約13年ぶり新作『風来のシレン6』は、古参プレイヤーの望む“正統進化”を果たしたのか

 1月25日、『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』(以下、『風来のシレン6』)が発売となった。

 約13年ぶりのナンバリング最新作として、発表時から大きな注目を集めていた同タイトルは、古くからのシリーズファンも納得する作品となったのだろうか。期待値とのギャップを考える。

ローグライクの金字塔的シリーズからの約13年ぶりのナンバリング

Nintendo Switch『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』アナウンストレーラー

 「風来のシレン」は、チュンソフト(現スパイク・チュンソフト)が展開する「不思議のダンジョン」シリーズから派生したRPGだ。プレイヤーは三度笠と縞合羽を身にまとった旅人・シレンを操作し、さまざまなダンジョンの踏破を目指す。

 特徴的なのは、ローグライクに由来するゲーム性を持っている点。ランダム生成のダンジョンや、ターン制のバトルシステム、シングルプレイヤー、パーマデス(一度倒れると、レベルや装備などがリセットされ、また1からのスタートを余儀なくされる仕組み)、満腹度管理といった性質を同シリーズは多く保有する。

 今回発売となった『風来のシレン6』は、2010年12月発売の『不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス』(以下、『風来のシレン5』)以来、約13年ぶりとなるナンバリング最新作。長らく新作が発表されていなかった同シリーズだけに、2023年9月の「Nintendo Direct 2023.9.14」でその存在が明らかとなったときには、多くのファンが歓喜の声をあげた。

 対応プラットフォームはNintendo Switchで、価格は7,000円(税込)。公式はシリーズの往時と同様に、「1000回遊べるダンジョンRPG」をセールスコピーとしている。

『風来のシレン6』はファンの期待する最新作となれたのか

Nintendo Switch『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』システム紹介トレーラー

 シリーズの歴史が途絶えたと考えられるなかで突如発表され、このたび発売へと至った『風来のシレン6』。リアルサウンドテックではその存在が明らかとなった際にも、トレンドトピックとして取り上げた過去がある。当時の記事のなかで私は同タイトルに期待される要素について、「大きな変化は必要なく、過去作品(特に初期のナンバリング)に準拠したシリーズらしい体験の正統進化が求められている」とした。満を持してリリースを迎えたいま振り返るべくは、『風来のシレン6』がそのような内容であったかについてだ。

 結論から述べると『風来のシレン6』は、昔からのファンほど諸手を挙げて称賛できるような仕上がりとなっていたのではないか。過去の作品に盛り込まれ、不評点とされることが多かった「夜システム」や「まがい物道具」「装備のレベルアップ」「おもしろ説明文」といった要素は軒並み削除され、システムの幹にあたる部分ばかりが残された。そのうえで、グラフィックやUIは現代的なものへとバージョンアップ。新登場の敵やアイテムを盛り込みつつ、より高い難易度へと着地(メインストーリーのクリア後まで含む)させている。「面白さをそのままに、遊びやすさ・やりごたえがくわえられた傑作」だと感じた古参プレイヤーは多かったはずだ。

 一方で、あまり好まれていない新要素もある。それが「デッ怪」だ。「デッ怪」とはその名のとおり、通常よりも大きい(デカい)サイズのモンスター(妖怪)のこと。動きは遅いものの攻撃力が高く、一部にバリアを持っているため、倒しづらい。「デッ怪ホール」と呼ばれる専用のゲートから出現し、当該フロアのマップを全開放することによって消滅する。ダンジョン踏破系のシステムを持つRPGによくある、強敵の仕様を持つモンスターである。

 説明だけを聞くと、ダンジョン探索に刺激を与えてくれる存在のように感じられるが、実際はプレイヤーの体験を著しく下げる要素となっている。その理由は、倒すことに大きな意味が与えられていないからだ。ゲームの通例から考えれば、このようなモンスターには、大量の経験値やお金、レアアイテムのドロップといった価値の大きい報酬が割り振られているケースが多い。しかし、『風来のシレン6』の「デッ怪」にはそのような設定がなく、遭遇すれば時間ばかりが失われるストレス性の高い要素となっている。

 「傑作」という評価に落ち着きそうな『風来のシレン6』だけに、新要素が新たな欠点とされてしまっていることが惜しい。「風来のシレン」シリーズにとって、新要素が不評を買うことは、同じ轍を踏むものとも言えるだろう。今後アップデートによりバランス(特に報酬面)が調整されれば、純粋に刺激として楽しめる要素となる可能性もある。この点に関しては、対応が待たれるといったところだろうか。

 ローグライクというジャンルは昨今、かつてないほど市民権を獲得しているが、もしかすると『風来のシレン6』のようなオールドスクールなタイトルは、新規プレイヤーには合わないのかもしれない。それでも、やや尻すぼみな感のあった「風来のシレン」シリーズに、(欠点とされる部分はあれど)良作/傑作と言えるナンバリングが生まれたことには大きな意味がある。同タイトルが相応の評価を獲得し、商業的成功へとつながっていけば、DLCや第7作の制作など、今後の展開の選択肢も大きく広がってくる。その意味においても、復権を果たしたことには大きな価値があるだろう。“化石”から“リビングレジェンド”に生まれ変わった「風来のシレン」シリーズは今後、私たちにどのような体験を与えてくれるだろうか。

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