。この設定にすると、全体的な色味が落ちて、少し古い感じの写りになります。あとはホワイトバランス。これは色温度を調整する機能なのですが、たとえばこの設定を“太陽光”にすると、暖色が強くなります。室内で太陽光の設定にすると少し黄色っぽくなってしまうのですが、外で撮影する場合は太陽光の設定がおすすめですね」

 「少し前に流行した写ルンですは、フラッシュを焚いてレトロ感を演出する方法が鉄板でしたが、コンデジの色を生かすのであれば、あえて切ってしまうのもありです。また、光を取り込む量を調整する“ISO感度”という機能があるのですが、あえてISO感度を上げ切るとフィルムっぽいザラザラとした写りになります。普通の撮影だとノイズになってしまうので、ISO感度をマックスまで上げて撮影することは考えづらいのですが、いま流行のレトロ感を出すのであれば、これもひとつの方法です。自分で説明していても、ちょっと違和感があるんですよね(笑)」

 そう三村氏が苦笑するように、どうやら流行しているフィルムライクな写りを目指せば目指すほど、本来修正するべき設定から逆行するようだ。「いまコンデジを買いに来る若い子は、普通に性能のいいカメラと同じ値段でも、コンデジを選ぶというすごい現象が起きているんですよ」ここまでオールドコンデジを若者に求められている背景には、機能が発達しすぎたことによる“疲れ”もあるのではないかと、三村氏は語った。

 「コンデジのほかにも、CDオーディオやレコードが流行っているじゃないですか。スマートフォンに集約されている機能を、一つひとつ分解している流れを感じます」写真は写真、音楽は音楽で没頭したいのに、集約されていると重視したい領域が分散されてしまい、難しくなる。その結果、機能が限られたオールドテックをあえて選ぶ、という流れが生まれたのかもしれない。

 ますます勢いを増すオールドコンデジの波。“スマートフォン”という名のオールインワンガジェットを手にしたいま、シンプルに趣味を楽しみたいのであれば、欲しい機能だけを搭載したオールドテックを併用して持ち歩くのもおすすめかもしれない。テクノロジーが進化したいまだからこそ、若者は便利さを使い分けて、好きな趣味に打ち込んでいるのだろう。

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