リメイク版『スーパーマリオRPG』公式ガイドブックは、オリジナル版の“いいとこどり”な一冊だった
秘蔵制作資料を始め、独自の見所も。ただ……?
オリジナル版の攻略本2+1冊から大きくパワーアップしている部分もある。それが敵キャラクターの情報をまとめたデータベースページだ。それぞれの敵が繰り出す攻撃の防御タイミング情報がスクリーンショット付きで網羅されている。
これは本のサイズがB5サイズになったからこそ実現できた追加情報といった感じだ。スクリーンショットの存在が物語る通り、データベース自体もテキストだけで執筆されたものになっていないため、見栄えも非常によくなっている。
さらに『星空からのおくりもの』には、マリオを始めとするパーティメンバーたちそれぞれの基本装備、スペシャル技をまとめた専用ページが8から17ページにかけて設けられていた。同じページは最新の公式ガイドブックにも掲載。しかも、それぞれのキャラクターのおすすめ育成方針も掲載され、情報量が大きく増えている。レベルアップ時、どのボーナスを優先的に取得していけばいいのか、不安になりながら選んでいたプレイヤーにはうれしい追加情報と言えるだろう。
そして、オリジナル版の秘蔵制作資料を紹介したページ。マロ、ジーノ、クロコ、ブッキーといった本作オリジナルのキャラクターたちの初期デザイン案、イベントシーンの絵コンテといった大変興味深い情報が網羅されている。敵キャラクターの初期デザイン案もいくつか掲載されていて、そのなかには本編の大ボス(ラスボス)「カジオー」のものもある。ただ、おそらくオリジナル版およびリメイク版での当人のデザインを知っていると、若干ゾッとしてしまうかもしれない。同時に『ファイナルファンタジー』シリーズや『サガ』シリーズといった旧スクウェアの名作に慣れ親しんできた世代なら、「いかにもスクウェアらしい」とニヤリとするだろう。ほかにも資料ページにはスーパーファミコン版の宣伝チラシ、パッケージイラストも掲載されている。
反面、リメイク版の制作資料は掲載されていない。さらに初期デザインを手がけたデザイナーの情報はなく、当時のスタッフとして紹介されているのも、誰がデザインしたかを知りたい人にはもどかしく感じるだろう。また、この制作資料が紹介されたページは6ページと少ない。そもそも、オリジナル版が27年も前に発売されたタイトルということもあって、残っていた資料に限りがあったのかもしれないが、欲を言えばキャラクターデザイン、特にオリジナルキャラクターたちの初期デザインはもう少し見たかったところだ。
制作資料以外のページにも、気になる点が散見される。筆者が最も気になったのは「ベローム神殿」のおみくじ分岐の詳細な内容が記載されていないこと。この情報は『FINAL EDITION』と『裏テクニックガイド』において、どのような敵が登場するかの一覧が掲載されていた。だが、最新の公式ガイドブックはネタバレを防ぐ観点からなのか、分岐の内容に関しては最低限の情報しか掲載されていない。
また『星空からのおくりもの』と『裏テクニックガイド』にあった、武器、スペシャル技のモーションおよびアクションコマンドのタイミング情報は載っていない。リメイク版にて可視化されて表示される仕組みになった都合と思われるが、そのタイミングに応じて全体攻撃が発動するか否かが決まる新要素が備わっているだけに、可能なら載せてほしかったところだ。『裏テクニックガイド』にて掲載されていたレベルアップごとのボーナス値、それぞれの敵の防御力、素早さなどといったパラメータ絡みの数値情報がないのも惜しい。
そして不思議なことに、オリジナル版の攻略本2+1冊でその姿が堂々と紹介されていた裏ボス「クリスタラー」のグラフィックが完全に伏せられてしまっている。当人の「なにかんがえてるの」の心の声メッセージ、その取りまき(?)である4つのクリスタルに関しては特に伏せられておらず、リメイク版だけの“アレ”も紹介されているのだが、クリスタラーだけすべてシルエットにされてしまっている。正直、オリジナル版当時を思うと片方も含めて伏せる必要はあったのか疑問に感じる。
ただ、クリスタラーも攻撃の防御タイミング情報が掲載されており、攻略の情報量はオリジナル版の攻略本2+1冊より増えている。“アレ”に関してもその辺の情報はバッチリ取り扱われているので、苦戦中にある方は参考にしてみるといいかもしれない。
ゲームも攻略本もベストな形に達した『スーパーマリオRPG』
注目に値する部分に絞って紹介してきたが、最新の公式ガイドブック自体は特にオリジナル版の『FINAL EDITION』のリベンジとも言える仕上がりになっている。『星空のおくりもの』と『裏テクニックガイド』を思うと、あとひと押しなところもあるが、十分に決定版の域に達している出来だ。ページ数は少ないとはいえ、オリジナル版当時の秘蔵制作資料が見られるほか、マップ構造も本自体のサイズが大きくなったことで視認性が向上している。リメイク版はもちろん、オリジナル版が好きなプレイヤーも一見の価値がある一冊である。
ちなみに前回のコラムでは最小限の紹介に留めたリメイク版も、決定版というに相応しい傑作である。オリジナル版の魅力や味はそのままに、不便だった部分の改良と再調整が図られ、より遊びやすく、やり込める内容へと進歩している。追加要素もオリジナル版本来のゲームバランスを損ねない絶妙な塩梅で調整されており、難易度も参加メンバーが全滅しても控えのメンバーがいれば戦闘を続行できるようになって(※途中での入れ替えも可能)、多少ながら易しくなっている。
「エンジョイモード」なる、派生作『マリオ&ルイージRPG』シリーズから逆輸入された感じの気軽に楽しみたいプレイヤー向けの難易度が用意されているのも、特筆すべきところだ。逆に易しくなった難易度に物足りなさを覚えたプレイヤー向けにも、クリア後限定の高難易度コンテンツを用意。そこでしか出会えない(戦えない)、オリジナル版経験者なら歓喜必至の“27年越しの悲願”なボスも待ち受けている。
すでに発売から2ヶ月が経過し、その話題も落ち着きつつあるが、いまから遊んでも決して遅くはなく、特にオリジナル版をコンプリートするまでやり込んだというプレイヤーならば、間違いなく感動必至の仕上がりになっているので、ぜひプレイいただきたいところだ。それと一緒に今回発売された最新の公式ガイドブックをお供に遊んでみるのも“オツ”である。
昨今、新規の攻略本の数が減少傾向にあるこの頃。オリジナル版当時、特に『FINAL EDITION』の“リベンジ”を果たした公式ガイドブックを作り上げたスクウェア・エニックスを始めとするスタッフの方々には、心から感謝の言葉を贈りたい。「出るといいな」と前回のコラムで望んでいた攻略本がこうして現実になり、感無量です。
しかし……あらためて思うが、前回のコラムを執筆したときの筆者は迂闊だった。確かに任天堂監修の「任天堂公式ガイドブック」は、2018年発売の『星のカービィ スターアライズ』を最後に刊行されなくなっていた。よって、刊行の可能性は0%に近かった……のだが。『スーパーマリオRPG』を共同開発したスクウェア改め、現スクウェア・エニックスは2003年のエニックスとの合併以降、出版企業も受け持つ企業になっているではないか。そっちの線が十分考えられたじゃないか、と。なぜそれを見落としていたんだ。
そんなことを公式ガイドブックの初報に驚いた直後、気づかされたのでした。とほほ。
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