『Weekly Virtual News』(2024年1月22日号)

人気アニメの聖地巡礼、産業スパイ、最新の倉庫作業ーーメタバースならではの体験が続々

なりきり衣装も登場 アニメ『きんいろモザイク』が『VRChat』に到来

 開発スタートから10周年を迎えた『VRChat』に、新たなIPコラボが訪れた。放送10周年を迎えるアニメ『きんいろモザイク』の公式ワールドと、“なりきり衣装”が発表されたのである。

 同作は『まんがタイムきららMAX』にて連載された4コマ原作のアニメ作品で、放映が開始された2013年から劇場版が公開された2021年(と原作完結)まで、長く展開された人気作品。日英の異文化交流がテーマのひとつなっており、作中に登場したイギリスのコッツウォルズ地方・バイブリーは“聖地”として人気を博した。

 そしてこのたび、このバイブリーを再現したワールド(3DCG空間)が公開されたのだ。村の隅々まで、約8000枚の写真を撮影し、フォトグラメトリによって再現された空間は、遠景ともなればもはや実写と見紛うほど。入口に設置されたタブレット端末には地図が表示され、その上に配置されたピンはテレポート位置であると同時に、アニメ版に登場したシーン表示してくれる“聖地巡礼”には欠かせないアイテムだ。

 これだけでも十分にユニークな取り組みだが、同時に発売された公式“なりきり衣装”も注目すべきだろう。これは、メインキャラクターのアリス・カータレットと九条カレンの制服と髪型の3Dモデルがセットになった商品で、市販されている『VRChat』向けアバターの容姿を変更することができる。

 キャラクターそれ自体の3Dモデルではなく「なりきり(コスプレ)衣装」というのがポイントだ。『VRChat』には市販アバターの服装や髪型などをカスタマイズして楽しむ「バーチャルファッション」というカルチャーがあり、「衣服」の需要や市場規模がかなり高い。セットの一部(パーカーなど)を別の衣服と組み合わせて使用することも想定されており、個人利用の範囲であれば自由に利用できる点をみても、ユーザーの需要や業界の動向をよく理解したタイアップであると評価できるだろう。

バーチャルオフィスで産業スパイごっこ MyDearestが仕掛けるユニークな企画

 同じくユーザー理解度が高いことで注目を集めるVRゲーム開発会社・MyDearestも、一風変わった企画を仕掛けてきた。『VRChat』に公開した自社のバーチャルオフィスにて、なんと機密情報の窃盗をさせようというのだ。

【VRChat】MyDearestバーチャルオフィスアップデート -ゲーム会社の機密会社を盗み出せ-

 もちろん、これはあくまでゲーム内の設定。集める“機密情報”は、同社の新作VRゲーム『Brazen Blaze』の最新情報であり、一通り集めるとここで初公開となるゲーム内ビジュアルを閲覧できる、という新作のプロモーション施策の一環である。

 合わせて、同作のロビーエリアを移植した空間にも訪れることができ、「メタバースで新作VRゲームの舞台を訪問する」という体験型のプロモーションまで仕掛けている。

 先週末にはこのロビーエリアを改造した空間で、ソーシャルVRで活躍するアーティストを招いた音楽イベント『MyDearest JAM 2024 -OPEN THE GATE-』が開催された。1月19日の前夜祭と、1月20日のメインイベントの計2日間、実力派のアーティストがステージに立ち、満員の現地会場や配信(と、それを視聴するためのサテライト会場)で、多くの人が熱狂した。

【音楽フェス】MyDearest JAM 2024 -OPEN THE GATE-【VRChat】

 意外に思われるかもしれないが、実はソーシャルVRとVRゲームのユーザー層は少し遠いところに位置している。MyDearestは昨年のバーチャルオフィス公開以降、この2つのユーザー層をつなげるべく、様々な取り組みを展開している。イベントの副題として掲げられた「OPEN THE GATE」という一文は、双方のユーザーに呼びかけるメッセージそのもの。近いようで遠い、2つのVRコミュニティに橋をかける同社の取り組みは、2024年からフルスロットルで推進されている。今後も注目だ。

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