『PS VR2』が年内にもPC対応へ 激戦のVRゲーム領域、成功のカギは“独自性”にあり?

 ソニー・インタラクティブエンターテインメント(以下、SIE)は2月22日、開発・発売するVRヘッドセット『PlayStation VR2』(以下、『PS VR2』)について、2024年内にもPCプラットフォームに対応させる方針を明らかにした。

 『PS VR2』の満を持してのPCプラットフォームへの対応は、VRの市場にどのような影響を与えるだろうか。人気端末との比較から、同機が抱える課題を考える。

PlayStation 5の機能を盛り込んだSIE製のVR端末『PS VR2』

Feel a New Real | PS VR2

 『PS VR2』は、2023年2月22日にローンチとなったSIEが開発・発売するVRヘッドセットだ。PlayStation VR(2016年10月発売)の後継にあたるハードウェアで、ディスプレイパネルに有機ELを採用。単眼で2,000×2,040ピクセルという解像度を持ちながら、約40グラムの軽量化を実現した。

 最も特徴的なのは、『PlayStation VR2 Sense コントローラー』と呼ばれる専用の操作機器が付属する点。PlayStation 5専用コントローラー『DualSense』をベースにした同機には、アダプティブトリガーやハプティックフィードバックといったPlayStation 5でおなじみの機能が盛り込まれている。そうした特性から『PS VR2』はこれまで、PlayStation 5専用のVR端末として同ハードのユーザーに親しまれてきたが、今回の発表により、少なくとも年内には、PCプラットフォームでも同機でVRゲーミングを楽しめる見通しとなった。

 価格は74,980円(税込)。2023年5月には、発売からの6週間で前世代機・PlayStation VRを上回る、約60万台を売り上げていたことが親会社であるソニーグループから明かされている。

PCへの対応は販路拡大につながるか。市場に横たわる大きな障壁

 公式ブログに投稿された新作VRタイトルにまつわる記事のなかでさらりと明かされた、『PS VR2』のPCプラットフォームへの対応。同機をめぐっては、ローンチ当初からPlayStation 5でしか活用できない仕様が欠点として挙げられていた。コストパフォーマンスに優れた端末であるにもかかわらず、『PS VR2』が界隈の話題をほしいままにできなかったのは、そうした背景があったからだ。しかしながら発売から1年が経過し、同機が抱えてきた生来のハンディキャップは解消に向かっていることがわかった。淡白だった発表時のSIEの温度とは対照的に、このことは市場に大きな影響を与える可能性もあるだろう。

 VRゲーミングの領域では、Metaの「Meta Quest」(旧「Oculus Quest」)や、バイトダンスの「Pico」、HTCとValveが共同で開発した「HTC Vive」、Valveの『Valve Index』など、さまざまな端末が市場のシェアを争っている現状がある。なかでも直近、特に注目を集めているのが、2023年10月に発売された『Meta Quest 3』だ。同機はディスプレイパネルに液晶を採用。単眼で2064×2208ピクセルの解像度を備えつつ、重量を『PS VR2』より軽い約515グラムに抑えている。ラインアップにはストレージ容量に差がある2つのモデルが存在。より安価で手に入れやすい128GBモデルの価格は74,800円(税込)と、『PS VR2』のそれと拮抗している。つまり、『PS VR2』が当初の課題を解消し、PCプラットフォームに対応したとしても、そこにはすでに価格、機能の両面で同機を代替しうる“巨人”が待ち構えていることになる。

This is Meta Quest 3

 また、『PS VR2』はスタンドアロン型の端末ではないため、1から環境を構築するためには、ソフトウェアを駆動するPCと、それに接続するケーブルなども用意しなくてはならない。これまで同機は、PlayStation 5という高性能ハードを旗艦としてきた。PCプラットフォームに対応するにあたり、「どのようにしてPCと接続するのか」という点も小さくない課題となっている。搭載するUSB Type-C端子が活用できるのであれば問題はないが、もしPlayStation 5本体や、その他の新たな周辺機器を介して接続することになれば、『Meta Quest 3』には一歩も二歩も遅れを取ることになり、『PS VR2』のPCプラットフォームへの対応は、「すでに同機を所有(あるいは購入を検討)するユーザーの活用の選択肢を少し増やすだけのもの」ともなりかねない。『Meta Quest 3』、およびその他のVR機器の対抗勢力として販路を拡大するには、高い障壁が存在している実態がある。

 惜しむらくは、こうした勢力図が形成される前、『PS VR2』が発売された当時からPCプラットフォームにも対応していたら、逆の立場となり得た可能性がある点だ。その意味において、今回のSIEの対応は後手に回ってしまっている。

 『PS VR2』はPCプラットフォームへの対応で市場に爪痕を残すことができるか。成功のカギは同機、さらにはPlayStation 5の優位性をどのように活かせるかの1点にかかっているのかもしれない。

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