Daoko × Tomgggと考える“未来のまちの音楽” 「テクノロジーの進化で聴こえなくなる音もある」

「未来の音に注意深くありたい」

(Production: ROM inc. (rominc.jp))

――最後のサビの前に<たのしいことだけじゃないぼくたちの人生>のところはベースペダル(同じベース音を持続させる技法)になっていて、ジャズ風味になっていました。ここが何だか『セサミストリート』や、その影響を受けた『おかあさんといっしょ』といった教育番組を彷彿とさせます。

Tomggg:目まぐるしく展開するけど、古典的で変わらないテーマのメタファーとしてブリッジ部分に入れました。歌のハモリもあえて異質な感じにもして。

――リリックには<ぶきみの谷こえ>というロボットに対する人間の心理現象を表す言葉も出てきました。作詞については?

Daoko:「不気味の谷」という言葉は先ほどの池上高志さんの著書に出てくるんですよ。言葉そのものや単語の響きとしてもお洒落だなと。

編注:「不気味の谷現象」とは、外見的写実に主眼を置いて描写された人間の像を実際の人間が目にするとき、写実の精度が高まっていく先のかなり高度なある一点において、好感とは逆の違和感・恐怖感・嫌悪感・薄気味悪さといった負の要素が観察者の感情に強く唐突に現れるというもの。

Tomggg:映像が浮かんできていいですよね。「谷」という言葉が冒険(=クエスト)を連想させてくれる。

Daoko:ただ明るすぎる歌詞は苦手なので、影をしっかり描くことで光を描くような流れがしっくりくるなと。だからテクノロジー万歳だけではない、葛藤の部分も入れています。

――また、Daokoさんは「子どもと大人が一緒に楽しめる体験を届けていく」というコンセプトに掲げた「ヲコダヲコ」の活動もされています。それと今回の展示はリンクする部分もあるのでは?

Daoko:そうですね。「勝手にうたのおねえさん」という裏コンセプトもあるプロジェクトです。もともと子どもが好きで、音楽の道に進まなかったら保育従事者になりたいと考えていたくらいでした。子どもが未来を創っていきますし、大人も彼らから学べることがあるんですよね。今回は思わず、ヲコダヲコ的なアプローチが出てしまいました(笑)。

日本科学未来館オリジナルロボット「ケパラン」(Production: ROM inc. (rominc.jp))

――Tomgggさんは展示について「未来では聞こえなくなる音があったり、新しく生まれる音があるかもしれません」とコメントされていました。それはどんなものだと思います?

Tomggg:カナダの作曲家のマリー・シェーファーによる「サウンドスケープ」から個人的に影響を受けているんです。たとえば、自動車が発明される以前は馬車の走る音がしていたし、掃除機以前はほうきで掃いていた。道具やテクノロジーの進化によって、環境が変わっていくと音も変わってくるだろうなと。

 僕は駅の側に住んでいるのですが、スピーカーも技術が進化しているので、ホームにいる人だけに聴こえるものも作れると思います。そうしたら、駅の横も静かになるかもしれない。逆に今まで聴こえなかった海や川の音が聴こえてくるのかも。そういう未来の音に注意深くありたいです。

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