アーティストの負担を減らし、創作活動に没頭するためにーーDIYアーティストが選ぶべきパートナーとは?

バズのタイミングを逃さない 充実のプロモーションプラン

――実際にはどのようなサポートを実施しているのか、現場に近い秋元さんと長谷部さんのお二人に教えていただきたいです。

長谷部:トップダウンというよりも、まさにボトムアップな感じで、アーティストがどうやりたいのかを聞いた上で、「この時期にアルバムリリースを予定していてその次にツアーとワンマンがあるから、こう進めていきましょう」というゴールに向けたロードマップを一緒に組み立てていくことがファーストステップになります。その次に具体的なアクションのプランとしては、主にはやはりDSPとの向き合いがメインになってきます。エントリーやピッチングをしっかり行うことはもちろん大前提ですが、その前に、個別に直接タイトルの紹介をするプレゼンの場を設けたり、「こういう展開をしたいです」といった具体的な提案をしたり、各DSPさんとの連携を深くしています。

――そういったプロモーションをDSPにかけていくというなかでも、ただアプローチをするだけでなく、分析をして戦略立ててやっていくということがディストリビューターの取り組みでもあると思います。どのような形で分析しているのでしょう?

長谷部:曲をリリースしたときの分析がメインにはなりますが、そもそも最初にリリースのプランを立てる際、そのアーティストの現状のSNSのフォロワー数や再生回数などを見て、それぞれの指標でどういう数値を目指していくのかというゴールを考えています。たとえば、再生回数が最初に設定した数字より上回っていたらなにが要因だったのか、SNSのフォロワー数が増えて再生数が伸びたのか、それとも相性が良いサービスで局地的に再生されていたのかなどの原因分析を行います。それによって生まれた仮説などを次回リリースの際に生かすこともできますね。

秋元悠歩

秋元:あとは特に若手のアーティストの場合は、目標にしているアーティストもいると思うんです。なので、そのアーティストがどんなプレイリストに入っているのか、SNSの動かし方も含めどんな活動をしているのかなど、様々なデータの分析をします。それからDSP側ともお話をして、僕たちとアーティスト、そしてDSP側の三者間で「このアーティストはどこに向かいたいのか」という意識の共有を行っています。

――そこからプロモーションプランを立てて実際に実行していくということですが、NexToneでは、PreプロモーションとPostプロモーションというフレームがあるのも興味深く感じました。これらはどのようなプロモーションなのでしょう?

秋元:Preプロモーションはいわゆる従来の事前のプロモーションです。初動を伸ばすという意味合いが主になる一般的なプロモーションですね。

 Postプロモーションは、ストリーミングの時代ですと、たとえば新人の方の曲でも出してから1年後にTikTokでバズったり、インフルエンサーの方に使っていただいて話題になったりといつ流行り出すか分からないということがあるので、常にトレンドやストリーミング上のデータを見ながら、プロモーションを行っていくというものになっています。

――PreプロモーションのなかにあるPreAdd、PreSaveというものはある種DSPの機能だと思います。

垣内:PreAdd、PreSaveは、実はDSP側が提供している機能ではなくて、サードパーティにより開発されている機能です。当社では独自にシステムを開発して我々ならではの機能を搭載してマーケティング活動を推進しています。

長谷部海

長谷部:従来のようにPreAdd、PreSaveをしないとなると、リンクを用いての配信開始の告知は配信日以降になってしまいます。一方、PreAdd、PreSaveを設定していると、リンクが既に発行されている状態ですので、リンクを使用して告知することができます。そのリンクを叩けばリリース日に自動的に自分のライブラリに追加されたり、アーティストをフォローできたりするのでリリース直後の初動につながります。かつ既に好きでいてくれてる人への見逃しを防ぐこともできます。NexToneのPreAdd、PreSaveは独自で開発しているので、アーティストフォローも同時に行われたり、どのプレイリストに入れるかというのも自分で設定することができたりするので、よりアクティブ率を高めることができるかと思います。

秋元:フォロワーが増えるとリスナー毎の新曲プレイリストなどに追加されるので初動が増え、それによって注目曲のプレイリストに編成されたりと好サイクルが生まれやすくなります。そのような流れを作るためにも、Preキャンペーンなどを通して、効率的にリスナーにアプローチしていくことが大事になっていくかと思います。

――NexToneでは、今後どんなことをやっていきたいと考えているのでしょうか?

垣内:データを中心に分析しながら仮説を立てつつ、施策実行のフェーズでは、アイデアを生かした奇抜な手法も面白いと思いますし、決まりきったプロモーションのお品書きだけでなく、我々ならではの新しいマーケティング手法をアーティストさんと一緒に作っていきたいと思っています。

秋元:海外に向けても視野を広げていきたいと考えています。近年日本のコンテンツも海外でヒットを伸ばしているものもありますが、いろんな海外の出方があるかと思います。もともと海外人気が高いアニメ、ゲーム音楽はもちろん、その他でもストリーミングのデータを見ていると海外リスナーの存在感が日に日に増しているのは肌で感じているので、NexToneならではのプロモーションを模索しつつ、成果を出していきたいですね。

長谷部: どんな新しい聞いたことも無いプロモーション展開でも挑戦するというスタンスですので、アーティストさんから出てきた意見やアイデアを素直に受け取って膨らませていきたいです。一緒に走っていく中で、様々な手法が見えてくると思います。それが結果的に私たちにしかできないプロモーションで、私たちらしい展開の方法になると思うので、そういったものをたくさん見つけていきたいと思います。

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