リメイク版『スーパーマリオRPG』公式ガイドブックは、オリジナル版の“いいとこどり”な一冊だった

 2023年11月17日、任天堂とスクウェア(現:スクウェア・エニックス)との共同開発によって誕生した、スーパーファミコン末期の名作RPG『スーパーマリオRPG』のリメイク版がNintendo Switch向けに発売された。

 その2日後、筆者はオリジナル版当時の1996年に発売された、2+1冊の攻略本にまつわる話題を取り上げたコラムをここ、リアルサウンドテックにて執筆した。

リメイク版『スーパーマリオRPG』発売とともに振り返る、2冊の“オリジナル版”攻略本

『スーパーマリオRPG』リメイク版がNintendo Switchでリリースされた。オリジナルは1996年発売のスーパーファミコ…

 そのコラムの締めの段落において、次のようなことを書いた。

「当時、掲載できなかったさまざまな情報を含んだ本当の「FINAL EDITION」が登場しないかと、密かに期待してやまないこの頃だ」

 そして、掲載から約2週間が経った12月6日午前11時1分。スクウェア・エニックスの公式ショッピングサイト「スクウェア・エニックス e-STORE」の公式X(旧Twitter)アカウントは告げた。

 オリジナル版の秘蔵制作資料も掲載されたリメイク版『スーパーマリオRPG』の公式ガイドブックが発売される、と!(なお、このニュースは当時、リアルサウンドテックでもバッチリ報じられている)

「ウ、ウソだろ! これは現実か!? 本当に現実なのか!!?」

 件のコラムを執筆した者としては、それはもう二度見するレベルで取り乱すしかなかった。頬もつねった。現実でした。あの時のしんきょうを語るなら、リメイクはむずかしいとされていたゲームが、まさかの発売をはたすというニュースをきいたときの気分ににている。そう……このたびのリメイク版『スーパーマリオRPG』のように。

 そんな最新の公式ガイドブックは、2024年1月25日に発売を迎えた。もちろん筆者は「もはや、語るまい・・・・」との勢いで予約して購入した。そして、件のコラムを書いてしまった以上は、この公式ガイドブックのことも取り上げるのが自然の摂理であるということで、再びオリジナル版の攻略本2+1冊を本棚より引っ張り出し、どのようにパワーアップしたのかを確かめてみたのだった。

オリジナル版当時の攻略本の”いいとこどり”な公式ガイドブック

 結論から言えば、最新の公式ガイドブックはオリジナル版当時の攻略本の1冊、『任天堂公式ガイドブック スーパーマリオRPG FINAL EDITION』(以下、FINAL EDITION)を進化・発展させた仕上がりになっている。

 とりわけ素晴らしいのは、アスペクト(現:KADOKAWA)より刊行された『スーパーマリオRPG 星空からのおくりもの』(以下、星空からのおくりもの)と『スーパーマリオRPG 裏テクニックガイド』(以下、裏テクニックガイド)の良い所を抽出した、“いいとこどり”になっていることだ。

 『星空からのおくりもの』と『裏テクニックガイド』は、情報の充実ぶりにおいては『FINAL EDITION』を上回っていた。ワールドの各エリアマップと一緒に出現する雑魚敵・ボスの情報が弱点属性込みで紹介されている、彼らのCGイラストも載っている、スペシャル技のモーションおよびアクションコマンドのタイミング情報が載っているというのがその象徴だ。

 また『星空からのおくりもの』限定で、データペースにマロのスペシャル技のひとつ「なにかんがえてるの」のアクションコマンド成功時に見られる敵・ボスキャラクターたちの心の声のメッセージテキストが網羅されていたのも、『FINAL EDITION』にはない突出したセールスポイントとなっていた。

 最新の公式ガイドブックも、ワールドの各エリアマップに記載されている情報は最も完成度が高かった『星空からのおくりもの』をオマージュ。そこに隠し宝箱とその中身、イベントの内容などの情報も付記した発展系に仕上げられている。

 また「なにかんがえてるの」の心の声メッセージに関しては、リメイク版のゲーム内に追加された「モンスターリスト」で、アクションコマンドを成功させたモンスターのみ常時確認できるようになったが、最新の公式ガイドブックにもこの情報を記載。専用のコラムページと各ページの余白を使って紹介する形という形で、手軽にそのメッセージを調べられるようにしている。ページごとにバラバラになったことから、『星空からのおくりもの』のデータべースのようにわずかなページをめくるだけで確かめることができず、その点ではやや不便になったが、最も大きなセールスポイントが最新版にも引き継がれているのはうれしくなってしまうところだ。

リメイク版公式ガイドブック・22ページより

 また、すでにリメイク版をプレイ済みのオリジナル版経験者の方々は把握済みと思われるが、一部の敵の心の声メッセージはオリジナル版から変更されている。このため、『星空からのおくりもの』があれば、そのメッセージ差分も容易に確かめられる。同じ差分の確認はゲーム内のモンスターリストでも可能だが、アクションコマンドを成功させないと登録されないこと、そしてなにより、ゲーム本体を起動しないと見られないという事前準備が必要になる点から、手軽さでは書籍が勝ると言える。

 『星空からのおくりもの』も『裏テクニックガイド』もすでに絶版になっているハードルの高さはあれど、このような一種の遊びが楽しめるという点でも、最新の公式ガイドブックが発売された意義は大いにあると言ってもいいだろう。ちなみに調べてみると、意外にオリジナル版のギリギリなパロディメッセージが無修正だったという発見がある。

 「モンスタウン」の道場師範「ジャッキー」の「10年、早いんだよ!」、敵の一体「パチール」の「逃げちゃダメだ・・・・逃げちゃダメだ・・・・」、「ダウト」の「主よ。タネもシカケもないことを、おゆるしください。」は象徴的な一例だ。パチールに関しては、2021年5月14日にNintendo Switch向けに発売されたアドベンチャーゲーム『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』で、もっとギリギリなパロディをやっていたこともあり、「削られるはずがないだろ!」……と、筆者は思っていたとかいなかったとか。

Switch版『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』より。このネタ自体は1998年発売のスーパーファミコンのリメイク版で新たに追加された(オリジナルのファミコンディスクシステム版では別の名前が当てられている)。そして、Switch版の主人公を演じる声優は緒方恵美氏。おわかりいただけただろうか。

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