“記号化された暴力”には懸念も、高品質なアップグレード 『The Last of Us Part II Remastered』先行レビュー

 1月19日に発売される『The Last of Us Part II Remastered』(PlayStation 5)は、2020年に発売された『The Last of Us Part II』(PlayStation 4)をPS5向けにリマスターし、新たなゲームモードや要素を追加した作品である。

 主な変更点については本文で詳しく触れていくが、先に書いておきたいのは2022年に発売された『The Last of Us Part I』(『The Last of Us』のフルリメイク作品)と異なり、本作はPS4版を所持しているプレイヤーであれば1,190円(税込)を支払うことでアップグレードすることができる(詳細は公式サイトを参照)ということ。『Part I』については元のバージョンを所持していたとしても新規に購入する必要があったことを踏まえると、PS4版プレイヤーとしてはありがたいところだ。

 また、本稿ではPS4版をクリアした立場として、SIEから発売前にいただいたコードをいただいたうえで、追加・変更点を中心に書き進めていくが、昨年放送されたドラマ版『The Last of Us』(祝・エミー賞8部門受賞!)をきっかけに本作が気になっているという方も少なくないと思われるので、簡単に作品自体の概要を書いておきたい。

 『The Last of Us Part II』はドラマ版のシーズン1に相当する前作の5年後を描いた内容となっており、「ある出来事」をきっかけに新たな旅に出たエリーの物語を体験することができる。『Part II』は同年のThe Game Awardsのゲーム・オブ・ザ・イヤーを獲得するなど、前作と同等、あるいはそれ以上に高い評価を獲得した作品であり、2025年頃に放送予定のドラマ版シーズン2も本作をベースにしたものになることが明らかになっている。

 さて、ここからは作品の性質上、『The Last of Us Part II』のネタバレを含むため、まだ原作をプレイしていないという方は注意してほしい。特に、ドラマ版で本作に興味を持っているという方は、まずはとにかく(必ずしもリマスター版を購入する必要はないので)『Part II』に触れてから再訪いただけると幸いだ。

『Part I』ほどの大きな変化は無いが、品質の高さに唸らされるリマスター

 はじめに『The Last of Us Part II Remastered』全体における変更点についてまとめていきたい。まず最初に気になるのは、タイトルにもある通りグラフィック全体のリマスター品質だろう。レンダリングについては、ネイティブ4K/30FPSの「解像度モード」、アップスケール4K/60FPSの「パフォーマンスモード」を選ぶことが可能となっており、VRR対応モニター向けの「フレームレート上限なし」オプションも実装されている。今回は主に解像度モード(4K対応・VRR非対応テレビを使用)でプレイを進めていたのだが、筆者個人としては「綺麗であることは間違いないのだが、劇的に変わったという印象は感じられない」というのが正直なファーストインプレッションだ。というのも、本作は2020年時点で極めて優れたグラフィックを実現しており、その品質は2024年現在でもビデオゲーム全体においてかなり上位に位置している。また、フレームレートについても2021年にPlayStation 5向けの60FPS対応パッチが配信されていたために、その恩恵を感じづらいのが実情だ。要するに、もともとのクオリティが高すぎるのである。

 とはいえ、あらためてPS4版を起動して見比べてみると、全体的に画質が向上していることをしっかりと確認することができた。より精密に描かれたテクスチャはもちろんだが、個人的に特に気に入ったのは陰影の深さである。真っ暗な建物の内部を懐中電灯で照らしながら手探りで進んだり、鬱蒼とした森の中で彷徨っているような場面で、本作では暗闇がより深い質感を伴ってずっしりと迫ってくる。また、フレームレートについても、筆者個人としては同じ「解像度モード」でも、PS4版より滑らかに動いているような感覚を得ることができた。とはいえ、ファーストインプレッションの通り、『Part I』ほどの明確な変化を感じられるというわけではないので、過度な期待は避けておいた方が良いだろう。

 また、PlayStation 5に最適化されたことに合わせて、DualSenseに完全対応したのも本作の特徴の一つだ。他の一般的なシューター作品よりも「一発の弾丸の重み」を強く描いた本作において、武器に応じて重みや挙動が変わるアダプティブトリガーが与えてくれる恩恵は非常に大きい。個人的には弓を射るときのしなるような感触が、特に気に入っている。

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